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番外編:異名の弊害も尋常に 4
しおりを挟むエリックと世間話をしていると、カランコロンと錆びたドアベルが鳴りシュナは振り返る。
「あ」
「あ!」
「あら」
「…」
店に入ってきたのはイリエとフェリウスだった。
「シュナさん、ご無沙汰してました!」
相変わらず小柄で笑顔が物凄く可愛いイリエがぺこりとお辞儀をする。
「お久しぶりです。店主から香油をご贔屓にしてくれていると聞いてます」
あれからイリエがフェリウスと共に訪れ香油を買ってくれているとエリックから聞いていた。
「こちらこそ香りも持続して髪にもとても優しくてもう手放せません…!店主さんがご自身のものを買い溜めしていると聞いたので、是非私もと今回はお金を貯めてきました!」
「ふふ。それは作り手冥利に尽きます、ありがとうございます」
「別に幾らでも俺が買うのに」
もう何と言うか色々と可愛いなぁと、しかも裏でぼそりと答えるフェリウスも共にシュナは思わずほろりと微笑んでしまう。
イリエが後ろから覆っていたフェリウスを見上げる。
「自分で稼いだお金で買いたい気持ちが強かったんです。でもフェスがそう言ってくれる気持ちがとても嬉しいので今度あのお店のガレットを奢ってください」
「買い占める」
「あの小さなガレットが個販売になったので、箱に入る分の八個欲しいです。数が多いですけど良いですか?」
「うん」
イリエがフェリウスの手をきゅっと握りながら…まるで懐かない猛獣を手懐ける感じに見えてしまい、思わずエリックと目を合わせて厳かに頷いた。
「ティーツリーの香油はありますか?」
「ちょうどさっき卸したので、出来たてほやほやです」
「え!」
イリエがぴょいんと小さく跳ね上がり、フェリウスの手を引いてカウンターに走り寄る。
エリックが棚に並べていたティーツリーの香油をカウンターに出すとイリエの目が輝く。
「ほやほや…!」
「温かいの?」
「フェス、出来たてって意味です」
フェリウスの言葉に微笑みながら丁寧に返すイリエは香油の瓶を見て目をきらきらする。そして棚に置かれている同じ瓶の数を数えた。
「六つ…あの、三つ買い溜めしても大丈夫ですか?」
「全部じゃないの?足りないなら俺が出す」
イリエは後ろから覆っているフェリウスを見上げて首を横に振る。
「いえ。全部買ってしまったら私と同じ香りを楽しみにしていた方ががっかりしてしまいます。でも今回だけ三つは買いたいです」
「わかった」
「ふふ。毎度ありがとうございます―――あ、そうだ。これ良かったら」
空気を呼んでくれたエリックがシュナが行動するだろう予想に試供用の石鹸が入った籠を出してくれていた。
シュナはティーツリーの香りで作ったちび石鹸をイリエに差し出す。
「最近石鹸も作り始めまして先日からお試しで使ってもらっているんです」
「っ…まさか、これって」
「はい。ティーツリーの石鹸です。ほぼ同じ香りの効果も実証済みです」
イリエの顔がパッと花開くように微笑んだ。
「フェス…!」
「良かったな」
フェリウスが淡く微笑みながらイリエの頬を撫でる姿にシュナは思わずポカンと口を開けてしまう。エリックを見ると同じく目を丸くし同意だという風に的に頷いた。
イリエはシュナから渡されたちび石鹸を鼻に近づけて「…!同じ香り…!」と頬を撫で続けるフェリウスの鼻にも近づけていた。
「他にも数種類作ってあるのでご一緒に是非試してみてくださいね」
「!まだ他にも…!」
「何か好む香りはありますか?」
「桃」
ここでイリエより先にフェリウスが答えた。
シュナは内心驚きながらも「桃…フルーティー…」と呟き、瞬時に職人魂に切り替わりお試し石鹸が沢山入った籠から一つ取り出した。
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