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3章
1 夜
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晩餐を終えた後、アリシアはレイヴンと自室へ戻って来た。
紫色のドレスから晩餐用のドレスへと着替えている。
特別な色のドレスを着ることができるのは嬉しさもあったけれど、着ている間中気が張り詰めていて疲れてしまった。普段のドレスに着替えた途端ホッとして力が抜けるのを感じていた。
「試すようなことをして申し訳ありませんでした」
アリシアはそっと人払いをし、侍女たちがすべて退室したのを確認してからレイヴンへ頭を下げた。
晩餐の間は常に給仕の者がいるので、こんな話はできなかったのだ。
「アリシアにしてはおかしな頼み事だから、何か考えがあるんだと思ってたよ」
レイヴンが柔らかく笑う。
「それより僕は、アリシアの我儘が聞けて嬉しかったな。アリシアのお願い事を聞いたのは、これが初めてだ」
穏やかな顔のレイヴンを見ているとアリシアは申し訳ないような、哀しいような気持ちが込み上げてきた。
レイヴンがソファに座る。
レイヴンはもうアリシアを膝に乗せようとしないと知っているので、アリシアは自分からレイヴンの膝に座った。
思いがけない行動にレイヴンが目を丸くする。
アリシアは気にせずにレイヴンの胸へ顔を寄せた。
「アリシア…」
レイヴンが戸惑った声を出す。
レイヴンはこの数日、アリシアを膝に乗せたり頬や額に口づけたりという過剰なことをしなくなっていた。
それはアリシアがレイヴンを嫌っているかもしれないと思っているからだ。嫌いな相手に触れられるのは苦痛だろうと気をまわしている。
「…私が嫌になりましたか?」
「そんなはずはない!僕がアリシアを嫌になることなんて、絶対にないよ!!」
「良かった…」
アリシアが微笑む。
「私がレイヴン様を嫌になることもありませんわ。これまでのことはお互い様でしょう。私も似たような態度でした」
「それは僕が、あんなことを言ったから…」
「レイヴン様、もうやめましょう?」
アリシアが上目遣いに見上げて言うと、レイヴンは感に堪えないというようにアリシアをぎゅうぎゅうと抱き締める。
気持ちは伝わったようだ。
2人の前には部屋を出ていく前にエレノアが入れてくれた紅茶と苺が用意されている。
アリシアはフォークを使わず苺をつまむ。
行儀が悪いが、レイヴンは咎めない。
「レイヴン様が取り寄せて下さったのね」
「うん。アリシアが何かを食べたいって言うのは初めてだったから」
アリシアがこれまでレイヴンに望んだことは、側妃候補を選ぶことだけだった。
アリシアが苺を口に含むのをレイヴンは幸せな気持ちで見守った。
「レイヴン様も食べてくださいませ」
可愛く頼まれて、レイヴンも苺をつまむ。
公式な場では手でつまんで食べたりしない。アリシアもやっとここがプライベートな場所なのだと認識してくれたようだ。
嬉しくなったレイヴンがアリシアの額に口づける。
「…嫌?」
訊かれてアリシアは緩く首を振った。途端に額、こめかみ、両頬へと口づけられる。
最後に少し躊躇った後、レイヴンはアリシアの唇に口づけた。
アリシアは驚いて目を開く。
寝室以外の場所で唇に口づけられたことはほとんどない。
だけどレイヴンはもう「嫌?」とは訊かなかった。
何度も何度も軽い口づけを繰り返す。
その内下唇に吸いつかれた。
驚いて少し口を開くと次は舌が入ってくる。
「んっ…うぅん…っ」
小さな声が漏れる。
それを何度も繰り返し、息が苦しくなったところでレイヴンが囁いた。
「今日…最後までしてもいい?」
懇願するような声だ。
泣きながら抱き合って眠ったあの日から、レイヴンはアリシアを抱いていない。
それもアリシアに嫌われているかもしれないと恐れていたからだった。
だからアリシアはレイヴンの胸に顔を寄せてぎゅうと抱きつき、小さく頷いた。
「ああ…っ!アリシア!アリシア…っ!!」
抱き着いたアリシアをレイヴンが強く抱き締める。
そのまままた何度も口づけられる。回数を重ねる度に口づけが深くなっていく。
このままではここで最後まで至ってしまいそうだ。
「レ、レイヴン様…」
口づけの合間にアリシアは必死でレイヴンから身を離した。
2人ともすっかり息が上がってしまっている。
「準備を、して参りますわ。湯浴みをして身を整えます」
そう言うとレイヴンは名残惜しそうにしながらも腕を離してくれた。
人払いを解いた覚えもないのに、エレノアがさっと現れてアリシアを浴室へと連れて行く。
背中にレイヴンの強い視線を感じていた。
その日の夜がいつになく激しいものになったのは言うまでもない。
紫色のドレスから晩餐用のドレスへと着替えている。
特別な色のドレスを着ることができるのは嬉しさもあったけれど、着ている間中気が張り詰めていて疲れてしまった。普段のドレスに着替えた途端ホッとして力が抜けるのを感じていた。
「試すようなことをして申し訳ありませんでした」
アリシアはそっと人払いをし、侍女たちがすべて退室したのを確認してからレイヴンへ頭を下げた。
晩餐の間は常に給仕の者がいるので、こんな話はできなかったのだ。
「アリシアにしてはおかしな頼み事だから、何か考えがあるんだと思ってたよ」
レイヴンが柔らかく笑う。
「それより僕は、アリシアの我儘が聞けて嬉しかったな。アリシアのお願い事を聞いたのは、これが初めてだ」
穏やかな顔のレイヴンを見ているとアリシアは申し訳ないような、哀しいような気持ちが込み上げてきた。
レイヴンがソファに座る。
レイヴンはもうアリシアを膝に乗せようとしないと知っているので、アリシアは自分からレイヴンの膝に座った。
思いがけない行動にレイヴンが目を丸くする。
アリシアは気にせずにレイヴンの胸へ顔を寄せた。
「アリシア…」
レイヴンが戸惑った声を出す。
レイヴンはこの数日、アリシアを膝に乗せたり頬や額に口づけたりという過剰なことをしなくなっていた。
それはアリシアがレイヴンを嫌っているかもしれないと思っているからだ。嫌いな相手に触れられるのは苦痛だろうと気をまわしている。
「…私が嫌になりましたか?」
「そんなはずはない!僕がアリシアを嫌になることなんて、絶対にないよ!!」
「良かった…」
アリシアが微笑む。
「私がレイヴン様を嫌になることもありませんわ。これまでのことはお互い様でしょう。私も似たような態度でした」
「それは僕が、あんなことを言ったから…」
「レイヴン様、もうやめましょう?」
アリシアが上目遣いに見上げて言うと、レイヴンは感に堪えないというようにアリシアをぎゅうぎゅうと抱き締める。
気持ちは伝わったようだ。
2人の前には部屋を出ていく前にエレノアが入れてくれた紅茶と苺が用意されている。
アリシアはフォークを使わず苺をつまむ。
行儀が悪いが、レイヴンは咎めない。
「レイヴン様が取り寄せて下さったのね」
「うん。アリシアが何かを食べたいって言うのは初めてだったから」
アリシアがこれまでレイヴンに望んだことは、側妃候補を選ぶことだけだった。
アリシアが苺を口に含むのをレイヴンは幸せな気持ちで見守った。
「レイヴン様も食べてくださいませ」
可愛く頼まれて、レイヴンも苺をつまむ。
公式な場では手でつまんで食べたりしない。アリシアもやっとここがプライベートな場所なのだと認識してくれたようだ。
嬉しくなったレイヴンがアリシアの額に口づける。
「…嫌?」
訊かれてアリシアは緩く首を振った。途端に額、こめかみ、両頬へと口づけられる。
最後に少し躊躇った後、レイヴンはアリシアの唇に口づけた。
アリシアは驚いて目を開く。
寝室以外の場所で唇に口づけられたことはほとんどない。
だけどレイヴンはもう「嫌?」とは訊かなかった。
何度も何度も軽い口づけを繰り返す。
その内下唇に吸いつかれた。
驚いて少し口を開くと次は舌が入ってくる。
「んっ…うぅん…っ」
小さな声が漏れる。
それを何度も繰り返し、息が苦しくなったところでレイヴンが囁いた。
「今日…最後までしてもいい?」
懇願するような声だ。
泣きながら抱き合って眠ったあの日から、レイヴンはアリシアを抱いていない。
それもアリシアに嫌われているかもしれないと恐れていたからだった。
だからアリシアはレイヴンの胸に顔を寄せてぎゅうと抱きつき、小さく頷いた。
「ああ…っ!アリシア!アリシア…っ!!」
抱き着いたアリシアをレイヴンが強く抱き締める。
そのまままた何度も口づけられる。回数を重ねる度に口づけが深くなっていく。
このままではここで最後まで至ってしまいそうだ。
「レ、レイヴン様…」
口づけの合間にアリシアは必死でレイヴンから身を離した。
2人ともすっかり息が上がってしまっている。
「準備を、して参りますわ。湯浴みをして身を整えます」
そう言うとレイヴンは名残惜しそうにしながらも腕を離してくれた。
人払いを解いた覚えもないのに、エレノアがさっと現れてアリシアを浴室へと連れて行く。
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