【本編完結】幸福のかたち【R18】

朱里 麗華(reika2854)

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1章

11 戸惑いと駆け巡る噂 ②

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「気に入ったものはある?」

 レイヴンは抱き寄せたアリシアに顔を寄せて訊いてくる。
 そうだ、今は贈り物選びの最中なのだ。

「レイヴン様、ここ数日新しいものをいくつも買いました。もうよろしいのではないでしょうか」

「気に入るものがないの?」

 途端にレイヴンは悲しそうな顔になる。
 そういうこではないのだけれど。

「王都で人気がある店だと聞いていたけど、次からは違う店の者を呼ぶよ」

「殿下?!」

「レイヴン様?!」

 これには商人もアリシアも驚いて声を上げた。

「店には他にも様々な商品がございます。次は必ず妃殿下のお目にかなうものをお持ち致します」

 王家御用達となれば箔がついて評判も上がるが、反対に嫌われたとなると一気に客が離れて店が傾く。商人は狼狽えて今にも泣きそうになっている。
 アリシアとしても品物が気に入らないわけではなくて、必要のない買い物を止めたいだけだ。
 アリシアのせいで店が潰れたらたまらない。

 そこに扉を叩く音がして、侍従がレオナルドの訪れを告げた。

「お兄様!」

 アリシアは兄に救いを求めた。

  入室したレオナルドは、半泣きの商人と縋るような目を向けるアリシアに困惑したが、とりあえず商人は無視することにしてアリシアに笑顔を見せる。
 アリシアはレイヴンの腕から抜け出して立ち上がると、レオナルドの背に腕をまわした。
 レオナルドもアリシアの背に腕を回し、頬に軽く口づける。
 レイヴンが物凄い形相で睨んでいたが、これもきれいに無視をした。

 ふと広げられた商品に目を向けると、美しい銀細工の髪飾りがあった。
 繊細な髪飾りにはアリシアの瞳と同じ色のエメラルドが嵌っている。石はそれほど大きくないが、派手なものより繊細なものを好むアリシアにはぴったりだ。
 屈んで髪飾りを手に取ると、アリシアの髪に翳してた。

「思った通り、アリシアにぴったりだ」

「本当に?似合うかしら?」

「うん、よく似合ってる。この髪飾りは僕が買ってアリシアに贈るよ。請求はルトビア公爵家へ回してくれ」

 レオナルドが告げると、商人は飛び上がって喜んだ。これで汚名を免れる。
 アリシアもほっとした。やっぱり兄はいつでもアリシアを助けてくれる存在なのだ。

「噂で聞いていましたが、殿下の突然の寵愛というのは本当のようですね」

 レオナルドはレイヴンへ視線を向ける。
 アリシアが振り返る直前に、レイヴンはレオナルドを睨むのを止めていた。
 レオナルドへは答えず、アリシアへ笑顔を向ける。

「僕は執務に戻るからレオナルドとゆっくり過ごすといい」
 立ち上がってアリシアの頬にちゅっと音を立てて口づけると、そのまま部屋を出て行った。

 なんだかご機嫌が悪いような?

 不思議に思うアリシアの隣で、レオナルドはくくっと声を漏らした。
 レオナルドはレイヴンの恋心を知っている。だけどこれまで二人の仲がうまくいくよう協力したことはない。
 レオナルドはアリシアの背中へ腕を回すとそっと応接セットへ誘導した。
   侍女がお茶とお菓子を置いて立ち去るのを待って口を開く。

「それですごい噂が流れているけど、何かあったの?」

「それが、私もよくわからないのだけど…」

 そうしてアリシアは、レイヴンに側妃候補を選ぶよう進言したところから今日までのことを全て話した。





「やっとアリシアと向き合う覚悟ができたようですね」

 レイヴンの執務室にやってきたレオナルドは面白いものを見る目でレイヴンを見た。
 レイヴンは渋面を作る。

 アリシアが婚約者に選ばれる前からレオナルドはレイヴンと一緒に学んできた。身分の差はあるが学友とも幼馴染ともいえる。
 レイヴンはレオナルドに王太子としても友人としても認められていると思っているが、アリシアの相手としては認められていない。

 過去にアリシアとの関係を改善する為の協力を求めたことがある。そしてアリシアに謝りたいのだとあの日言ってしまった言葉を告げた。
   結果、静かに激怒したレオナルドに剣の鍛錬場へ連れて行かれ、散々打ち据えられたのだ。

「あの日アリシアが泣いていた理由がこれでわかりましたよ」

 それまで共に鍛錬をしていた時は互角の腕だと思っていたのに、こちらが王子である為常に手加減されていたのだと知った。そしてアリシアが一人で泣いていたと聞いて胸が痛んだ。
 レオナルドは協力を得たいならまずはアリシアへ謝ることだといい、レイヴンはそれが出来ずにここまで来てしまったのだ。

「随分時間が掛かりましたが、アリシアに謝ったそうですね。約束通りこれからは協力しないでもないですよ。ただあの子は不信感が強いので中々難しいと思いますが」

「僕が信用されていないのはわかっている。これから何としてでも取り返すよ」

「そういうことではないんですけどね」
 レオナルドは声に出さず、心の中で呟いた。
 これはまだ教えることではない。


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