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貴方の唯一として頑張ります 4
しおりを挟むゆっくり鍵盤から指を離したウルスナの顔は涙まみれでさぞかし酷い顔なのだろう。
震える喉をゆっくり深呼吸しながらすぐ後方にいたリグリアーノを見上げる。
切なそうに眉を寄せていたリグリアーノに「リノさんに、聴いて欲しかった私の、一番、好きな曲、です」と伝え、自然と顔が緩んだ。
リグリアーノがこれまでにないほど目を見開く。
ふわりとウルスナの体が浮き、きゅっとリグリアーノに抱き締められる。
頭を引き寄せて優しく撫でながら「…動いたな、自然に」と呟くリグリアーノの言葉に首を傾げていると「初めて音楽で心を揺さぶられた」と言われ頬がまた自然と緩んだ。
不意に思いついたウルスナは「このままソファに行きたいです」とお願いすると、頷いたリグリアーノがソファに向かいウルスナを膝の上に乗せたまま座った。
その場で腰を上げたウルスナは「出来れば怒らないで欲しいです」と前もって伝えてからリグリアーノの顔をそっと抱え込むように抱き締めた。
「ウルスナ?」
リグリアーノは怒ることなく、だが不思議そうにウルスナの腰に優しく腕を回す仕草に、また涙腺が緩みそうになるが耐える。
「このままで聞いて下さい。……リノさんもご存知の通り、私は痩せっぽちですが、耐性があって、粘り強くて、多分…精神的にも強い、はずです」
何か言おうとリグリアーノが動くのを苦しくない程度にきゅっと顔を抱き締める。
「私は皆さんが思っている以上に強い、…今はもっと強くなりました。―――だから、もし今後、…誰かに悪さされたり、悪いものを飲まされても、私はその辺の令嬢さんより、物凄く強いので、絶対リノさんを悲しませることは何が何でもしないと約束します」
「っ…」
「どんなに苦しくて藻掻いても、気張って意地でも気合いをガツンと入れます。死んで堪るかと、死に物狂いで耐え抜きます。死ぬ気…いえ、死なない気で頑張って、リノさんが助けてくれるまで何が何でも絶対に耐えてみせます」
「―っ……っ」
リグリアーノの口元が熱くなる。抱え込んでいるウルスナの胸元が熱くなる。腰に回った腕の力が強くなる。腕が少しだけ震えている。
ウルスナはそれに一切素知らぬふりをしてまた優しくきゅっと抱き締める。
「そこまでの耐性がある私を初めて心から誇ります。リノさんに悲しいことが起きないように、全身全霊で戦います。小さいですけど、意外に強いんです。無限に頑張ってみせます―――だからずっと強いリノさんは、ほんの少しだけ力を抜いても大丈夫です、その分私が踏ん張りますから」
ウルスナは一つ頷き、抱えている綺麗な白銀色の頭を少しだけ撫でる。
「私は、こうして、リノさんの傍に、居ることで、頑張れる源がいっぱいになります」
暫く離さないという風にリグリアーノが苦しくない程度に頭を抱え続ける。
胸元から聞こえる少し乱れる息遣いも鼻を啜る音も今のウルスナには何も聞こえないし何も見えないのだ。
暫くすると、腕の力が徐々に弱まるがウルスナにしっかりと絡まっている。
胸元から規則正しい呼吸音が聞こえるのを、とても愛おしい気持ちが溢れるウルスナは美しい白銀色の髪に頬を寄せてすりすりしていると、小さくノックが鳴った。
ここでピアノとリグリアーノのことでいっぱいだったウルスナは今更ながらこの部屋が来たことのない場所だと気づいた。
後で聞いたところによると、ここはウルスナの部屋になるらしく、リグリアーノの部屋から繋がる二人の寝室、そしてこの部屋に繋がるらしい。
僅かに開いた扉から顔を覗かせたジッロに手振りで目元を覆うタオルが欲しいと伝えると、リグリアーノの様子に瞠目した彼が一つ頷いてゆっくりと扉を閉じていった。
ウルスナはすうすう眠るリグリアーノの顔を見ず、いつかじっくり見てみたいなと思いながらもそのまま優しく頭を抱き締め続けた。
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