貴方の道具として頑張ります

きるる

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耐性だけが取り柄 1

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(今回は頭痛から始まって倦怠感…)


脈を打つように痛む頭痛に目を細めながらウルスナは記録をする。

喉の痛みは徐々に治まったが、次の薬の症状は頭痛だった。

恐らく風邪のような症状を順に試していくのだろうかと思いながらも、現時点の状態を細かに記していく。


(長く書き過ぎるとリノさんが困るかもしれないから…―――っ)


ズキズキと蟀谷から目の奥が特に痛み、目を開けていられなくなったウルスナは、文字を書く練習出来ないと思いながら両手で目元を覆い深呼吸する。

ここ数日道具として集中したので、習慣にしていたピアノを弾く真似をしていなかったことに気づく。ウルスナは目が開けられるようになるまで、気分転換も兼ねて机に指を這わせて動かし始める。


(母様が…一日弾かないと三日戻るって言っていた…)


ウルスナは痛む頭に眉を顰めながらも、いつも脳内で奏でる音色を思い出しながら軽やかに指を弾く。

音は昔弾いてくれた母のピアノの題名も知らない曲と自分が弾いて覚えたものしかわからない。それでも音色を思い出すと脈打つ痛みの中でも少し心が安らいでくる。


「…頑張ったら、音楽が聴けるところを教えてもらえるかな」


もっと頑張ったら楽譜を手に入れることもできるかもしれない。
もっともっと頑張ったらピアノまで弾ける機会が万が一にもあるかもしれない。


(屋敷にずっといたら…考える以前に不可能なことだと思っていたけど…今はこうして希望を持つことだけでも出来るなんて…とても嬉しいな)


進む道など何も無かったウルスナにとって、通れないくらい細い道だとしても分岐点が増えたように思えることが嬉しくて、頬をヒクヒクとさせながら動かない人差し指以外の指を軽快に動かし続けた。


**************


「私が来ている意味がありませんが」


訪れたヘレンの言葉にご尤もだとウルスナは目元を覆いながら頷く。

ウルスナは時間通りに薬を飲み続け、当然頭痛はどんどん酷くなり倦怠感も並行して喉の時と同様、食欲も無くなり折角の食事が勿体無いと思いながら何とか目を開けながら少しずつは食べていたのだが半分以上残してしまっていた。


「すみません…食欲がどうしても湧かなくて…次の薬を飲む前に食べます」


しっかり目を開けて伝えられないことに申し訳無いと思いつつ、道具としての役目をまず第一にと考えるウルスナは、ぺこりと頭を下げて記録の続きを書く為に机に向かった。

後ろからヘレンの溜息が聞こえ、ウルスナは無駄な時間を使わせていることに心苦しくなる。


「ヘレンさんに毎度来てもらうのは申し訳な――――」
「私は命令されて来ているので」


遮るように返してきたヘレンに、ウルスナは面倒なのに何度も残されては不快に決まっていると、記録を書く手を止めて「やっぱり居るうちに食べます」とテーブルに移動した。

ふらつきながら椅子に座り湯気の出している美味しそうなシチューを目にすると全然無かった食欲が僅かに湧く。


「直接見るとお腹って空くものなんですね」
「…少しでも召し上がってください」
「ありがとうございます。いただきます」


お礼を言える相手がいることにウルスナは口をピクピクさせながら、また温かいシチューをふうふうしながらぱくりと口に入れる。

ミルクの濃厚な香りと具材の旨味が染み込んだシチューが全然喉を通らなかった胃にじわりと広がり喜んでいるような気さえする。


「…美味しい、です」


ズキンズキンと痛む頭を押さえながら少しずつ食べ、半分程でおなかがいっぱいになるが、折角持ってきてくれたのだと食べきってから机に向かい記録を書き始める。


「リ…ノ様から合間に休みを取りながらやれとは言われていないのですか?」


ヘレンからの問いにウルスナは書く手を止めずに答える。


「休むなとも休めとも言われていないので、やりたいようにやってます。今はちゃんと使える道具だってわかってもらえるように頑張ります」


食後に飲んだ薬が効き始めるとまた目が開けられなくなる可能性が高いので今のうちに書けるだけ書いておこうとウルスナは記録に勤しむ。


「…そこまでして国に帰りたくないのですか?」


その言葉にピタリと手を止めたウルスナは顔を上げ目の前の白い壁を見つめながら呟いた。





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