116 / 697
2章
86 約束②
しおりを挟む
「私はレイヴン様を愛したくないのです。酷いことを言っているとわかっています。だけどレイヴン様を愛しさずにいれば、レイヴン様が側妃を迎えても、その方を愛されてもなんとも思わずにいられます。人々の前で私を尊重してくださればいいのです。それが私の、望みなのです…」
アリシアに愛して欲しいと言うレイヴンに、残酷なことを言っていると思う。
だけどレイヴンは側妃を5人もつことができる。
かつてのアンジュのような愛人でさえない。
側妃は公式に認められた妃なのだ。
「何度でも言うよ。僕は側妃なんて娶らない。僕にはアリシアだけだ。ずっとずっと、アリシアだけなんだ」
アリシアに縋るレイヴンの目からは涙が零れ続けている。
「だけど僕の言葉が信じられないのもわかる。僕はアリシアに、僕の気持ちを信じてもらえるようなことをしてこなかった。僕は婚約者として最低だった。婚約破棄を望まれていても仕方がなかったと思う。それなのにアリシアは僕と結婚してくれた。それがどんな理由でも、僕は嬉しいんだ」
レイヴンは抱き締めていたアリシアをそっと離すと視線を合わせた。
「愛している、アリシア。もう1回やり直そう」
アリシアを見つめる目にも言葉にも愛情が籠っていた。
それくらいのことはアリシアにも感じられる。
「アリシアにも僕を愛して欲しい。僕にはアリシアだけだ。アリシアが僕の愛を失うなんてあり得ない。アリシアが怖がらずにすむように、僕を信じてもらえるように、気持ちを伝え続けるよ。不安にさせるようなことはしない。だからもう1回チャンスが欲しい。僕を愛さないって決めないで。僕を締め出さないで。お願いだから…っ」
言葉を詰まらせ、肩を震わせるレイヴンをアリシアは抱き締めた。
レイヴンを愛したくない。
愛してから裏切られたら、アリシアには逃げ場がない。
この王宮で寄り添うレイヴンと寵妃を見続けることになる。
だけど己を守る為だけに、こんなにも弱さをさらけ出したレイヴンを突き放すこともできない。
「他の方に心が移っても、私を正妃として扱うと約束してください」
絞り出した声は微かに震えていた。
「王太子妃として相応しくないような醜態を見せるかもしれません。きっと面倒だと思われるでしょう。お心に従わず、邪魔だと思われるかもしれません。それでも私を、正妃として扱ってくださいませ。それを、約束してくださるのなら…っ」
震えていた声は最後まで聞こえなかった。
だけどレイヴンには届いた。
アリシアを強く抱き締める。
「ありがとう。嬉しい。ごめん、それだけで僕は嬉しい。今は僕を信じられないと思う。だけど僕にはアリシアだけだ。これからはアリシアが、そんな不安を感じなくなるくらい大切にする。今まで本当にごめん。これからは大切にする。僕にはアリシアだけだって、信じてもらえるよう頑張るから」
アリシアはただ頷いた。
「愛してる。愛してるよ」
レイヴンを抱き締めながら、アリシアはむず痒いような気持ちが湧いてくるのを止めることが出来なかった。
認めたくないが、嬉しいと感じている自分が確かにいる。
いつかレイヴンの言葉を信じられるようになるといい。
そんな気持ちが生まれてきている。
レイヴンを信じていつか裏切られても、それでも良いと思えるようになるのだろうか。
2人は抱き合いながら泣き続けた。
泣き疲れてぐったりしたアリシアを、レイヴンが抱き上げて寝室へ連れて行ってくれた。
1日の間に色々とあり過ぎて限界を迎えていたアリシアは、ベッドに横になるとすぐに深い眠りに落ちた。
レイヴンは何があっても離さないというようにアリシアを抱き締めていた。
アリシアに愛して欲しいと言うレイヴンに、残酷なことを言っていると思う。
だけどレイヴンは側妃を5人もつことができる。
かつてのアンジュのような愛人でさえない。
側妃は公式に認められた妃なのだ。
「何度でも言うよ。僕は側妃なんて娶らない。僕にはアリシアだけだ。ずっとずっと、アリシアだけなんだ」
アリシアに縋るレイヴンの目からは涙が零れ続けている。
「だけど僕の言葉が信じられないのもわかる。僕はアリシアに、僕の気持ちを信じてもらえるようなことをしてこなかった。僕は婚約者として最低だった。婚約破棄を望まれていても仕方がなかったと思う。それなのにアリシアは僕と結婚してくれた。それがどんな理由でも、僕は嬉しいんだ」
レイヴンは抱き締めていたアリシアをそっと離すと視線を合わせた。
「愛している、アリシア。もう1回やり直そう」
アリシアを見つめる目にも言葉にも愛情が籠っていた。
それくらいのことはアリシアにも感じられる。
「アリシアにも僕を愛して欲しい。僕にはアリシアだけだ。アリシアが僕の愛を失うなんてあり得ない。アリシアが怖がらずにすむように、僕を信じてもらえるように、気持ちを伝え続けるよ。不安にさせるようなことはしない。だからもう1回チャンスが欲しい。僕を愛さないって決めないで。僕を締め出さないで。お願いだから…っ」
言葉を詰まらせ、肩を震わせるレイヴンをアリシアは抱き締めた。
レイヴンを愛したくない。
愛してから裏切られたら、アリシアには逃げ場がない。
この王宮で寄り添うレイヴンと寵妃を見続けることになる。
だけど己を守る為だけに、こんなにも弱さをさらけ出したレイヴンを突き放すこともできない。
「他の方に心が移っても、私を正妃として扱うと約束してください」
絞り出した声は微かに震えていた。
「王太子妃として相応しくないような醜態を見せるかもしれません。きっと面倒だと思われるでしょう。お心に従わず、邪魔だと思われるかもしれません。それでも私を、正妃として扱ってくださいませ。それを、約束してくださるのなら…っ」
震えていた声は最後まで聞こえなかった。
だけどレイヴンには届いた。
アリシアを強く抱き締める。
「ありがとう。嬉しい。ごめん、それだけで僕は嬉しい。今は僕を信じられないと思う。だけど僕にはアリシアだけだ。これからはアリシアが、そんな不安を感じなくなるくらい大切にする。今まで本当にごめん。これからは大切にする。僕にはアリシアだけだって、信じてもらえるよう頑張るから」
アリシアはただ頷いた。
「愛してる。愛してるよ」
レイヴンを抱き締めながら、アリシアはむず痒いような気持ちが湧いてくるのを止めることが出来なかった。
認めたくないが、嬉しいと感じている自分が確かにいる。
いつかレイヴンの言葉を信じられるようになるといい。
そんな気持ちが生まれてきている。
レイヴンを信じていつか裏切られても、それでも良いと思えるようになるのだろうか。
2人は抱き合いながら泣き続けた。
泣き疲れてぐったりしたアリシアを、レイヴンが抱き上げて寝室へ連れて行ってくれた。
1日の間に色々とあり過ぎて限界を迎えていたアリシアは、ベッドに横になるとすぐに深い眠りに落ちた。
レイヴンは何があっても離さないというようにアリシアを抱き締めていた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,708
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる