【本編完結】幸福のかたち【R18】

朱里 麗華(reika2854)

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2章

111 思惑と結末と②

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「あなたが教えていないから、エミリーは不敬罪で鞭打ち刑になるところだったのよ?」

「…本当なの?お父様」

 エミリーがぽろぽろと泣き出した。

「私、友達がいないの。みんな私が話し掛けると嫌な顔をして、離れていくの。…私が愛人の子どもだからだと思ってた」

 だからエミリーは威張り散らすしかなかった。
 元は愛人の子どもでも、今はアンジュが侯爵夫人だ。

『私は侯爵令嬢よ!言うことを聞かない奴はお父様に言って家を潰して貰うんだから!!』

 そうしたら、少しだけ友達ができた。
 力が弱い一代貴族の男爵令嬢や家の商売が上手くいっていない商家の娘、借金を抱えている子爵令嬢だ。
 彼女たちはエミリーが好きで傍にいるわけではない。
 侯爵家の圧力で家を潰されたら困るから近くにいるだけだ。
 エミリーにはそれがわかっていた。
 わかっているから、もっと権力を振りかざして威張り散らすしかなかった。

 だからジェーンが嫌いだった。
 世間に認められた正妻の娘。
 ジェーンがこんな惨めな思いをすることはない。

 ジェーンの母親がいなければ、初めからお母様が正妻になれたのに!!
 全部ジェーンとその母親のせいだ!!!

 ジョッシュにはジェーンに虐められていると言ったが、半分は本当のことだと思っている。
 ジェーンとその母親がいなければアンジュが正妻になり、エミリーが他の令嬢たちに仲間外れにされることはなかった。
 そう、思っていたのだ。

「…私が仲間外れにされるのは、お義姉様やお義姉様の母親のせいじゃないの?私が悪いの?私の…礼儀作法やマナーが悪いから?」

「…少なくても私は、あなたを従妹だと人に紹介したくないわ。恥ずかしいもの」

 アンジュとエミリーが同時に顔を上げてアリシアを見る。
 その顔には憤りが浮かんでいたが、何も言うことはなかった。

 これまでならエミリーは、「酷い!」と言って泣き喚いていただろう。
 アンジュは「私の娘を侮辱する気なの?!」と、怒り狂っていたはずだ。

 だけどそれが世間の評価なのだと、2人はもう理解していた。
 そしてそう仕向けたのがデミオンなのだということも。

「私、このことだけはお祖母様が方法を間違われたのだと思うのよ」

 アリシアは嘆息する。
 王太子妃として話をしていたはずなのに、つい気持ちが公爵令嬢に戻っていた。
 だけど国王夫妻は何も言わない。見逃してくれるつもりのようだ。
 それよりもアリシアの言葉の意味が気になるのだろう。

 祖母はデミオンとアンジュを嫌っていた。
 デミオンはキャンベル侯爵家へ婿入りするならアンジュと手を切るように、という祖母からの言いつけを初めから破っていた。
 これは祖母の顔を潰すことであり、祖母からすれば侯爵家へ顔向けできない失態である。
 それでも2人の間に生まれたエミリーは、祖母にとってジェーンと同じく孫なのだ。
 だけどエミリーはあまりにも礼儀を知らなかった。
 
 エミリーが侯爵家へ来た後しばらくして祖母が侯爵邸を訪ねたことがある。
 初対面のエミリーはまともに挨拶をすることもできず、静かに座っていることもできなかった。
 更にはジェーンへと持ってきた土産までも欲しがり泣き喚く。
「表に出す前にきちんと躾なさい」
 祖母はそう言い捨てて帰ってきたという。

 その後も聞こえてくる噂はエミリーが招かれた先で傍若無人に振る舞い顰蹙を買ったというものばかりだった。
 欠片も躾られていないエミリーを祖母は見捨てたのだ。

「エミリーを一族の集まりに招くという話が出たこともあったのよ。だけどお祖母様が拒否をしたの。『あの躾のなっていない子どもを公爵家の孫と認めるつもりはない』と仰ってね。だけど一度アンジュ殿とエミリーは参加してみた方が良かったのよ。一族の者は皆厳しいわ。求められるレベルが高いから、礼儀作法もマナーも何度も注意を受けることになる。社交界に出ても恥を掻かない様に、学園の成績だけじゃなく、どれだけ知識を身に着けているのか会話の中で試されるわ。あなたたちも体験してみれば、自分の知識や作法がどれだけ足りていないのかわかったでしょう」

 拗れてしまった2人はその指摘を嫌がらせだと思うかもしれない。
 だけどエミリーがまだ幼い頃から始めていれば、レオナルドもアリシアもそしてジェーンも同じく注意を受けていた。
 皆同じく扱われているとわかったはずだ。

 先日レオナルドはオレリアが公爵家へ嫁いできた後しばらくは一族の間で馴染むのに苦労をしていたと言っていた。
 あの時は驚いたが、考えてみればこのことなのだと思う。
 オレリアは侯爵家の令嬢であり、公爵家へ嫁ぐための教育を受けていたはずだが、それでも初めは苦労をしていたのだ。




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