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1章
8 告白と提案②
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レイヴンに抱き締められたアリシアは唯々困惑していた。
結婚してそろそろ2年。まだ子どもがいない。
「嫁して3年、子無きは去る」などという言葉もある。
正妻として最も重要な役目は跡継ぎを産むことだ。
ましてやレイヴンは王太子である。必ず跡継ぎが求められる。
今はまだアリシアに遠慮して娘を側妃に差し出そうという貴族はいないが、あと1年もすると側妃を持つよう勧める声も出てくるだろう。
貴族からの声が高まり、追い詰められて選択肢もなく押し付けられた女を側妃に迎えるようなことになればどんな災いが起こるかわからない。
公式な行事には正妃であるアリシアが出席する為、側妃に高い教養は必要ない。
それより大切なのは心映えだ。
子を産んでも増長せず、正妃であるアリシアを立てられること。
レイヴンの恥とならない程度の立ち居振る舞いができること。
但し産んだ子を跡継ぎにする為にはあまり低い身分の女でも困る。
アリシアとしては、側妃が子を産んだ後に自分に子どもが出来ても困る。
跡継ぎ争いなど起すつもりはないので、自身はお褥すべりで構わない。
レイヴンの寵愛が側妃へ向かうのなら離宮へ移ってもいい。
だが寵愛を笠にきて正妃の座を狙うような女は最悪だ。
貴族が正妃派、側妃派に分かれて争うようになれば、国が荒れることになる。
レイヴンの父である国王には5人の側妃がいるが、その内の一人が愚かにも国賓を招いた晩餐会に王妃ではなく自身を連れて行くよう強請ったという。
幸い艶福家ではあるが賢明でもある国王はそれを許さず、何度も王妃の分を犯そうとするその側妃を辺境の離宮へ追放している。
もしそんな女がレイヴンの側妃になったらと思うとうんざりする。
だから予め側妃候補の女を数人選んでおいて、その人となりを1年かけて見極めればと思うのだ。
女の好みがあるだろうから、候補はレイヴンが選ぶようにと伝えたのに。
「嫌だ」
レイヴンはそう言ってアリシアを抱き締めると、アリシアを愛しているなどと言い出したのだ。
「殿下、今すぐ側妃を迎えるというわけではないのです。候補となる女を選んで欲しいのですわ」
レイヴンは今度こそ腹を括るべき時だった。
アリシアから愛人を選べと言われ、心が軋むようだ。だがこの痛みはこれまでアリシアと向き合わず逃げ続けた罰なのだろう。
レイヴンは両手でアリシアの両手をつつむと目を合わせた。
「アリシア、これから僕が話すことに怒っても喚いてもいい。だからどうか本当の気持ちを見せてくれ」
そしてレイヴンは話し出した。
アリシアが婚約者に決まったあの日に告げた言葉を後悔していて、ずっと謝りたいと思っていたこと。
マルグリットからの叱責。
「王太子」と「王太子妃」という役割だけの関係ではなく、夫と妻として夫婦になりたいと思っていること。
そしてアリシアの本当の感情を向けられるレオナルドに嫉妬していること。
アリシアに嫌われたくなくて今まで伝えられなかったこと。
「好かれていないのに嫌われたくないなんておかしいよね」
自嘲するように言われた言葉にアリシアは答えることができなかった。
レイヴンは喧嘩をしたり一緒に笑ったりする両親が理想なのだという。
側妃が5人もいる―その内の一人は幽閉されているがけれど―国王と王妃が理想の夫婦と言われてもアリシアには理解しがたいが、そんな環境で育ってきたレイヴンはそんな形の夫婦しか知らず、父と母の関係が好ましく思われるのだろう。
確かに王宮で暮らすようになり、目にするようになった二人の関係はアリシアとレイヴンの関係とは違っていた。
結婚してそろそろ2年。まだ子どもがいない。
「嫁して3年、子無きは去る」などという言葉もある。
正妻として最も重要な役目は跡継ぎを産むことだ。
ましてやレイヴンは王太子である。必ず跡継ぎが求められる。
今はまだアリシアに遠慮して娘を側妃に差し出そうという貴族はいないが、あと1年もすると側妃を持つよう勧める声も出てくるだろう。
貴族からの声が高まり、追い詰められて選択肢もなく押し付けられた女を側妃に迎えるようなことになればどんな災いが起こるかわからない。
公式な行事には正妃であるアリシアが出席する為、側妃に高い教養は必要ない。
それより大切なのは心映えだ。
子を産んでも増長せず、正妃であるアリシアを立てられること。
レイヴンの恥とならない程度の立ち居振る舞いができること。
但し産んだ子を跡継ぎにする為にはあまり低い身分の女でも困る。
アリシアとしては、側妃が子を産んだ後に自分に子どもが出来ても困る。
跡継ぎ争いなど起すつもりはないので、自身はお褥すべりで構わない。
レイヴンの寵愛が側妃へ向かうのなら離宮へ移ってもいい。
だが寵愛を笠にきて正妃の座を狙うような女は最悪だ。
貴族が正妃派、側妃派に分かれて争うようになれば、国が荒れることになる。
レイヴンの父である国王には5人の側妃がいるが、その内の一人が愚かにも国賓を招いた晩餐会に王妃ではなく自身を連れて行くよう強請ったという。
幸い艶福家ではあるが賢明でもある国王はそれを許さず、何度も王妃の分を犯そうとするその側妃を辺境の離宮へ追放している。
もしそんな女がレイヴンの側妃になったらと思うとうんざりする。
だから予め側妃候補の女を数人選んでおいて、その人となりを1年かけて見極めればと思うのだ。
女の好みがあるだろうから、候補はレイヴンが選ぶようにと伝えたのに。
「嫌だ」
レイヴンはそう言ってアリシアを抱き締めると、アリシアを愛しているなどと言い出したのだ。
「殿下、今すぐ側妃を迎えるというわけではないのです。候補となる女を選んで欲しいのですわ」
レイヴンは今度こそ腹を括るべき時だった。
アリシアから愛人を選べと言われ、心が軋むようだ。だがこの痛みはこれまでアリシアと向き合わず逃げ続けた罰なのだろう。
レイヴンは両手でアリシアの両手をつつむと目を合わせた。
「アリシア、これから僕が話すことに怒っても喚いてもいい。だからどうか本当の気持ちを見せてくれ」
そしてレイヴンは話し出した。
アリシアが婚約者に決まったあの日に告げた言葉を後悔していて、ずっと謝りたいと思っていたこと。
マルグリットからの叱責。
「王太子」と「王太子妃」という役割だけの関係ではなく、夫と妻として夫婦になりたいと思っていること。
そしてアリシアの本当の感情を向けられるレオナルドに嫉妬していること。
アリシアに嫌われたくなくて今まで伝えられなかったこと。
「好かれていないのに嫌われたくないなんておかしいよね」
自嘲するように言われた言葉にアリシアは答えることができなかった。
レイヴンは喧嘩をしたり一緒に笑ったりする両親が理想なのだという。
側妃が5人もいる―その内の一人は幽閉されているがけれど―国王と王妃が理想の夫婦と言われてもアリシアには理解しがたいが、そんな環境で育ってきたレイヴンはそんな形の夫婦しか知らず、父と母の関係が好ましく思われるのだろう。
確かに王宮で暮らすようになり、目にするようになった二人の関係はアリシアとレイヴンの関係とは違っていた。
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