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3章
21 アンジュの様子①
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鞭打ち刑を終えたアンジュは直ちに侯爵邸へ戻された。
囚人用の馬車が玄関口の前で止まると、護送してきた衛兵がアンジュを馬車から引きずり降ろす。
アンジュは刑を受けた後、簡単な血止めしかされていない。
馬車で移動している最中も小さな振動で全身に激痛が走る為、ここまでの道中をひたすら蹲って耐えていた。引きずり降ろされた今は立ち上がることさえできない。
だがこれからは邸内での蟄居である。
衛兵はアンジュが屋敷の中へ入るまで見届けなければならない。
その時、玄関の扉が中から開いた。
家令のクレールが馬車の音を聞いていたのだ。
「おや、奥様」
アンジュを見下ろすクレールの目は冷ややかである。
「家令殿か?あとは任せてよろしいか」
衛兵の問いにクレールが恭しく頷く。
役目を終えた馬車が去っていくのを、クレールは頭を下げて見送った。
「さあ奥様、早くお入りください」
未だに蹲っているアンジュにクレールは冷ややかな声を掛ける。
アンジュは扉を開けて待つクレールに助けを求めて見つめるが、クレールに手助けをする気はないようだ。
しばらくして諦めたアンジュは、1人で立ち上がるとヨロヨロと邸の中へと入った。
「アンジュ!!」
アンジュが玄関ホールへ入ると螺旋階段をデミオンが駆け下りてきた。デミオンも馬車の音を聞いていたのだ。
だが小心者のデミオンは侯爵家の敷地から馬車が完全にいなくなるのを待って出て来た。
そういったところは罪人としての自覚があるようだ。
「アンジュ!大丈夫か!!」
よろめくアンジュをデミオンが抱きとめる。
その腕が当たるところにも傷があるアンジュは痛みに呻いた。
「クレール!なぜ手を貸さない?!」
「申し訳ありません、旦那様。今の当家には人手が足りません。ご自身のことはご自分でしていただきませんと」
怒鳴るデミオンを意に介さず、クレールが慇懃に応える。
デミオンは歯を噛みしめた。
処罰の後、邸に戻されてからこんなやり取りが何度も繰り返されているのだ。
邸に残った者たちは、ジェーンが受けていた仕打ちに腹を立てているが、デミオンやアンジュに同じ仕打ちをするつもりはない。
2人が最低限の生活を送るだけの資金を使うことは、ロバートから許可を得ている。
だから最低限の世話はする。
最低限の世話しかしない。
アンジュに手を貸すことは最低限の世話の範囲に入らないようだ。
「………医者を呼べ」
「そうですね。奥様を決して死なせるなと、きつく命を受けておりますので」
誰から、とはクレールは言わなかった。
そうして呼ばれたのがダンテである。
「貴様はあの時の…!!」
ダンテの姿を見た瞬間、デミオンが声を上げた。
デミオンはダンテがあの時のことを証言し、証拠となるようなカルテを提出したせいで処罰を受けたのだと恨んでいる。
「クレール!なぜこんなやつを呼んだ?!即刻邸から追い出せ!!」
デミオンはすぐ傍で痛みに呻くアンジュが横になっていることを忘れたように叫ぶ。
「安価の受診料で往診してくださるお医者様だからですよ。ダンテ殿はこの家の事情も知っておられるし、丁度いいでしょう」
「侯爵家には専属の医師がいるだろう!!」
「――専属医は高いのですよ。今の侯爵家に彼を雇っている余裕はありません。ですので暇を出しました」
「な、なに…?」
呆然とするデミオンに構わず、クレールは部屋の入り口で成り行きを見守るダンテに視線を向けた。
「ダンテ殿、折角来ていただきましたが治療は不要なようです。往診料はお支払いしますので今日のところはこれで…」
「まっ待てっ!!」
不本意ではあっても、アンジュに治療を受けさせるにはダンテに頼む他はない。
それを理解したデミオンは、ダンテを帰そうとするクレールを慌てて止めた。
囚人用の馬車が玄関口の前で止まると、護送してきた衛兵がアンジュを馬車から引きずり降ろす。
アンジュは刑を受けた後、簡単な血止めしかされていない。
馬車で移動している最中も小さな振動で全身に激痛が走る為、ここまでの道中をひたすら蹲って耐えていた。引きずり降ろされた今は立ち上がることさえできない。
だがこれからは邸内での蟄居である。
衛兵はアンジュが屋敷の中へ入るまで見届けなければならない。
その時、玄関の扉が中から開いた。
家令のクレールが馬車の音を聞いていたのだ。
「おや、奥様」
アンジュを見下ろすクレールの目は冷ややかである。
「家令殿か?あとは任せてよろしいか」
衛兵の問いにクレールが恭しく頷く。
役目を終えた馬車が去っていくのを、クレールは頭を下げて見送った。
「さあ奥様、早くお入りください」
未だに蹲っているアンジュにクレールは冷ややかな声を掛ける。
アンジュは扉を開けて待つクレールに助けを求めて見つめるが、クレールに手助けをする気はないようだ。
しばらくして諦めたアンジュは、1人で立ち上がるとヨロヨロと邸の中へと入った。
「アンジュ!!」
アンジュが玄関ホールへ入ると螺旋階段をデミオンが駆け下りてきた。デミオンも馬車の音を聞いていたのだ。
だが小心者のデミオンは侯爵家の敷地から馬車が完全にいなくなるのを待って出て来た。
そういったところは罪人としての自覚があるようだ。
「アンジュ!大丈夫か!!」
よろめくアンジュをデミオンが抱きとめる。
その腕が当たるところにも傷があるアンジュは痛みに呻いた。
「クレール!なぜ手を貸さない?!」
「申し訳ありません、旦那様。今の当家には人手が足りません。ご自身のことはご自分でしていただきませんと」
怒鳴るデミオンを意に介さず、クレールが慇懃に応える。
デミオンは歯を噛みしめた。
処罰の後、邸に戻されてからこんなやり取りが何度も繰り返されているのだ。
邸に残った者たちは、ジェーンが受けていた仕打ちに腹を立てているが、デミオンやアンジュに同じ仕打ちをするつもりはない。
2人が最低限の生活を送るだけの資金を使うことは、ロバートから許可を得ている。
だから最低限の世話はする。
最低限の世話しかしない。
アンジュに手を貸すことは最低限の世話の範囲に入らないようだ。
「………医者を呼べ」
「そうですね。奥様を決して死なせるなと、きつく命を受けておりますので」
誰から、とはクレールは言わなかった。
そうして呼ばれたのがダンテである。
「貴様はあの時の…!!」
ダンテの姿を見た瞬間、デミオンが声を上げた。
デミオンはダンテがあの時のことを証言し、証拠となるようなカルテを提出したせいで処罰を受けたのだと恨んでいる。
「クレール!なぜこんなやつを呼んだ?!即刻邸から追い出せ!!」
デミオンはすぐ傍で痛みに呻くアンジュが横になっていることを忘れたように叫ぶ。
「安価の受診料で往診してくださるお医者様だからですよ。ダンテ殿はこの家の事情も知っておられるし、丁度いいでしょう」
「侯爵家には専属の医師がいるだろう!!」
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「な、なに…?」
呆然とするデミオンに構わず、クレールは部屋の入り口で成り行きを見守るダンテに視線を向けた。
「ダンテ殿、折角来ていただきましたが治療は不要なようです。往診料はお支払いしますので今日のところはこれで…」
「まっ待てっ!!」
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それを理解したデミオンは、ダンテを帰そうとするクレールを慌てて止めた。
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