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番外編:異名の弊害も尋常に 9※
しおりを挟むそのままゆっくりと前に倒されイアンの萎えない屹立が埋め込まれたままうつ伏せにされる。
「…なんか、さぁ…」
イアンがシュナの首元から肩、背中に鬱血痕を次々に付けながら小さくぼやく。
達した敏感な身体は一つ一つに反応する。掴まれた手首を持たれ熱い吐息と共に耳元で掠れてドスの効いた凶悪な雄の声で囁かれた。
「…ああ、あの雄の手を引き千切っておけば良かったぁ…」
「ん、はぅ…!」
がぶりと甘咬みよりも強めに咬まれた手首と同時に後ろからの律動が急速に再開される。
「ひゃぅっ…!あ、ん、ん、イアン…イアン…!」
「…そ。もっと、ね…?…っ…僕だけ呼んでね?」
あまりの腟内への刺激の強さにシュナは無意識に涙が溢れるのを舌を伸ばして嬉しそうに舐め取られ、脚を閉じようとしても脚を使ってぐいっと開かされる度に律動が巧みに動く。
「ぁ、あ、んんっ…!い、あ、…イ、アンーっ…」
「ん、…ああ…かわい…」
イアンの体が倒れシュナの顔の横に腕を置いた時、頭に閃く。
(…ああ、私もやっぱりイアンと一緒だ…嫉妬だけど、妙に冷静な感情になって…)
女が触れていたイアンの腕部分が視界に入り、シュナは顔を動かしてがぶりとそこに咬み付いた。
「…っ、シュ、ナ…?」
シュナが口を離すとくっきりと咬み跡が付いているのをみて仄暗い愉悦感に浸る。
「ん、ん、…ふふ、咬んでやった。ムカつく」
シュナの言葉にイアンの律動が止まり、剛直を埋め込んだままシュナの向きを変えてくれたので、即座に頬を包んで引き寄せて口づけをする。
「ん、シュナ、ん…」
「…んーイアンと多分一緒かなぁ…ムカついたのに、変に冷静な自分もいて、…格好悪いところ見せたくない、なんて思った」
「!」
「あの場は、…ん、周りに人も居たから穏便にことを済ませてあげたけど…―――今度は問答無用に…手刀で女の手を叩き落しても、良い?」
シュナの言葉に瞠目したイアンが美麗な顔で微笑む。
「ぷっ…最高。僕も今度から格好つけないで速攻腕ごと捻り切って良い?」
「ふふ。周りが阿鼻叫喚しそう―――でも、敢えて蟠ったものをこうやって尋常に勝負も、良いかな?」
「っ、あはは!」
イアンがそれは楽しそうに笑い、首を振りながら「シュナは最強。参った」と言いながら甘い口づけを落としながらぐるりと腰を回した。
******************
「問題ないのか」
小屋の外から話しかけられた静かな声に小屋の窓を少しだけ開けたターニャが答える。
「問題ない」
「いやさ、行くか一瞬悩んだけど主が駆けていくのが見えたから」
「それで良い。お二方はあの程度で揺らぐことなど微塵もない」
夕食時いつもより僅かにぴりつく空気に、日中シュナを護衛する一人から事情は聞いていた。
あの二人は婚姻してから幸せであることをそれぞれ実感して、良い意味で変わり魅力が増しているとターニャは一番近くに居て身を以て感じている。
イアンは勿論のこと、シュナは相変わらず化粧もしないのに前以上に外に出ると阿呆な雄共から話しかけられているのを護衛から報告は受けていた。
化粧に関しては化けたシュナを見たことがあるターニャとしてはイアンの精神安定の為、是非今後もそのまましないでいて欲しいと思っている。
しかも素顔のシュナはとても幼く見え、その辺の雄よりも漢前な性格との不一致がより魅力がある彼女にターニャ個人の勝手な意見としてはずっとこのままが良い。
「…その海鮮炒め一口くれよ」
「断る。これは私のものだ」
「前に食ったけど、それマジで美味いんだよ」
「これらはシュナ様のご厚意。実は賄い目当てで護衛争奪戦が起きてるとイアン様の耳に入ったら、シュナ様を言い包めて必ず止めさせるぞ」
「っ、それは止せ…!」
外にいる護衛含め、シュナの賄いは密かに大人気なのである。
だがこれといって物凄く凝った作りからであるとか高価な食材を使っているとかでもないのに、食べると美味しいのは勿論、心が和むような感じがすると聞かされていた。
日々殺伐とした訓練や任務を行っている彼らには一時の癒しとなっているのだろう。
ターニャはそれらに大いに同意する。
恐らくシュナは作る時にイアンのことを想いながら無意識に微量の魔力が出ており、それが反映されているのではないかとターニャは踏んでいる。
シュナの過去全てに対しての経験値、花や精製に向ける感情の純粋さ。香油も石鹸もそれらに全て反映されているから、あそこまで人々から愛されるのだ。
忠誠を誓う主とその伴侶が幸せに暮らす日々の場面、そして毎日シュナの食事にありつけるのはターニャの特権なのである。
誰にも譲らない。
後日シュナから石鹸が贈られた。ターニャ専用でオレンジの香りが主体の石鹸だそうだ。
実はターニャはオレンジに目がない。「いつもオレンジを食べている時のターニャが僅かーに目元が緩むのを知っているのは私だけー」とそれは嬉しそうな笑顔で言う。
ターニャの忌み嫌われる異色の瞳を覗きながら、「オレンジ色が入っているからオレンジ好きなのかなー」と言いながら本日も精製した新しい香りの香油を手にまぶしてターニャの髪に塗り込めていく。
ターニャは目を彷徨わせながらも全く嫌ではないので、オレンジの石鹸を鼻に近づけながら香りを嗅いでいた。
この位置は絶対誰にも譲らない。
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