【本編完結】幸福のかたち【R18】

朱里 麗華(reika2854)

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1章

7 告白と提案①

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 結局レイヴンは次のお茶会までアリシアと顔を合わせることができなかった。
 そして顔を合わせても急に態度を変えることができない。
 あの日の言葉だけでも謝り、初めからやり直したいと言えれば良かったのに。

 それができなかったことをレイヴンは悔やみ続けることとなる。




 気が付けばレイヴンの言葉に棘を感じなくなっていた。
 優しさを感じることもある。
 常に必死だったアリシアがレイヴンの変化に気が付いたのは、大分時が過ぎてからだった。

 いつの頃からか緊張し過ぎることなくレイヴンと言葉を交わせるようになっていた。
 不思議な気持ちがしたけれど、この頃にはアリシアも少し自信を持てるようになっていた。
 レイヴンに対しても少しずつ自然に、作られた笑顔で接することが出来るようになっていた。



「愛している」
「愛している」

 何度も囁きながらアリシアの頬に口づけを落とす。
 アリシアからの反応はない。

 アリシアの部屋を初めて訪ねたあの日。
 あの日が和解をするチャンスだったのに、レイヴンは部屋へ入ることができなかった。
 意気地なく逃げ出したレイヴンは、その後も逃げ続けてしまった。

 アリシアは教わったことを少しずつ身につけ、俯くことも少なくなり、レイヴンに笑顔を見せるようになった。
 レイヴンはそれが嬉しくて、その関係が壊れてしまうことが恐ろしくて自身が告げたあの冷たい言葉を話題に出すことができなくなっていった。

 このまま良い関係が続けられたらアリシアも忘れてしまうのではないかと。
 そんな甘い夢を見てしまった。

 けれどレオナルドど接するアリシアを見る度にその夢は打ち砕かれる。
 レイヴンに向けられているのは作られた笑顔だ。そこに感情はない。
 アリシアはこんなにも上手く身につけてしまった。

 それでも10年の婚約期間を経て19才で結婚した。

 王立学園を卒業したらすぐに結婚する。
 それは予め決められていたことで、アリシアから止められることはない。

 そんないびつな関係にほの暗い安堵を感じていた。
 結婚してしまえば長い時間を共に過ごすことになる。
 少しずつ夫婦となり、家族になっていけばいい。

 それが甘い考えだったことを思い知らされた。
 先程アリシアはいつもの笑顔でこう言ったのだ。
「殿下、そろそろ側妃候補を選んでいただけますか」と…。

 その言葉を聞いた時、頭の中が真っ白になった。
 アリシアから側妃を持つよう勧められるとは思ってもいなかったのだ。

「嫌だ」

 無意識に言葉が零れ落ちていた。
 そして気がつけばアリシアを抱き締め、今まで一度も告げたことのない言葉を告げていた。

「愛している」と――。

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