【本編完結】幸福のかたち【R18】

朱里 麗華(reika2854)

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2章

7 ジェーンの家庭事情と婚約者③

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「ジェーン嬢は結婚をやめるつもりはないのか?日にちが迫っているとはいえ、婚約者が義妹と関係を持っているのは明らかなんだ。ジョッシュとは婚約破棄して他の男を婿にすればいい」

「それはデミオン殿とアンジュが許さないでしょう。不本意ですが、ジェーンの配偶者を決める権利はあの2人にある。そこにどんな思惑があったとしても、です」

「それに愚かなことですが、ジェーンはジョッシュ殿が好きなのです。2人の婚約が結ばれた時から、ジェーンはずっとジョッシュ殿を想っています。ジョッシュ殿の気持ちがないと知っていても諦めることができないのでしょう」
 
 アリシアの言葉にレイヴンの心が痛んだ。
 アリシアは、自分を愛していない婚約者を想うジェーンを愚かだと言ったが、それはレイヴンも同じである。
 アリシアの気持ちがレイヴンにないと知っていても諦めることができなかった。
 結婚してしまえば、いつか気持ちが通じる日が来ると信じていた。

 今も信じている。

「本当はやめさせたいころですが、ジェーンはこの結婚を受け入れています。ジェーンはジョッシュ殿を想うことで不遇な生活にも耐えてきました。それにきっと意地もあります。エミリーがどんなにジョッシュ殿を愛していても、正妻になるのは自分だという意地です」

 意地だと?

 レイヴンには理解ができない。
 確かにエミリーがどれだけジョッシュに愛されていても、妻になるのはジェーンだ。
 夫に愛されず、お飾りの正妻だと皆に嗤われていても、公の場でジョッシュの隣に立つのはジェーンなのだ。
 だけど、そんな正妻の地位に価値があるのか。

「私には考えられないことですが、ジェーンはきっとそれを望みます。これまでジェーンはアンジュとエミリーに全てを奪われてきました。夫の愛は奪われていてもーー妻の座は渡さない。ジェーンができる抵抗はそれだけしかないのです。私はジェーンが望むならそれがどんなに愚かなことでも叶えたいと思います」

 レオナルドも頷いている。

「けれどジェーンが結婚式の準備をしている間、婚約者であるはずの男は、同じ屋敷の中で愛人エミリーと過ごしているなんて!そんな男の為にジェーンが1人で準備をしているなんて」

 アリシアの声が震えた。
 レイヴンはアリシアを抱き締める腕に力を込める。
 舞踏会での楽し気に踊る2人の姿と、1人でドレスを選び、会場を飾る花を選ぶジェーンの姿が思い浮かんだ。

「2人を物理的に離す必要があるな。エミリーをどこかに閉じ込めるか」

 物騒なことを言っているが、レオナルドならやりかねない。
 アリシアが腕の中で身を震わせ、声を殺して泣いている。レイヴンはアリシアの背中を優しくさすった。

 そこで、レイヴンはふと思いついた。

「アルスタへの使節団にエミリー嬢を入れるのはどうだろう。使節団に選ばれた者は、渡航前に半年間王宮で研修があるし、その後一年アルスタへ行くことになる」

 アルスタは親交の深い隣国で、3年に1度使節団を送ることになっている。
 外交官で組織されるが、毎回1人、特別枠で貴族の子女が加えられることになっていた。
 使節団に加わると1年間の外遊の後、その功績として子爵位が叙爵される。
 継承権のない一代貴族だが、希望する部署で文官としての職が保証されるのだ。

 本来この国では男しか爵位を継ぐことができないが、この子爵位は個人の功績に対する報酬である為、女でも受けることが出来る。
 その為、爵位を継ぐことができない次男以下の者の他、家の事情で結婚できず、生活に不安のある女にも人気のある職務だった。

 邪魔な令嬢を追い払うのに最適な方法だ。


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