【本編完結】幸福のかたち【R18】

朱里 麗華(reika2854)

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3章

25 リトマインのお部屋③

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「ジェーンの花園で話していたあれは…、叶うことのない、言わば『夢』なのです」

「どういうこと?」

「私たち4人はよく『夢』の話をしていました。私たちの様に高い身分の者はそれ故に制約が多く、好きに生きている様に見えてその実自由がありません。だから想像の中だけででも自由にと…」

 昔から4人で様々な想像をして楽しんでいた。
「こんなことをしてみたい」「あんなところへ行ってみたい」「それなら私は〇〇をするわ」「それじゃあ僕は××しようかな」
 想像の中でならどこにでも行けるし、何でもできる。

「ですがそれも、表向きの理由です。本当は…」

 アリシアは言葉を切ると紅茶へ手を伸ばした。
 そうして心を落ち着かせる。

 ふうっと息を吐くと顔を上げてしっかりとレイヴンと目を合わせた。

「私とジェーンは物心がついた時には既に仲が良く、よく一緒に遊んでいました。サンドラ叔母様がいらっしゃる頃は、母に連れられて兄と一緒に侯爵邸へ遊びに行っていたのです」

 その頃のアリシアは可愛いものが好きだった。
 可愛い髪飾り、リボンやブローチ、お人形やお人形とお揃いで作ってもらったドレスもお気に入りで、作ってもらう度にジェーンに見せに行っていた。
 ジェーンも同じ様に新しく買ってもらった装飾品やドレス、玩具やお人形を見せてくれていた。

 自分の持ち物を自慢し合っているような意識はなかった。
 ただお気に入りのものを見て欲しい。
 それだけだった。

 だけどサンドラが死んで少し経つと、邸の様子はすっかり変わってしまっていた。
 アリシアはそれまでと同じように新しいリボンやブローチをつけて行ったけれど、ジェーンは何もつけていなかった。
 ジェーンのお気に入りのものはすべてエミリーのものになっていたのだ。

「ジェーンはリボンもブローチも褒めてくれました。『とても可愛いわ』とそれまでと同じように笑ってくれたのです。ですが私は、笑うことができませんでした」

 7歳の子どもの成長は早い。
 ジェーンが来ているドレスは袖が短くなっていた。
 首元にショールの様なものを巻き、後ろでリボン結びにしているが、その下に隠されたボタンは留まっているのだろうか。
 アリシアはそれを帰宅してすぐにオレリアへ伝えたけれど、ジェーンの置かれた状況が改善されることはなかった。

「それから私は、新しいものを買ってもらってもジェーンに見せるのを止めました」

 丁度その頃アリシアはレイヴンの婚約者に選ばれた。
 妃教育が忙しくなり、以前の様に侯爵邸へ遊びに行くことが出来なくなってしまった。
 そして久しぶりに訪れた時、ジェーンがアリシアの首飾りを褒めてくれたのだ。

 その首飾りはアリシアにとって新しいものではなかった。
 だけど久しぶりに会うジェーンには初めて見るものだったのだ。
 それに気がついたアリシアは動揺し、正常な判断ができなくなっていた。

「私、慌ててしまって。上手く考えられなくなってしまって、咄嗟に言ってしまったのです。『ジェーンはどんな首飾りが欲しい?私は肖像画のサンドラ叔母様がしている首飾りが欲しいわ』と…」




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