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2章
19 もう一人の従兄②
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アリシアと仲の良いロバートに、レイヴンはずっと黒い感情を持っていた。
この国では従兄妹同士の結婚を認めている。
現在はルトビア公爵家とモルガン伯爵家が婚姻を結んでも互いに利がないが、もしレオナルドがおらずにアリシアが惣領姫として婿を取ることになれば、血筋が近く優秀なロバートが第一候補だったに違いない。
2人の間に何かがあると疑っているわけではないが、レイヴンにとってアリシアと親しい男はすべて嫉妬の対象になるのだった。
「噂には聞いていましたが、随分と仲睦まじくなられたのですね」
対してロバートは、親し気な2人の様子に目を細めている。
ロバートも昔からレイヴンの想いを知っていて、嫉妬したレイヴンに睨まれる度に申し訳なさそうな顔をしていた。
それに愛のない結婚をするつもりの従妹を案じてもいたようだ。
アリシアの隣に座ったレイヴンに、エレノアが紅茶を用意する。
初めて嗅ぐ香りがしていた。
「ロイ兄さまが、お土産にアルスタの珍しい茶葉をくださいましたの」
2人の前にも同じ紅茶が出されていた。
アリシアが嬉しそうに口に運んでいる。
「ロバート殿はアルスタにいたのか?」
「色々ですね。買い付けの為に各国を回っているのですが、アルスタには支店がありますので、一度足を運べば比較的長く滞在することになります」
ロバートはレイヴンやアリシアより5歳年上で、子どもの頃から飛び抜けて優秀だと評判だった。
ロバートが学園に入学した時から、卒業後は貴族院に入るものだと誰もが思っていた。
年長の議員たちはそれを心持ちにしていたが、優秀な成績で学院を卒業したロバートは、卒業してすぐに自分の商会を立ち上げて商人になってしまった。
そしてその商才を遺憾なく発揮して、たった数年でアナトリア国内だけではなくアルスタ、シェルツにも店を出しているのだ。
アナトリアに戻ったのはレイヴンとアリシアの結婚式以来なのではないだろうか。
「ロイ兄さまが帰ってきてくれて嬉しいわ。いつまでいらっしゃるの?」
ロバートへの親しみを隠さないアリシアにレイヴンの顔がわずかに歪む。
レイヴンも他人に表情を見せない術を身につけているので、その表情の変化に気がつく者はほとんどいない。
だけどそれに気がつくのがレオナルドでありロバートだ。
今もやはり気づかれているようで、ロバートが困ったような顔で笑った。
「レオからの手紙を読んだのですよ。アルスタの家には随分前に届いていたのですが、長らく留守にしていたせいで読むのが遅くなってしまいました。申し訳ない」
「お兄様から手紙が?」
「ジェーンのことですよ。読んですぐに帰ってきましたが、あまりのことに驚きました。随分酷い状況のようですね」
戻ったからには解決するまでアナトリアを離れるつもりはありません、とロバートは力強く言い切った。
「どういうことですの?」
ロバートの言葉にアリシアの胸が騒ぐ。
これまでも状況は決して良いとは言えなかったが、アリシアが知らないことがあるようだ。
答えを待ってロバートを見つめていると、ロバートが視線を動かした。
視線を追うとレイヴンが目を伏せている。
「アリシアに聞かせたくなくて、耳に入らない様にしてたけど…エミリーとジョッシュのことが噂になっている」
この国では従兄妹同士の結婚を認めている。
現在はルトビア公爵家とモルガン伯爵家が婚姻を結んでも互いに利がないが、もしレオナルドがおらずにアリシアが惣領姫として婿を取ることになれば、血筋が近く優秀なロバートが第一候補だったに違いない。
2人の間に何かがあると疑っているわけではないが、レイヴンにとってアリシアと親しい男はすべて嫉妬の対象になるのだった。
「噂には聞いていましたが、随分と仲睦まじくなられたのですね」
対してロバートは、親し気な2人の様子に目を細めている。
ロバートも昔からレイヴンの想いを知っていて、嫉妬したレイヴンに睨まれる度に申し訳なさそうな顔をしていた。
それに愛のない結婚をするつもりの従妹を案じてもいたようだ。
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初めて嗅ぐ香りがしていた。
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2人の前にも同じ紅茶が出されていた。
アリシアが嬉しそうに口に運んでいる。
「ロバート殿はアルスタにいたのか?」
「色々ですね。買い付けの為に各国を回っているのですが、アルスタには支店がありますので、一度足を運べば比較的長く滞在することになります」
ロバートはレイヴンやアリシアより5歳年上で、子どもの頃から飛び抜けて優秀だと評判だった。
ロバートが学園に入学した時から、卒業後は貴族院に入るものだと誰もが思っていた。
年長の議員たちはそれを心持ちにしていたが、優秀な成績で学院を卒業したロバートは、卒業してすぐに自分の商会を立ち上げて商人になってしまった。
そしてその商才を遺憾なく発揮して、たった数年でアナトリア国内だけではなくアルスタ、シェルツにも店を出しているのだ。
アナトリアに戻ったのはレイヴンとアリシアの結婚式以来なのではないだろうか。
「ロイ兄さまが帰ってきてくれて嬉しいわ。いつまでいらっしゃるの?」
ロバートへの親しみを隠さないアリシアにレイヴンの顔がわずかに歪む。
レイヴンも他人に表情を見せない術を身につけているので、その表情の変化に気がつく者はほとんどいない。
だけどそれに気がつくのがレオナルドでありロバートだ。
今もやはり気づかれているようで、ロバートが困ったような顔で笑った。
「レオからの手紙を読んだのですよ。アルスタの家には随分前に届いていたのですが、長らく留守にしていたせいで読むのが遅くなってしまいました。申し訳ない」
「お兄様から手紙が?」
「ジェーンのことですよ。読んですぐに帰ってきましたが、あまりのことに驚きました。随分酷い状況のようですね」
戻ったからには解決するまでアナトリアを離れるつもりはありません、とロバートは力強く言い切った。
「どういうことですの?」
ロバートの言葉にアリシアの胸が騒ぐ。
これまでも状況は決して良いとは言えなかったが、アリシアが知らないことがあるようだ。
答えを待ってロバートを見つめていると、ロバートが視線を動かした。
視線を追うとレイヴンが目を伏せている。
「アリシアに聞かせたくなくて、耳に入らない様にしてたけど…エミリーとジョッシュのことが噂になっている」
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