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クズ同士尋常に勝負 1
しおりを挟む「それで?今夜はどうするの?」
ふとイアンがそんなことを聞いてきた。
「んーイアンが隣に居るから他が寄って来ないんだよね」
「あは。確かに僕に勝てそうな人居なさそう」
堂々とそう言えるのはイアンくらいだろう。かといって彼はそこから去る様子もなく、「ネグローニよろしくー」と追加で酒を頼んでいる。
リアは今夜は諦めて酒を楽しむかと小さく溜息を吐く。
「じゃあ今夜は僕とどう?」
不意に耳に届いたイアンの言葉。
リアは一つ瞬いてイアンを見る。首を傾げながら柔らかく微笑むイアンは自分がどうすれば相手がどう反応するかを熟知しているに違いない。
だがそれは普通で一般の可愛らしい女の子に限る。残念ながらリアには通用しない。
「イアンと?」
「うん。僕と」
「私みたいなのが許容範囲に入るの?」
「どういうこと?」
イアンは不思議そうな表情をする。
「イアンを噂でしか知らないけど、私系統も相手にするの?」
夜専門のリアと違ってイアンは日中の時間というイメージだ。夜にここで会ったことは一度もない。もしかしたらリアが上の宿スペースに行った後に来ているのかも知れないが。
そして彼が相手をする人はリアみたいな人種というよりは彼に憧れてとか、上手いだろう彼に抱かれたいとか、好きで一度だけでもとかそういう感じに勝手に思っていた。
「夜に稼働する女の子って意味?」
「んーまあそういう意味もあるけど、どっちかって言うと阿婆擦れじゃない相手とかなって勝手に思ってた」
リアのあけすけな物言いにイアンが目を丸くする。
「リアは阿婆擦れなの?」
「蔓延っている私の噂。あれ殆ど事実だから」
一度喰われたら捨てられる。
誰かと一定続くことは皆無。
恋人に絶対に出来ない相手。
縋っても流されて対応はつれない。
リアの巷で囁かれている悪女と言われる由来だ。
リアからすれば悪女も何も騙しているわけでもないし、始めにちゃんと説明している。そしてお互い合意の元で性交しているのにも関わらず、先ほどの男のように駄々を捏ねられて、それが愚痴になり悪態に繋がり噂になっているだけである。
それもリアとしてはどうでも良いことだし好きに言ってもらえば良い。全部本当のことなのだから。
「リアは特定の相手を作らないんだよね?」
「居たらここに居ないし、その人からずっと搾り取ってる」
「ふはっ。確かに。僕も特定持たずの系統だから」
「食い散らかしているとは聞くけど」
「そうそう」
イアンはすっと手を伸ばし下ろしているリアのバターブロンドの髪に触れる。緩やかに波打つリアの髪を一房摘んでくるんと綺麗な長い指に巻き付けた。
「たまにはお互い強者と試してみるのも良いんじゃない?」
「…強者?」
「うん。巷で有名なクズ同士。それとも喰われる側は怖いかい?」
これは体の良い煽りだろうか。
リアはゆっくりと首を傾げデュークを見ると、彼も首を僅かに傾げる。
リアはイアンに視線を戻す。
「…喰われるのはイアンかもしれないよ?」
「それは試してみないと分からないよ」
イアンがゆっくりとリアの頬に優しく触れる。
頬をなぞるイアンの指にぞくりと身体が粟立つが、リアは素知らぬ振りで一つ瞬きしてから妖美に微笑んだ。
「クズ対クズってことね。…魔力美味しそう」
「あは。そっち?」
「それも大事よ。いつもはどこで?」
「専用に借りている部屋があるよ」
なかなかに用意周到な相手だとリアは武者震いしそうになる。これは久々に当たりの相手になるかもしれない。
どうせ一度だけの行為だ。彼も他と変わらない。美味しい魔力なら尚更。そしてこれほどの美貌の雄を喰らうことも滅多に無いだろう。
「…ここは私のホーム。この上で良い?」
「うん。良いよー久々に使うな、ここ」
リアは一つ頷いてデュークを見る。
彼はやれやれと言う風に肩を諌めながらも手をカウンター奥に向けたので許可を得た。
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