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3章
18 刑の執行
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処罰の日から半月程が経っているが、アンジュが侯爵邸へ戻されたのは実は2日前だった。
アリシアには血生臭いことを絶対に知らせない様にしているが、レイヴンは処罰の詳しい内容を知っている。
アンジュの鞭打ち刑は200回と決まった。
200回とは些か厳しすぎる気もするが、王太子妃に対する恫喝と傷害未遂での処罰である。
「アリシアに危害を加えようとする者は絶対に許さない」とレイヴンが譲らなかった。
だが絶対に死なせてはならない。
それが国王からの厳命だった。
その為、鞭打ち刑は複数回に分けて行われることになった。
一度に打たれる回数も、間を開けられる日数も不定期だ。
初めの日、アンジュは盛大に抵抗をした。
「触るな!」「離せ!!」と盛大に喚き散らし、体をよじって抵抗をする。
獄吏も衛兵も執行官も決められたことを行うだけで無言である。
そして――この囚人に対しては――多少手荒に扱うことを認められていて。
刑場へ引き摺られる様にして入れられた後も暴れるので手枷を嵌めることが出来ない。
喚き散らすアンジュの頬を衛兵の1人が無言で殴りつけた。
これまで人に殴られたことなどないアンジュである。
物理的な痛みより精神的なショックで呆然して動きを止めたところで手枷を嵌められ、つま先が着くぎりぎりまで吊るされる。
我に返ったアンジュがまた暴れようとするが、執行官は気にせず鞭を打ち付けた。
そこからアンジュにできることはただ悲鳴を上げることだけだ。
鞭打つ音とアンジュの悲鳴だけが響いていた。
1日目の刑が終わると囚人専門の医師に血止め等の簡単な処置をされた後、牢へ戻される。
痛みが酷く熱も出るが、痛み止めも熱冷ましも処方されることはない。
衛兵はぐったりしたアンジュを牢の中の硬いベッドの上に置くと、無言のまま牢を出て行った。
このアンジュが入れられている牢は貴人用の牢ではない。
アンジュの身分は今でも侯爵夫人だが、王太子妃への傷害未遂ということで平民用の牢へ入れられている。
平民の中でも軽犯罪者用の牢なのでそこまで環境が劣悪と言うことはないが、並んだ牢には別の囚人が入っている。
アンジュが熱に浮かされ、痛みに呻いている間も獄吏は牢の中を行き来する。
2度目の日が来るまでアンジュはその足音を何も思わず聞いていた。
数日後、ベッドでぼんやりしていると足音がアンジュの牢の前で止まった。
扉が開くと先日と同じ獄吏と衛兵が2人、そこに立っている。
「きゃあああああっ!!!!」
アンジュの悲鳴が響く。
衛兵は気にした様子もなくアンジュの両脇を抱えて牢から連れ出した。
刑場へ入れられると、そこで行われたことへの恐怖で体の痛みを忘れたアンジュが狂ったように暴れ出す。
また殴りつけられ、今度は体の痛みから体を起こすことができないでいるアンジュへ手枷が嵌められた。
そして吊るされる。
ここからは前回と同じ繰り返しだ。
そして2回目を終えて牢へ戻されたアンジュは、翌日から牢内で響く足音に恐怖することになった。
足音はアンジュが入れられている牢より手前で止まることもある。通り過ぎる時もある。
足音がアンジュの牢の前まで来ると、アンジュは狂ったように悲鳴を上げた。
アンジュの悲鳴が聞こえていないかのように足音は通り過ぎていく。
あの足音が次はいつこの扉の前で止まるのか。
アンジュは只々怯えて数日を過ごした。
そして3度目の時が来る。
足音がアンジュの牢の前で止まるとアンジュは悲鳴を上げた。
扉が開く。
獄吏と衛兵が入ってきた時にはアンジュは震えながら失禁していた。
獄吏や衛兵はそれへチラッと目を向けるが、眉を顰めることもない。
彼らは囚人のそんな失態は見慣れている。
今度は暴れることもなく、只々震えるアンジュを衛兵が両脇から抱えて牢から連れ出した。
刑場へ入れられる。
ここでもアンジュは震えるだけで暴れることなく、初めて素直に手枷を嵌められた。
そして吊るされる。
そしてまた前回と同じ繰り返しである。
アンジュは衛兵によって牢のベッドの上へ戻された。
鞭打ち刑は200回打たれると終わりである。
それはアンジュにも告げられている。
だがアンジュには打たれた数を数えることなど出来ていない。
あと何度これが繰り返されるのか。
足音が牢内に響く。
足音はアンジュの牢より手前で止まり、戻っていく。
足音がアンジュの牢の前を通り過ぎていく。
足音が近づく度にアンジュは悲鳴を上げる。
あの足音がいつこの扉の前で止まるのか。
アンジュは気が休まる時がない。
足音に追い詰められていく。
そして4回目の扉が開く―――。
刑の一部始終をレイヴンが知っているわけではない。
レイヴンへ伝えられるのは執行日とその日に打たれた数だけだ。レイヴンが刑に立ち会うこともない。
だが、その刑の様子を1度目から最後まで見届けた者がいる。
国王だ。
アンジュにそんなことを気にする余裕はないだろうが、刑場は天井が高い。
それは連れて来られる通路部分の2階が部屋になっているからだ。
硝子の仕切りから刑場の様子を見ることができる。
執行官はそれを狙っていたわけではないが、複数回に分けて行われるこの刑が、アンジュの機嫌によって連日殴られていたジェーンの状況に似ているということもできる。
国王はその様子をガラスの向こうから厳しい顔で見ていた。
初めの日から終わりまで、国王は見届けた。
アリシアには血生臭いことを絶対に知らせない様にしているが、レイヴンは処罰の詳しい内容を知っている。
アンジュの鞭打ち刑は200回と決まった。
200回とは些か厳しすぎる気もするが、王太子妃に対する恫喝と傷害未遂での処罰である。
「アリシアに危害を加えようとする者は絶対に許さない」とレイヴンが譲らなかった。
だが絶対に死なせてはならない。
それが国王からの厳命だった。
その為、鞭打ち刑は複数回に分けて行われることになった。
一度に打たれる回数も、間を開けられる日数も不定期だ。
初めの日、アンジュは盛大に抵抗をした。
「触るな!」「離せ!!」と盛大に喚き散らし、体をよじって抵抗をする。
獄吏も衛兵も執行官も決められたことを行うだけで無言である。
そして――この囚人に対しては――多少手荒に扱うことを認められていて。
刑場へ引き摺られる様にして入れられた後も暴れるので手枷を嵌めることが出来ない。
喚き散らすアンジュの頬を衛兵の1人が無言で殴りつけた。
これまで人に殴られたことなどないアンジュである。
物理的な痛みより精神的なショックで呆然して動きを止めたところで手枷を嵌められ、つま先が着くぎりぎりまで吊るされる。
我に返ったアンジュがまた暴れようとするが、執行官は気にせず鞭を打ち付けた。
そこからアンジュにできることはただ悲鳴を上げることだけだ。
鞭打つ音とアンジュの悲鳴だけが響いていた。
1日目の刑が終わると囚人専門の医師に血止め等の簡単な処置をされた後、牢へ戻される。
痛みが酷く熱も出るが、痛み止めも熱冷ましも処方されることはない。
衛兵はぐったりしたアンジュを牢の中の硬いベッドの上に置くと、無言のまま牢を出て行った。
このアンジュが入れられている牢は貴人用の牢ではない。
アンジュの身分は今でも侯爵夫人だが、王太子妃への傷害未遂ということで平民用の牢へ入れられている。
平民の中でも軽犯罪者用の牢なのでそこまで環境が劣悪と言うことはないが、並んだ牢には別の囚人が入っている。
アンジュが熱に浮かされ、痛みに呻いている間も獄吏は牢の中を行き来する。
2度目の日が来るまでアンジュはその足音を何も思わず聞いていた。
数日後、ベッドでぼんやりしていると足音がアンジュの牢の前で止まった。
扉が開くと先日と同じ獄吏と衛兵が2人、そこに立っている。
「きゃあああああっ!!!!」
アンジュの悲鳴が響く。
衛兵は気にした様子もなくアンジュの両脇を抱えて牢から連れ出した。
刑場へ入れられると、そこで行われたことへの恐怖で体の痛みを忘れたアンジュが狂ったように暴れ出す。
また殴りつけられ、今度は体の痛みから体を起こすことができないでいるアンジュへ手枷が嵌められた。
そして吊るされる。
ここからは前回と同じ繰り返しだ。
そして2回目を終えて牢へ戻されたアンジュは、翌日から牢内で響く足音に恐怖することになった。
足音はアンジュが入れられている牢より手前で止まることもある。通り過ぎる時もある。
足音がアンジュの牢の前まで来ると、アンジュは狂ったように悲鳴を上げた。
アンジュの悲鳴が聞こえていないかのように足音は通り過ぎていく。
あの足音が次はいつこの扉の前で止まるのか。
アンジュは只々怯えて数日を過ごした。
そして3度目の時が来る。
足音がアンジュの牢の前で止まるとアンジュは悲鳴を上げた。
扉が開く。
獄吏と衛兵が入ってきた時にはアンジュは震えながら失禁していた。
獄吏や衛兵はそれへチラッと目を向けるが、眉を顰めることもない。
彼らは囚人のそんな失態は見慣れている。
今度は暴れることもなく、只々震えるアンジュを衛兵が両脇から抱えて牢から連れ出した。
刑場へ入れられる。
ここでもアンジュは震えるだけで暴れることなく、初めて素直に手枷を嵌められた。
そして吊るされる。
そしてまた前回と同じ繰り返しである。
アンジュは衛兵によって牢のベッドの上へ戻された。
鞭打ち刑は200回打たれると終わりである。
それはアンジュにも告げられている。
だがアンジュには打たれた数を数えることなど出来ていない。
あと何度これが繰り返されるのか。
足音が牢内に響く。
足音はアンジュの牢より手前で止まり、戻っていく。
足音がアンジュの牢の前を通り過ぎていく。
足音が近づく度にアンジュは悲鳴を上げる。
あの足音がいつこの扉の前で止まるのか。
アンジュは気が休まる時がない。
足音に追い詰められていく。
そして4回目の扉が開く―――。
刑の一部始終をレイヴンが知っているわけではない。
レイヴンへ伝えられるのは執行日とその日に打たれた数だけだ。レイヴンが刑に立ち会うこともない。
だが、その刑の様子を1度目から最後まで見届けた者がいる。
国王だ。
アンジュにそんなことを気にする余裕はないだろうが、刑場は天井が高い。
それは連れて来られる通路部分の2階が部屋になっているからだ。
硝子の仕切りから刑場の様子を見ることができる。
執行官はそれを狙っていたわけではないが、複数回に分けて行われるこの刑が、アンジュの機嫌によって連日殴られていたジェーンの状況に似ているということもできる。
国王はその様子をガラスの向こうから厳しい顔で見ていた。
初めの日から終わりまで、国王は見届けた。
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