君に恋したあの頃の夏

友利奈緒

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プロローグ

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 そして部活が始まった。

 アップを終え、紅白戦形式の練習に入る。ボールが回り、僕の手元に届く。ディフェンスが一瞬だけ遅れた、その隙を見逃さない。

 3ポイントラインの外へ一歩下がり、深く息を吸う。

 跳ぶ。

 足に力を込めて思い切り踏み切った瞬間、身体がふわりと宙へ浮いた。

 ――長い。

 自分でもわかるくらい、滞空時間が長い。

 空中で一瞬、時間がゆっくり流れる。リングだけが、はっきりと視界に映る。

 そのままリリース。

 ボールは綺麗な放物線を描き――

 スパッ。

 リングに触れず、ネットだけを揺らした。

 「ナイスシュート!」

 チームメイトの声が飛ぶ。その中で、ひときわ明るい声が響いた。

 「晴也くん、かっこいい!」

 振り向くと、ベンチ横でスコアをつけていた春奈ちゃんが、目を輝かせながらこっちを見ていた。

 その笑顔に、周りの男子部員が一瞬ざわつく。

 先輩が苦笑しながら僕の肩を叩く。

 「相変わらずだな、お前のシュート……」

 そう言って、半分呆れたように続けた。

 「なんなんだよ、その滞空時間。ジャンプしてから打つまでやたら長ぇんだよな。空中で一回止まってんじゃねぇかってレベルだぞ? 見てるこっちが『まだ落ちねぇのかよ』って思うわ。」

 周りがどっと笑う。

 僕は苦笑いを浮かべる。

 すると、春奈ちゃんが少し前に出てきて、

 「でも、それが晴也くんの武器ですよね。空中でちゃんとディフェンス見て、タイミングずらしてますし……」

 と、真面目な顔でフォローしてくれた。

 先輩が「お、マネージャー分析入ったな」とニヤニヤする。

 僕は少し照れながら、

 「いや、そんな大したもんじゃないよ。」

 と答える。

 春奈ちゃんは小さく首を振った。

 「ううん、大したもんだよ。……さっきの、すごく綺麗だった。」

 その一言で、なぜかさっきより心臓が跳ねた。

 3ポイントを決めた時よりも、ずっと。

 ――やばいな。

 将棋教える約束、なんだか変に意識しそうだ。



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