【本編完結】幸福のかたち【R18】

朱里 麗華(reika2854)

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2章

20 もう一人の従兄③

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 元々あの舞踏会で2人の姿は大勢の目に触れている。
 そこに好奇心旺盛な貴族がこぞって顔を突っ込めば、噂が広まるのに時間は掛からなかった。

「ーー結婚式の準備を口実にジョッシュが侯爵家へ通い、エミリー嬢と部屋に籠っていると言っていただろう?エミリー嬢が研修に入った日から除籍されて戻るまでの一ヶ月、ジョッシュは侯爵家へ一歩も近づかなかったらしい。それなのにエミリー嬢が戻った途端、毎日通い詰めている。ジョッシュの目的が結婚式の準備ではないことは誰の目にも明らかだ」

 アリシアは目の前が暗くなるのを感じた。
 人の不幸が大好きな貴族たちは面白おかしく噂してまわる。
 ジェーンが婚約者と義妹に裏切られていると、国中の貴族に知られてしまった。

「レイヴン様、外出の許可をくださいませ」

「待って、アリシア。どうするつもり?」

 どうするつもりかと訊かれても、何か考えがあるわけではなかった。
 ただこれ以上、あの敵しかいない邸にジェーンを一人で置いていたくない。
 アリシアが考えられるのはそれだけだ。

「ジェーンのところへ行くならレオも呼びましょう。1人だけ置いていかれたと知れば怒り狂うでしょうからね」

 レイヴンは怒り狂うレオナルドなど恐ろしくて見たくない。
 すぐにレオナルドを呼びに行くよう従者へ命じた。
 レオナルドが来るまでの間に、レイヴンは馬車と護衛の手配をし、侯爵家へ先触れを出す。
 それを見ていたアリシアは、気が焦るばかりで護衛や先触れのことなど何も考えていなかったことに気がついた。

「感情で動かない様にと教えられてきましたのに、私、駄目ですわね」

「それだけジェーン嬢を心配しているってことだよ」

 大きく息を吐くアリシアをレイヴンがそっと抱き締める。
 アリシアもレイヴンの背中に腕をまわして胸に頭を預けた。レイヴンが優しく頭を撫でる。
 レオナルドが入室してきた時には、アリシアはすっかり落ち着きを取り戻していた。

 レオナルドはロバートがいることに驚いていたが、再会の挨拶は握手を交わすだけで終わった。
 そしてジェーンのところへ行きたいのだと言うアリシアに頷く。
 レオナルドも噂を知っているのだ。この王都で知らなかったのはアリシアだけなのだろう。

 侯爵家へはレイヴン、アリシア、レオナルド、ロバートの4人で向かうことになった。

「ジェーンを訪ねることで王太子殿下やルトビア公爵家がジェーンの味方であると示すことができる。それだけでも意味があるよ」

 レオナルドの言葉にアリシアは頷いた。
 
 外に出ると、やけに豪華な四頭立ての馬車が2台と王室騎士団30人が並んでいてアリシアは驚いた。
 キャンベル侯爵家はそれほど遠くない。
 これほどの護衛が必要だとは思わないし、馬車も一台に4人乗ることができる。

「権威を見せつけるのも一つの手だよ」

 戸惑うアリシアにレオナルドがそっと囁いた。
 レイヴンとアリシア、レオナルドとロバートに別れて馬車に乗り込む。

 馬車には当然王家の紋章がついていて、装飾も煌びやかで人目を引くものだ。
 そんな馬車が2台、並んで走り、前後左右を30人の王室騎士団が守っている。
 街道に出ると、やはり行き合わせた人たちの視線を集めていた。
 これもすぐに噂になるだろう。
 
 レオナルドが言うように、王太子夫妻とルトビア公爵家がジェーンの側についたと知らしめる為のパフォーマンスなのだ。


 
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