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2章
99 疑問と答え③/鞭打ち①
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いつの間にか、エミリーは床にぺたんと座り込んでいた。
「エミリー!あんな言葉を真に受けるな!」
「そうよ!私たちはあなたを愛しているわ!!あなたにはわかるでしょう?!」
デミオンとアンジュがエミリーの気を引こうと必死で声を掛けているが、エミリーには聞こえていないようだ。
座り込むエミリーの傍でしゃがみ、手を取ったのはジョッシュだった。
「僕たちは結婚するんだ、エミリー。僕たちは結ばれることができる。僕たちが望んでいたことだろう?」
エミリーがのろのろとジョッシュの顔を見る。
ジョッシュが頷くとエミリーの目に光が戻った。
ジョッシュに支えられて立ち上がったエミリーは、国王に向かい礼を取った。
「お受けいたします」
「待ちなさい、エミリー!!」
「エミリー、勝手なことを!!」
独断で婚姻を受け入れたエミリーに、デミオンとアンジュが焦りと苛立ちの籠った声を上げる。
2人がエミリーに声を荒げるのは初めてかもしれない。
だけど元から断れるようなことではないのだ。
「片がついたようだな。余の命に従わんというのなら、登城の差止めを解除するどころか投獄するところだったわ」
低く通る国王の声に、デミオンとアンジュはびくっと体を震わせた。
この結婚は王命である。
それを阻止しようとするのなら、2人が投獄されてもおかしくないのだ。
「これは元から決まっていた通り、キャンベル侯爵令嬢とカルヴィエ伯爵令息の結婚である。結婚式は既に公示されている日時と場所で行うこと。この件については以上だ」
これでジョッシュとエミリーの処遇は決まった。
「では次の件に移る」
国王の言葉でその場の空気がまた締まる。
「次はキャンベル侯爵並びに侯爵夫人のジェーン令嬢に対する暴力行為についてだ」
「な…っ!!
アンジュが絶句した。ここで自分が告発されるとは思ってもいなかったようだ。
デミオンもまた驚愕していた。
ジェーンが結婚し、その夫が侯爵家を継ぐ為にはその日までデミオンが当主でいる必要がある。
つい先程、ジェーンの婚約解消が国王によって決められた。
アリシアやジェーンへの暴力行為が露見したことは悟ったものの、次の婚約者が決まるまで――ジェーンがその相手と結婚するまで――はこれまで通り見逃されると勝手に思い込んでいたのだ。
「暴力行為については既に把握している。ジェーン嬢」
「はい」
名を呼ばれたジェーンが両腕の袖を捲る。
楽なワンピースなので肘の辺りまでさっと捲られた。
露わになった腕にはどちらも酷い痣が複数ある。
知っていても目にする度に胸が痛くなる光景だった。
何も知らされていないカルヴィエ伯爵夫妻やジョッシュは息を飲んでいる。
「このような痣が全身至るところにある。それは侍医が確認した」
「こちらが侍医長より提出された診断書です」
アダムが診断書の存在をデミオンとアンジュへ示す。
「そ、それは…」
「私たちではありません!!私たちは何も知りませんわ!!」
デミオンとアンジュが焦りを浮かべて身の潔白を訴えているが、国王が取り合う様子はない。
「証言は押さえられたのか?」
「はい。侯爵夫人が日常的にジェーン嬢へ暴力を振るっていたと、侯爵家の侍女数人が証言してくれました。その侍女たちは公爵邸で保護しています」
国王の問いにレオナルドが淀みなく答える。
デミオンたちに構うことなく事実を並べていくことにしたようだ。
「ジェーン嬢が暴力を受けるのは初めてのことではないと聞いているが」
「はい。8年前と3年前にもありました。8年前はわたしとロバート・モルガン、そしてアリシア様がその現場を目撃しました。3年前のことは、アリシア様が目撃しています」
「エミリー!あんな言葉を真に受けるな!」
「そうよ!私たちはあなたを愛しているわ!!あなたにはわかるでしょう?!」
デミオンとアンジュがエミリーの気を引こうと必死で声を掛けているが、エミリーには聞こえていないようだ。
座り込むエミリーの傍でしゃがみ、手を取ったのはジョッシュだった。
「僕たちは結婚するんだ、エミリー。僕たちは結ばれることができる。僕たちが望んでいたことだろう?」
エミリーがのろのろとジョッシュの顔を見る。
ジョッシュが頷くとエミリーの目に光が戻った。
ジョッシュに支えられて立ち上がったエミリーは、国王に向かい礼を取った。
「お受けいたします」
「待ちなさい、エミリー!!」
「エミリー、勝手なことを!!」
独断で婚姻を受け入れたエミリーに、デミオンとアンジュが焦りと苛立ちの籠った声を上げる。
2人がエミリーに声を荒げるのは初めてかもしれない。
だけど元から断れるようなことではないのだ。
「片がついたようだな。余の命に従わんというのなら、登城の差止めを解除するどころか投獄するところだったわ」
低く通る国王の声に、デミオンとアンジュはびくっと体を震わせた。
この結婚は王命である。
それを阻止しようとするのなら、2人が投獄されてもおかしくないのだ。
「これは元から決まっていた通り、キャンベル侯爵令嬢とカルヴィエ伯爵令息の結婚である。結婚式は既に公示されている日時と場所で行うこと。この件については以上だ」
これでジョッシュとエミリーの処遇は決まった。
「では次の件に移る」
国王の言葉でその場の空気がまた締まる。
「次はキャンベル侯爵並びに侯爵夫人のジェーン令嬢に対する暴力行為についてだ」
「な…っ!!
アンジュが絶句した。ここで自分が告発されるとは思ってもいなかったようだ。
デミオンもまた驚愕していた。
ジェーンが結婚し、その夫が侯爵家を継ぐ為にはその日までデミオンが当主でいる必要がある。
つい先程、ジェーンの婚約解消が国王によって決められた。
アリシアやジェーンへの暴力行為が露見したことは悟ったものの、次の婚約者が決まるまで――ジェーンがその相手と結婚するまで――はこれまで通り見逃されると勝手に思い込んでいたのだ。
「暴力行為については既に把握している。ジェーン嬢」
「はい」
名を呼ばれたジェーンが両腕の袖を捲る。
楽なワンピースなので肘の辺りまでさっと捲られた。
露わになった腕にはどちらも酷い痣が複数ある。
知っていても目にする度に胸が痛くなる光景だった。
何も知らされていないカルヴィエ伯爵夫妻やジョッシュは息を飲んでいる。
「このような痣が全身至るところにある。それは侍医が確認した」
「こちらが侍医長より提出された診断書です」
アダムが診断書の存在をデミオンとアンジュへ示す。
「そ、それは…」
「私たちではありません!!私たちは何も知りませんわ!!」
デミオンとアンジュが焦りを浮かべて身の潔白を訴えているが、国王が取り合う様子はない。
「証言は押さえられたのか?」
「はい。侯爵夫人が日常的にジェーン嬢へ暴力を振るっていたと、侯爵家の侍女数人が証言してくれました。その侍女たちは公爵邸で保護しています」
国王の問いにレオナルドが淀みなく答える。
デミオンたちに構うことなく事実を並べていくことにしたようだ。
「ジェーン嬢が暴力を受けるのは初めてのことではないと聞いているが」
「はい。8年前と3年前にもありました。8年前はわたしとロバート・モルガン、そしてアリシア様がその現場を目撃しました。3年前のことは、アリシア様が目撃しています」
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