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2章
77 継承問題①
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「今日はこれくらいにしましょうか」
マルグリットが一同を見渡して言った。
「私はこれから陛下と侯爵夫妻の処罰について協議します。ジェーン嬢は王宮に滞在することになるから、すぐに部屋を整えさせなさい」
レイヴンが頷き、手を打って部屋の外で待機していた侍従を呼び寄せた。
レイヴンがジェーンの為に部屋を整えるよう伝えると、侍従は一瞬おかしな顔をしたがすぐに部屋を出て行った。
「ジェーン嬢が王宮に滞在することを一応侯爵家にも伝えないとね」
「それは必要ないと思います」
「それはどうして?」
「父も義母も、私がいなくても気にしません。今日はアリシア様やレオナルド殿がいらっしゃったので、公爵邸に滞在しているのだと思っているでしょう」
そう言うと、王と王妃が苦いものを食べたような顔をするのをジェーンはおかしな気分で見つめた。
常に存在を無視されていたジェーンは既にそんなことでは傷つかなくなっている。
「陛下。デミオン殿がジェーンは公爵邸にいると思っているのならその方が良いでしょう。証人となる侍女たちをジェーンの世話をさせると言って公爵邸に移します」
「良かろう。王妃の采配通り侯爵家の証人と医師のことはそなたに任せる。思うようにせよ」
「ありがとうございます」
「あの、陛下」
ジェーンが呼び掛けに国王が視線を動かす。
「僭越ながら申し上げます。父―ーいえ、キャンベル侯爵夫妻の処罰は早急に行うべきかと存じます」
「それはなぜだ?」
「恐れながら、王宮の侍女や侍従たちに誤解を与えているようなのです」
「誤解とは?」
「はい。私を診察してくれた侍医たちもそうです。侍医たちはその…、私が懐妊しているのではないかと。その為の診察をしようとしていました」
「――なんだと?」
「――私は王太子殿下の愛人と思われているようです」
「なんですって?!」
一際大きな声を上げたのはアリシアだった。レイヴンの顔色がさっと変わる。
隣に座るアリシアを引き寄せぎゅっと抱き締めた。
「違うよ、アリシア。絶対に違うから。僕が愛しているのはアリシアだけだよ」
侯爵邸から一緒に戻って来たアリシアがそんな誤解をするはずがない。
それはわかっている。
だけどアリシアは、出鱈目な学生時代の噂を信じていた。
アリシアにこれ以上おなしな噂を聞かせたくないレイヴンは必死だった。
アリシアがおかしな誤解をしては困る。
例えば――学生時代から今も、レイヴンがジェーンを想っている、などと。
アリシアを抱き締め、「愛している」「アリシアだけだ」と何度もうわ言の様に繰り返すレイヴンを、国王夫妻と公爵夫妻――ようするに両家の両親はあっけに取られて見ていた。レオナルドとロバートは苦笑している。
2人は王太子宮に入った時から周りのおかしな雰囲気に気がついていたのだ。
「レイヴン様、私は何も疑っていませんわ」
「本当に…?」
揺れる瞳でアリシアの顔を窺うレイヴンに可笑しくなってしまう。
「王宮にも学生時代の噂を知っている者がいるのですね。これからは気をつけて行動しませんと」
ジェーンはこれからしばらく王宮に滞在することになる。
当時はそんな噂に頓着しなかったが、これからは大変なことになる。
これ以上ジェーンの醜聞が増えることは防がなければならない。
アリシアが恐れているのはそのことだ。
アリシアの言葉で王と王妃もそれを察したようだ。
マルグリットが一同を見渡して言った。
「私はこれから陛下と侯爵夫妻の処罰について協議します。ジェーン嬢は王宮に滞在することになるから、すぐに部屋を整えさせなさい」
レイヴンが頷き、手を打って部屋の外で待機していた侍従を呼び寄せた。
レイヴンがジェーンの為に部屋を整えるよう伝えると、侍従は一瞬おかしな顔をしたがすぐに部屋を出て行った。
「ジェーン嬢が王宮に滞在することを一応侯爵家にも伝えないとね」
「それは必要ないと思います」
「それはどうして?」
「父も義母も、私がいなくても気にしません。今日はアリシア様やレオナルド殿がいらっしゃったので、公爵邸に滞在しているのだと思っているでしょう」
そう言うと、王と王妃が苦いものを食べたような顔をするのをジェーンはおかしな気分で見つめた。
常に存在を無視されていたジェーンは既にそんなことでは傷つかなくなっている。
「陛下。デミオン殿がジェーンは公爵邸にいると思っているのならその方が良いでしょう。証人となる侍女たちをジェーンの世話をさせると言って公爵邸に移します」
「良かろう。王妃の采配通り侯爵家の証人と医師のことはそなたに任せる。思うようにせよ」
「ありがとうございます」
「あの、陛下」
ジェーンが呼び掛けに国王が視線を動かす。
「僭越ながら申し上げます。父―ーいえ、キャンベル侯爵夫妻の処罰は早急に行うべきかと存じます」
「それはなぜだ?」
「恐れながら、王宮の侍女や侍従たちに誤解を与えているようなのです」
「誤解とは?」
「はい。私を診察してくれた侍医たちもそうです。侍医たちはその…、私が懐妊しているのではないかと。その為の診察をしようとしていました」
「――なんだと?」
「――私は王太子殿下の愛人と思われているようです」
「なんですって?!」
一際大きな声を上げたのはアリシアだった。レイヴンの顔色がさっと変わる。
隣に座るアリシアを引き寄せぎゅっと抱き締めた。
「違うよ、アリシア。絶対に違うから。僕が愛しているのはアリシアだけだよ」
侯爵邸から一緒に戻って来たアリシアがそんな誤解をするはずがない。
それはわかっている。
だけどアリシアは、出鱈目な学生時代の噂を信じていた。
アリシアにこれ以上おなしな噂を聞かせたくないレイヴンは必死だった。
アリシアがおかしな誤解をしては困る。
例えば――学生時代から今も、レイヴンがジェーンを想っている、などと。
アリシアを抱き締め、「愛している」「アリシアだけだ」と何度もうわ言の様に繰り返すレイヴンを、国王夫妻と公爵夫妻――ようするに両家の両親はあっけに取られて見ていた。レオナルドとロバートは苦笑している。
2人は王太子宮に入った時から周りのおかしな雰囲気に気がついていたのだ。
「レイヴン様、私は何も疑っていませんわ」
「本当に…?」
揺れる瞳でアリシアの顔を窺うレイヴンに可笑しくなってしまう。
「王宮にも学生時代の噂を知っている者がいるのですね。これからは気をつけて行動しませんと」
ジェーンはこれからしばらく王宮に滞在することになる。
当時はそんな噂に頓着しなかったが、これからは大変なことになる。
これ以上ジェーンの醜聞が増えることは防がなければならない。
アリシアが恐れているのはそのことだ。
アリシアの言葉で王と王妃もそれを察したようだ。
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