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2章
39 過去の噂③
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「おかしいと思ったのよ。あなたは叔母様の婚約者だった方と同じ立場なのに、まったく動揺した素振りがないのだもの。叔母様の婚約者は当時王太子だった陛下の怒りを恐れて婚約解消を申し入れたというのに、あなたはこのまま結婚したらレイヴン様の怒りを買うんじゃないか、なんて考えてもいない。知らないんだから当然よね」
ジョッシュは顔面蒼白になっていた。
明るい未来の為には何としてもジェーンと結婚し、仲を修復して認めてもらうしかないと思っていたのに、結婚すれば今度は恋敵としてレイヴンの怒りを買うというのか。
「あなた、そんなに情報に疎くてどうやって生きていくつもりなの?」
やっぱりこんな男に侯爵家の当主は務まらないわ、とアリシアは改めてこの婚約は失敗だったのだと溜息を吐く。
「大切にされていた叔母様が婚約を解消されて、大切にされていないジェーンが結婚間近だなんて、上手くいかないものね」
皮肉なことではあるが、それが才覚の差でもあり、ジョッシュがそれだけジェーンに興味を持っていなかったのだとも言える。
実際ジョッシュはエミリーが研修で酷い目にあったと言っていた。
エミリーには研修中何があったのか、どう過ごしていたのか――それがエミリーによって曲解された話であっても――聞いているのだ。
だけどどれほどジェーンを嫌っていたとしても、婚約者である以上その生活や周囲の人間関係に興味がなかったでは済まされない。
もしレイヴンが感情で権力を振るうような人であれば、ジェーンの婚約者であるジョッシュは目の敵にされただろう。
それに加えて、世に許された婚約者でありながらジェーンをぞんざいに扱っているとなれば、何かと理由をつけて粛清されてもおかしくない。
婚約者の周囲に興味がないということは、自分の将来に興味がないと言っているのと同義なのだ。
茫然自失となったジョッシュは、反応を示さなくなってしまった。
そんなジョッシュをアリシアはしばらく眺めていたが、やがて興味を失くしてジェーンに笑いかけた。
「それじゃあ行きましょう」
目の焦点が合っていないジョッシュをその場に残して、アリシアたちは部屋を出た。
ジェーンはレイヴンの顔をそっと窺った。
思った通り、ジョッシュに負けないくらい青くなっている。
レイヴンは過去にあったレイヴンとジェーンの噂を、アリシアが両親の間にあったことと重ね合わせるとは思っていなかったのだ。
元々事実無根のことなので、忘れかけていたくらいである。
ジェーンがレイヴンと言葉を交わすのは、レイヴンとアリシアの結婚披露パーティーの時以来だ。
学園で親しくしていたとはいっても、卒業してしまえば王太子とただの侯爵令嬢である。個人的に言葉を交わす機会などほとんど無い。
パーティ―の時、レイヴンとアリシアは終始笑顔を見せていた。
それなのにジェーンは、2人の間にどうしようもない距離があるのを感じていた。
決して口には出せないことだが、ジェーンは密かに2人の仲を案じていたのだ。
それが今日、久しぶりに会った2人は親し気に寄り添い合い、手を繋いだりしていた。
それを見たジェーンは、レイヴンの気持ちが通じたのだと嬉しく思っていたのに、違っていたのだろうか。
ジョッシュは顔面蒼白になっていた。
明るい未来の為には何としてもジェーンと結婚し、仲を修復して認めてもらうしかないと思っていたのに、結婚すれば今度は恋敵としてレイヴンの怒りを買うというのか。
「あなた、そんなに情報に疎くてどうやって生きていくつもりなの?」
やっぱりこんな男に侯爵家の当主は務まらないわ、とアリシアは改めてこの婚約は失敗だったのだと溜息を吐く。
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皮肉なことではあるが、それが才覚の差でもあり、ジョッシュがそれだけジェーンに興味を持っていなかったのだとも言える。
実際ジョッシュはエミリーが研修で酷い目にあったと言っていた。
エミリーには研修中何があったのか、どう過ごしていたのか――それがエミリーによって曲解された話であっても――聞いているのだ。
だけどどれほどジェーンを嫌っていたとしても、婚約者である以上その生活や周囲の人間関係に興味がなかったでは済まされない。
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婚約者の周囲に興味がないということは、自分の将来に興味がないと言っているのと同義なのだ。
茫然自失となったジョッシュは、反応を示さなくなってしまった。
そんなジョッシュをアリシアはしばらく眺めていたが、やがて興味を失くしてジェーンに笑いかけた。
「それじゃあ行きましょう」
目の焦点が合っていないジョッシュをその場に残して、アリシアたちは部屋を出た。
ジェーンはレイヴンの顔をそっと窺った。
思った通り、ジョッシュに負けないくらい青くなっている。
レイヴンは過去にあったレイヴンとジェーンの噂を、アリシアが両親の間にあったことと重ね合わせるとは思っていなかったのだ。
元々事実無根のことなので、忘れかけていたくらいである。
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決して口には出せないことだが、ジェーンは密かに2人の仲を案じていたのだ。
それが今日、久しぶりに会った2人は親し気に寄り添い合い、手を繋いだりしていた。
それを見たジェーンは、レイヴンの気持ちが通じたのだと嬉しく思っていたのに、違っていたのだろうか。
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