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2章
95 婚約の解消と新たな婚約② 10/4 全体的に矛盾を訂正しました。
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「今のは私がジョッシュ様と結婚できるということですか?」
突然話し出したエミリーに、全員が驚いて目を向けた。
許可も取らずに話し出したのだから当然である。
アンジュでさえ、それが不味いことだと理解しているようだ。
いや、男爵家で最低限でも教育を受けていたなら、理解していて当然だった。
だけど国王だけは反応が違っていた。
周りの様子に気がつかない振りをして、楽しそうに問い掛ける。
「ああ、そうだ。そなたはジョッシュ・カルヴィエとの婚姻を望んでいるのだろう?」
「はい、陛下!!ありがとうございます!!」
これまでジェーンのものをすべて奪ってきたエミリーだ。
今回も自分の望みが叶ったのだと信じて疑わない。
満面の笑みを見せると、ジェーンへ得意げな顔を向けた。
「お義姉さまの婚約者をいただいたわ」
ジェーンは何も答えない。
国王の許可を得ていないのだから当然である。
それがわからないエミリーは、ジェーンが何も言い返せないのだと思って得意になっていた。
慌てたのはデミオンとアンジュである。
「へ、陛下。よろしいでしょうか」
「何だ?」
慌てた様子のデミオンが発言の許可を求めると、国王が軽く頷いた。
「ジェーンとジョッシュ殿の結婚式は間近に迫っております。それをこんな直前になって婚約を解消し、エミリーと入れ替えるなど、不名誉な噂が立つに違いありません。それにエミリ―はまだ学生でございます。結婚にはいささか早すぎるかと」
デミオンとアンジュは、ジェーンと結婚して入り婿となったジョッシュに、エミリーと関係を持たせてその子どもを侯爵家の跡取りとする計画を立てている。
エミリーとジョッシュが結婚するのでは意味がないのだ。
「あら、もう子作りを始めているのだもの。早すぎるということはないでしょう」
冷めた目で言い放つマルグリットに、デミオンはぎょっとした目を向けた。
デミオンは、ジョッシュとエミリーが王宮の舞踏会に出ていたことを知らず、2人の噂を教えてくれるような友人もいない。
デミオンとアンジュだけが社交界の噂から取り残されているのだ。
「余もジョッシュ・カルヴィエが婚約者のジェーン嬢ではなく、義妹のエミリー嬢とばかり親しくし、既に関係を持っていると聞いている。現にそなたの娘は喜んでいるではないか」
「そうよ、お父様!おかしなことを言って邪魔をしないで!!」
マルグリットの生々しい嫌味や、国王に義姉の婚約者と関係を持っていると指摘されたことよりも、いつも自分に甘い父親が好きな人との結婚を邪魔することが不満らしい。
アリシアは思わず笑い出してしまった。
「王太子妃よ、随分と楽しそうだな」
「――これは失礼を致しました」
「良い、許す。余も今は気分が良い。そこな娘のお陰だ。――そういえば、この娘はそなたの従妹であったな。婚姻を結ぶこの娘に、王太子妃であるそなたから何か祝いはないか」
「祝い、ですか?」
アリシアは国王の意図が理解できず首を傾げた。
だけど国王は何も答えない。
「――それでは、この憐れな娘に与えられた王命違反の罰、登城の差止めを婚姻の日をもって解除してやりとうございます」
「良いだろう。だが、意味がないのではないか?婚姻を結んでしまえば爵位のないこの娘が王宮に立ち入ることなど出来ぬのだからな」
この国ではいくつかの例外を除いて、爵位のない者が王宮に立ち入ることを禁じている。
例外としては、王宮に納品する業者や王族に呼ばれた商人が挙げられる。他には王族に面会を申し入れて許可された人物だ。ロバートはこれに当たっている。
しかしエミリーは理解できていないようだ。
「爵位がない?私は侯爵家の娘です!!」
とても国王に対する口の利き方ではない。 マルグリットが眉を顰めている。
だけど国王が気になるのは、そこではないようだった。
「…この娘は本当にわかっておらぬのか?」
「だから憐れなのです。まともな教育を受けておりません」
アリシアの目に初めて同情的な色が浮かんだ。
突然話し出したエミリーに、全員が驚いて目を向けた。
許可も取らずに話し出したのだから当然である。
アンジュでさえ、それが不味いことだと理解しているようだ。
いや、男爵家で最低限でも教育を受けていたなら、理解していて当然だった。
だけど国王だけは反応が違っていた。
周りの様子に気がつかない振りをして、楽しそうに問い掛ける。
「ああ、そうだ。そなたはジョッシュ・カルヴィエとの婚姻を望んでいるのだろう?」
「はい、陛下!!ありがとうございます!!」
これまでジェーンのものをすべて奪ってきたエミリーだ。
今回も自分の望みが叶ったのだと信じて疑わない。
満面の笑みを見せると、ジェーンへ得意げな顔を向けた。
「お義姉さまの婚約者をいただいたわ」
ジェーンは何も答えない。
国王の許可を得ていないのだから当然である。
それがわからないエミリーは、ジェーンが何も言い返せないのだと思って得意になっていた。
慌てたのはデミオンとアンジュである。
「へ、陛下。よろしいでしょうか」
「何だ?」
慌てた様子のデミオンが発言の許可を求めると、国王が軽く頷いた。
「ジェーンとジョッシュ殿の結婚式は間近に迫っております。それをこんな直前になって婚約を解消し、エミリーと入れ替えるなど、不名誉な噂が立つに違いありません。それにエミリ―はまだ学生でございます。結婚にはいささか早すぎるかと」
デミオンとアンジュは、ジェーンと結婚して入り婿となったジョッシュに、エミリーと関係を持たせてその子どもを侯爵家の跡取りとする計画を立てている。
エミリーとジョッシュが結婚するのでは意味がないのだ。
「あら、もう子作りを始めているのだもの。早すぎるということはないでしょう」
冷めた目で言い放つマルグリットに、デミオンはぎょっとした目を向けた。
デミオンは、ジョッシュとエミリーが王宮の舞踏会に出ていたことを知らず、2人の噂を教えてくれるような友人もいない。
デミオンとアンジュだけが社交界の噂から取り残されているのだ。
「余もジョッシュ・カルヴィエが婚約者のジェーン嬢ではなく、義妹のエミリー嬢とばかり親しくし、既に関係を持っていると聞いている。現にそなたの娘は喜んでいるではないか」
「そうよ、お父様!おかしなことを言って邪魔をしないで!!」
マルグリットの生々しい嫌味や、国王に義姉の婚約者と関係を持っていると指摘されたことよりも、いつも自分に甘い父親が好きな人との結婚を邪魔することが不満らしい。
アリシアは思わず笑い出してしまった。
「王太子妃よ、随分と楽しそうだな」
「――これは失礼を致しました」
「良い、許す。余も今は気分が良い。そこな娘のお陰だ。――そういえば、この娘はそなたの従妹であったな。婚姻を結ぶこの娘に、王太子妃であるそなたから何か祝いはないか」
「祝い、ですか?」
アリシアは国王の意図が理解できず首を傾げた。
だけど国王は何も答えない。
「――それでは、この憐れな娘に与えられた王命違反の罰、登城の差止めを婚姻の日をもって解除してやりとうございます」
「良いだろう。だが、意味がないのではないか?婚姻を結んでしまえば爵位のないこの娘が王宮に立ち入ることなど出来ぬのだからな」
この国ではいくつかの例外を除いて、爵位のない者が王宮に立ち入ることを禁じている。
例外としては、王宮に納品する業者や王族に呼ばれた商人が挙げられる。他には王族に面会を申し入れて許可された人物だ。ロバートはこれに当たっている。
しかしエミリーは理解できていないようだ。
「爵位がない?私は侯爵家の娘です!!」
とても国王に対する口の利き方ではない。 マルグリットが眉を顰めている。
だけど国王が気になるのは、そこではないようだった。
「…この娘は本当にわかっておらぬのか?」
「だから憐れなのです。まともな教育を受けておりません」
アリシアの目に初めて同情的な色が浮かんだ。
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