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2章
53 母への執着①
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「私はずっとジョッシュ殿が好きなのだと思っていました。だからエミリーと関係を持っていると知っていても、婚約を解消しようなんて、これまで思ったこともありませんでした。ですが先ほど、レイヴン殿下の話を聞いていて…。私のこの気持ちは本当に恋なのか、自分の気持ちに疑問を持ちました。私はジョッシュ殿に恋をしているのではなく、ただ叔父様…ルトビア公爵との約束を守り、父を当主の座から降ろすために妥協をしているのではないかと思ったのです」
ジェーンは大きく息を吐いた。
「そしてここへ来て懐かしい話をして、色々と思い出してみて気がつきました。私のジョッシュ殿への気持ちは恋や愛じゃありません。言うなれば…執着、でしょうか」
「…執着?」
「それもジョッシュ殿ではなく、母への執着です」
ジェーンは自嘲した。
「覚えてらっしゃるでしょうか。私がジョッシュ殿と婚約をしたのは7歳の時です。母が亡くなる半年程前に、母が婚約の話を整えてくれました」
サンドラが病気になり寝付くようになるまで、ジェーンの婚約話は「カルヴィエ伯爵家の三男はどうか」と話題に出る程度でほとんど進んでいなかった。
けれどサンドラの病が進み、起き上がれない日が増えるにつれて、サンドラはなんとか婚約を取り纏めようと必死になっていったのだ。
カルヴィエ伯爵家からジョッシュを婿入りさせる了承の返事が来た時は心から安堵した様子だった。
父親としてデミオンが全く頼りにならないと知っていたサンドラは、自分が死んだ後ジェーンが頼りにできる相手を見つけておきたかったのだろう。
…結果としては、まったく頼りにならない相手だったけれど。
「母が死んだ後、父がこの邸にアンジュ殿とエミリーを連れて戻ってきました。母が愛用していたものはすべて捨てられ、母が私の為に選び、買ってくれたドレスや装飾品はエミリーに取られてしまい…。邸の中に母の形見と言えるものは何も無くなってしまいました。だけどジョッシュ殿だけは…。母の形見とは言えませんが、ジョッシュ殿は母が私の為に選んでくれたものの中で、唯一私の元に残ったものなのです」
ジョッシュはジェーンの婚約者として国に届け出がされており、結婚した後は侯爵家の次期当主として国王から正式に認められている。
ジョッシュがジェーンを愛していなくても、たとえエミリーを愛していたとしても、ジョッシュと結婚するのはジェーンであり、ジェーンから正妻の座を奪うことはできない。
これまでジェーンの持ち物をすべて奪ってきたエミリーだが、それだけは無理なのだ。
「だからジョッシュ殿の気持ちなど私には必要なかったのです。本当はジョッシュ殿が誰を愛していても関係がなかった…。ジョッシュ殿やエミリーを酷い人たちだと思っていましたが、私も十分酷い人間ですわ」
「そんなの関係ないわ」
アリシアは只々不愉快だった。
ジェーンは大きく息を吐いた。
「そしてここへ来て懐かしい話をして、色々と思い出してみて気がつきました。私のジョッシュ殿への気持ちは恋や愛じゃありません。言うなれば…執着、でしょうか」
「…執着?」
「それもジョッシュ殿ではなく、母への執着です」
ジェーンは自嘲した。
「覚えてらっしゃるでしょうか。私がジョッシュ殿と婚約をしたのは7歳の時です。母が亡くなる半年程前に、母が婚約の話を整えてくれました」
サンドラが病気になり寝付くようになるまで、ジェーンの婚約話は「カルヴィエ伯爵家の三男はどうか」と話題に出る程度でほとんど進んでいなかった。
けれどサンドラの病が進み、起き上がれない日が増えるにつれて、サンドラはなんとか婚約を取り纏めようと必死になっていったのだ。
カルヴィエ伯爵家からジョッシュを婿入りさせる了承の返事が来た時は心から安堵した様子だった。
父親としてデミオンが全く頼りにならないと知っていたサンドラは、自分が死んだ後ジェーンが頼りにできる相手を見つけておきたかったのだろう。
…結果としては、まったく頼りにならない相手だったけれど。
「母が死んだ後、父がこの邸にアンジュ殿とエミリーを連れて戻ってきました。母が愛用していたものはすべて捨てられ、母が私の為に選び、買ってくれたドレスや装飾品はエミリーに取られてしまい…。邸の中に母の形見と言えるものは何も無くなってしまいました。だけどジョッシュ殿だけは…。母の形見とは言えませんが、ジョッシュ殿は母が私の為に選んでくれたものの中で、唯一私の元に残ったものなのです」
ジョッシュはジェーンの婚約者として国に届け出がされており、結婚した後は侯爵家の次期当主として国王から正式に認められている。
ジョッシュがジェーンを愛していなくても、たとえエミリーを愛していたとしても、ジョッシュと結婚するのはジェーンであり、ジェーンから正妻の座を奪うことはできない。
これまでジェーンの持ち物をすべて奪ってきたエミリーだが、それだけは無理なのだ。
「だからジョッシュ殿の気持ちなど私には必要なかったのです。本当はジョッシュ殿が誰を愛していても関係がなかった…。ジョッシュ殿やエミリーを酷い人たちだと思っていましたが、私も十分酷い人間ですわ」
「そんなの関係ないわ」
アリシアは只々不愉快だった。
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