転生したらハムハムすることに夢中です。

さこ助

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ハムハム楽しむ日々

ほぼ毎日です

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 次の約束の日私たちはそれが当たり前かのようにお互いに顔を合わせる。


「お待たせしました」

「そんなに待ってないから大丈夫ですわ」


 少し経った日、外は雨で湿気がある日でも、それは変わることはなく。



「今日は雨が降っているのに申し訳ありません」

「雨なんて傘をさして仕舞えばなんてことないですわ」


 どんどん日が過ぎる中で季節さえ変わろうとする世の中で、当たり前と言うのは凄いことだと思った。


「今日もいい天気ですね」

「はい、そろそろ暑くなりますね」


 会っている時間が短い日もあったり、長い日もあったり。どうせならお昼でも、と持参した日だってあった。


「今日は料理長に無理を言ってお弁当を包んでもらいましたの」

「あ、僕もじつは同じものを。最近では紅葉が綺麗で外でも過ごしやすくなりましたもんね」






 あれからずっと、お互いが勉強の合間を縫って毎日のように会っていた。
 あの日にお互いに吸い寄せられるようにして近づいた距離。その距離から少しだけ空間を作り、そこには触れずにお互いの距離もそのままに、日課のように森の中で逢瀬を続ける。

 ラニエルは私よりも辺鄙へんぴな土地に邸があるのに、毎回なんでもない顔をしてやってくる。そのことに疑問を持って聞いてみたら「王都に別宅があるから」とそりゃ当たり前か、と思う答えが返って来た。

 ジファーソン侯爵はあまり王都には寄り付かず、自領で仕事をしているそうで、その代わりに家令と数人の使用人達とでラニエルはこちらに住んでいるそうだ。
 実際に彼の家にお邪魔したことはないけれど、話してくれる内容からそんなには冷遇されているようではない。
 ではどうして毎日のようにを必要としているのかは、まだちゃんと聞けていなかった。

 ママ様曰く「冷遇だけが悩みではないのよ」らしいのでそっと寄り添う形で私は味方をするようになった。
 


(触れて欲しくないこともあるもんだ)



 自分にだって触れて欲しくない(主にセクハラの内容)ものだってある。私だけが彼を全部知ろうとするのも如何なものか。



(それにしても、いつも思うけど…本当にいい匂い…)



 ベリー系の匂いがする彼を、私に侵されたところがないんじゃないかというほどハムハムしまくった。
 一番理性がどこかに行きかけたのは、あれは、夏のーー


「最近ではラティが旅に出なくなったと思っていたに、おまじないをしてくれているとき貴女そうやって密かに出かけていたんですね」

「えっ…エル、近いですわ!」


 いい匂いにつられて(もちろんハムハムしながら)トリップしていた私の前に急にラニエルの顔がドアップで現れた。



(ビックリしたーー!ドスケベ顔見られてないわよね!?)



 イタズラが成功したとばかりに微笑むてんしから顔を勢いよく距離を取り、頬に両手で仮面を作り俯向き、先ほどの問いかけにこたえる。


「おまじないをかけるときには集中しなくてはいけませんの。ですから別に何処かへ意識を飛ばしてるわけではありませんわ」

「へぇーー」

「なんですの?信じてくださいませんの?」

「いいえ、そんなことありませんよ。僕がラティを疑うわけがありません」

「ーーっ!」



(なにその全信頼を預けてる感じ!)



 体を侵され続けていると、とうとう脳までやられてしまうのではないか。これはもしかしてこのままラニエルの経過観察を続けていたら、良い論文が書けるのではないとさえ思えてくる。
 私の脳内が旅に出るなんてよくあることで、だからって心ここに在らずーーというようなハムリングはしていない。いや、むしろそのことにしか集中してないと言っても過言ではない程に彼を堪能し続けている。

 何が面白いのか、先ほどの会話の端から笑顔を絶やさず、そして少しだけ裏がありそうな眼差しでこちらを覗き込んだままだ。


「な、ンデスの」

「いいえ、いつも表情を変えずにおまじないをしてくれているラティが、表情を隠さず出しているのが嬉しくて」

「ええ?!」



(いつのまにか表情をを見られていたの!夢中になりすぎた!?)



「頬の色を染めているラティはとても愛らしいですね」



(まてまてまてまて…と言うことは何か?今までドスケベ顔をしていたと思っていたけど…)



「私って顔色変わらなかったのですか?」

「はい、でもいつもの真剣な表情も僕は好きですよ」



(それは表情を変えれないほどに無心で夢中にハムハムしていたってこと!?)

(なにそれ!…)



「えっ怖!私怖!え!気持ち悪っ!」

「ラティ?」

「え、嘘でしょ、マジかよ…うわぁ変態な顔してるより真剣な顔ってマジ怖!しかも見られてるとか、えぇ次からどんな顔してエルにハムハムすれば良いのーー!」

「どんな顔でも僕はラティなら、どんなことでも貴女ならーー」


 取り乱し令嬢言葉も忘れ去り暴走し始めた私に、彼は私の頬に手を添えて優しく語りかける。


「どんな貴女もとても好ましいですよ」


 出会ったばかりの頃のように彼はまた私に"好ましい"と笑いかけてくれた。
 それがどのような好きなのかは分からないけれど、今はまだ嫌われてる様子がない。ならば、堪能してても、変な顔をしてても夢中になっていても、全部受けてもらえるならばーー


ーーちゅ

「ラティ」

「え、エルっ、それは、ちょちょちょっと!」

「とても可愛いです」

ーーハムっ

「ーーっ!」


 私のこめかみ辺りにキスを落としたあと、私の耳たぶを彼がハムっとした!
 ちょと、ちょっと待って!なんか感動してたはずなんですけど!


ーーハムッくちゅ


(この紳士てんしまた耳に舌を!あっちょまっまてまっ!)


ーーちゅちゅっハムハム、ぺろん


 おまじないとしてやってきた私の行動を真似るかのように、ハムリングがだんだんと激しさを増していく。声を堪えるのに必死で、首元のブラウスのボタンをゆっくりと外されていくことに気がつかなかった。


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