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3章
12 お茶会①
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レイヴンの執務室を訪れると、中から従者が扉を開けてくれる。
部屋に入ったレオナルドは机に向かうレイヴンを見て驚いた。
レイヴンはレオナルドが入室しても顔を上げることなく一心にペンを走らせている。
以前のレイヴンは執務時間という概念がないようだった。
休憩を取ることもなく、朝から夜遅くまで執務室に籠っていることがよくあったのだ。
それがアリシアと過ごすようになってからはすっかり変わっていた。昼食も休憩時間もきっちり取ってアリシアと一緒に過ごしている。
以前と比べて仕事量が減ったわけではない。
アリシアとの時間を1分でも減らしたくないレイヴンが、何が何でも時間通りに仕事を終えようと必死になってこなしているのだ。
だから脇目もふらずにペンを走らせるレイヴンの姿は珍しいものではないのだが、今は休憩時間である。
レオナルドは主が不在の部屋に書類だけを置いて戻るつもりだったのだ。
「この時間に殿下がいらっしゃるのは珍しいですね」
レオナルドが声を掛けると、レイヴンはそこで初めて顔を上げた。
不服そうな顔をしている。
「今日アリシアはお茶会なんだ」
アリシアが月に1度、貴族の夫人たちと交流する為に開いているお茶会だ。
1度だけレヴンも途中参加したことがある。
突然現れたレイヴンに貴婦人たちは色めき立っていた。
アリシアは驚いた顔をしていたが、駄目だとも迷惑だとも言わなかった。
だが色めき立った夫人たちの注目はレイヴンに集まり、皆の視線がレイヴンに集中する。
結局レイヴンがいる間、アリシアが想定していたような交流会にはならなかった。
レイヴンが席を立った後も、レイヴンからの寵愛が噂になったばかりだったこともあり、アリシアに向けられたのは噂に関する質問ばかりだったという。
アリシアの公務の邪魔になっている。
そう自覚したレイヴンは、どんなにアリシアが恋しくてもお茶会には顔を出さないと決めていた。
この言葉を聞くまでは。
「ああ、どおりで中央庭園が賑やかだと思いました。今日はご夫妻揃って招待される日ですね」
「――どういうことだ?」
動きを止めたレイヴンにレオナルドが不思議そうな顔をする。
「年に3度、規模の大きなお茶会を開いているでしょう。毎月の夫人方だけで行われるお茶会とは違って今日は当主や子息も招かれている……はずですよ」
レオナルドの言葉を最後まで聞くことなく、レイヴンは執務室を飛び出していた。
中央庭園へ向かって走る。
普段レイヴンが王宮内を走ることなどない。
すれ違う者たちが何事かと驚いた顔でレイヴンの後姿を見送った。
「アリシア!!」
中央庭園へ駆け込んだレイヴンは、アリシアを見つけて大声を出していた。
アリシアが驚いて振り返る。
居合わせた者たちが一斉に立ち上がって礼を取るのを無視したレイヴンは、アリシアの傍へ駆け寄り無言で抱き締めた。
「レイヴン様…?」
アリシアが戸惑ったように名を呼ぶが、レイヴンは応えることができない。
先程アリシアは同じテーブルに座る男性と楽し気に話していた。
正しくは楽し気に見える笑顔で話していた。
そして男性の隣には夫人が座っている。
わかっているのにレイヴンは湧き上がる嫉妬心を押さえることができなかった。
部屋に入ったレオナルドは机に向かうレイヴンを見て驚いた。
レイヴンはレオナルドが入室しても顔を上げることなく一心にペンを走らせている。
以前のレイヴンは執務時間という概念がないようだった。
休憩を取ることもなく、朝から夜遅くまで執務室に籠っていることがよくあったのだ。
それがアリシアと過ごすようになってからはすっかり変わっていた。昼食も休憩時間もきっちり取ってアリシアと一緒に過ごしている。
以前と比べて仕事量が減ったわけではない。
アリシアとの時間を1分でも減らしたくないレイヴンが、何が何でも時間通りに仕事を終えようと必死になってこなしているのだ。
だから脇目もふらずにペンを走らせるレイヴンの姿は珍しいものではないのだが、今は休憩時間である。
レオナルドは主が不在の部屋に書類だけを置いて戻るつもりだったのだ。
「この時間に殿下がいらっしゃるのは珍しいですね」
レオナルドが声を掛けると、レイヴンはそこで初めて顔を上げた。
不服そうな顔をしている。
「今日アリシアはお茶会なんだ」
アリシアが月に1度、貴族の夫人たちと交流する為に開いているお茶会だ。
1度だけレヴンも途中参加したことがある。
突然現れたレイヴンに貴婦人たちは色めき立っていた。
アリシアは驚いた顔をしていたが、駄目だとも迷惑だとも言わなかった。
だが色めき立った夫人たちの注目はレイヴンに集まり、皆の視線がレイヴンに集中する。
結局レイヴンがいる間、アリシアが想定していたような交流会にはならなかった。
レイヴンが席を立った後も、レイヴンからの寵愛が噂になったばかりだったこともあり、アリシアに向けられたのは噂に関する質問ばかりだったという。
アリシアの公務の邪魔になっている。
そう自覚したレイヴンは、どんなにアリシアが恋しくてもお茶会には顔を出さないと決めていた。
この言葉を聞くまでは。
「ああ、どおりで中央庭園が賑やかだと思いました。今日はご夫妻揃って招待される日ですね」
「――どういうことだ?」
動きを止めたレイヴンにレオナルドが不思議そうな顔をする。
「年に3度、規模の大きなお茶会を開いているでしょう。毎月の夫人方だけで行われるお茶会とは違って今日は当主や子息も招かれている……はずですよ」
レオナルドの言葉を最後まで聞くことなく、レイヴンは執務室を飛び出していた。
中央庭園へ向かって走る。
普段レイヴンが王宮内を走ることなどない。
すれ違う者たちが何事かと驚いた顔でレイヴンの後姿を見送った。
「アリシア!!」
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アリシアが驚いて振り返る。
居合わせた者たちが一斉に立ち上がって礼を取るのを無視したレイヴンは、アリシアの傍へ駆け寄り無言で抱き締めた。
「レイヴン様…?」
アリシアが戸惑ったように名を呼ぶが、レイヴンは応えることができない。
先程アリシアは同じテーブルに座る男性と楽し気に話していた。
正しくは楽し気に見える笑顔で話していた。
そして男性の隣には夫人が座っている。
わかっているのにレイヴンは湧き上がる嫉妬心を押さえることができなかった。
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