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2章
9 ジェーンという少女①
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「可愛いアリシア。少しは気が晴れたかな?」
レイヴンはアリシアを膝の上に乗せ、髪を指に絡ませて弄んでいた。
時々指に絡ませた髪にちゅっと口づけたりもする。
「はい。ありがとうございます」
アリシアはレイヴンの胸に頭を預けている。
この体勢にも最近では慣れてしまった。
あの後すぐに使節団加入の通知が出され、エミリーは王宮での研修に入った。
風の噂ではエミリーは嫌がり、散々駄々を捏ねて文句を言っていたという。
エミリーを溺愛するデミオンも、「まだ学生の娘が1年間も外国に行ってしまうなんて耐えられない、なんとか免除して頂きたい」と陳情しに来たらしい。
だけどレイヴンは相手にしない。
にこにこしたしたまま、「それじゃあ彼女は学園を卒業した後どうするつもりなんだ?婚約者も決まってないというし、家庭教師かなにか、生活していく為のあてがあるのか?」と問われたデミオンは、まさか「姉の夫の愛人として養われる予定だ」と答えるわけにもいかずに黙り込んでしまった。
続けて、「僕の妃が彼女の将来を案じているんだ。僕の妃は本当に心優しいよね」と惚気られ、アリシアがエミリーを案じることなど決して無いと知っているデミオンは、苦虫を噛み潰したような顔をして帰っていったという。
レイヴンはもちろんこれですべての問題が解決したとは思っていない。
最大の問題はジョッシュにジェーンと子を作る気があるのか、なのだ。
そこはジョッシュの良識に掛けるしかないが、婚約者と同じ屋根の下で義妹と関係を持つような男に期待はできないだろう。
しかしエミリーの子が侯爵家を継くのは何としてでも阻止しなければならない。
それだけははっきりしている。
レオナルドは「最悪の場合、ジョッシュ殿に他の女をあてがうしかないな」と言っていた。
ジョッシュにエミリー以上の女を与えて夢中にさせ、エミリーへの興味を失わせるというのは、ジョッシュをエミリーから引き離す方法として良案ではあるが、信頼する従兄が愛する夫の愛人を用意したのだと知った時、ジェーンはどう思うのか。
レオナルドとジェーンはこれまでと同じ関係ではいられないだろう。
だけどアリシアはその考えに同意していた。
アリシアの想像でしかない、この「合法的簒奪」の可能性をジェーンに話すつもりはない。
ジョッシュを愛しているジェーンを更に傷つけることになる。
ジェーンには知られない内に排除する。
侯爵家簒奪を阻止する為には、これまで築いてきた信頼関係を失ってもいい。
2人はその覚悟を決めていた。
とりあえず1年半の猶予はできたのだ。
アリシアはジェーンの結婚式に思いをはせる。
王太子妃であるアリシアは、侯爵家の結婚式に参列できない。
それでも大切なジェーンの結婚式だ。
たとえそこに愛は無くても、出来る限り幸せな結婚式を挙げて欲しいと願っている。
レイヴンはまだどこか思い詰めた表情のアリシアを抱き締める。
あの時言った言葉は本心だ。
愛する妃の憂いを除きたい。
アリシアに「レイヴンと結婚して良かった」と思って欲しい。
レイヴンはアリシアを膝の上に乗せ、髪を指に絡ませて弄んでいた。
時々指に絡ませた髪にちゅっと口づけたりもする。
「はい。ありがとうございます」
アリシアはレイヴンの胸に頭を預けている。
この体勢にも最近では慣れてしまった。
あの後すぐに使節団加入の通知が出され、エミリーは王宮での研修に入った。
風の噂ではエミリーは嫌がり、散々駄々を捏ねて文句を言っていたという。
エミリーを溺愛するデミオンも、「まだ学生の娘が1年間も外国に行ってしまうなんて耐えられない、なんとか免除して頂きたい」と陳情しに来たらしい。
だけどレイヴンは相手にしない。
にこにこしたしたまま、「それじゃあ彼女は学園を卒業した後どうするつもりなんだ?婚約者も決まってないというし、家庭教師かなにか、生活していく為のあてがあるのか?」と問われたデミオンは、まさか「姉の夫の愛人として養われる予定だ」と答えるわけにもいかずに黙り込んでしまった。
続けて、「僕の妃が彼女の将来を案じているんだ。僕の妃は本当に心優しいよね」と惚気られ、アリシアがエミリーを案じることなど決して無いと知っているデミオンは、苦虫を噛み潰したような顔をして帰っていったという。
レイヴンはもちろんこれですべての問題が解決したとは思っていない。
最大の問題はジョッシュにジェーンと子を作る気があるのか、なのだ。
そこはジョッシュの良識に掛けるしかないが、婚約者と同じ屋根の下で義妹と関係を持つような男に期待はできないだろう。
しかしエミリーの子が侯爵家を継くのは何としてでも阻止しなければならない。
それだけははっきりしている。
レオナルドは「最悪の場合、ジョッシュ殿に他の女をあてがうしかないな」と言っていた。
ジョッシュにエミリー以上の女を与えて夢中にさせ、エミリーへの興味を失わせるというのは、ジョッシュをエミリーから引き離す方法として良案ではあるが、信頼する従兄が愛する夫の愛人を用意したのだと知った時、ジェーンはどう思うのか。
レオナルドとジェーンはこれまでと同じ関係ではいられないだろう。
だけどアリシアはその考えに同意していた。
アリシアの想像でしかない、この「合法的簒奪」の可能性をジェーンに話すつもりはない。
ジョッシュを愛しているジェーンを更に傷つけることになる。
ジェーンには知られない内に排除する。
侯爵家簒奪を阻止する為には、これまで築いてきた信頼関係を失ってもいい。
2人はその覚悟を決めていた。
とりあえず1年半の猶予はできたのだ。
アリシアはジェーンの結婚式に思いをはせる。
王太子妃であるアリシアは、侯爵家の結婚式に参列できない。
それでも大切なジェーンの結婚式だ。
たとえそこに愛は無くても、出来る限り幸せな結婚式を挙げて欲しいと願っている。
レイヴンはまだどこか思い詰めた表情のアリシアを抱き締める。
あの時言った言葉は本心だ。
愛する妃の憂いを除きたい。
アリシアに「レイヴンと結婚して良かった」と思って欲しい。
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