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3章
33 正殿② 10/26全体的に改訂しました。
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「お兄様、最低」
最初に言葉を発したのは3歳年下の妹、カナリーだった。
カナリーの目元には涙が浮かんでいる。
レイヴンが話し終えると、応接間は沈黙に包まれた。その沈黙を破ったのがカナリーだったのだ。
レイヴンは婚約が決まった日にアリシアへ告げたことや、その時に取ってしまった態度から話を始めた。
その時からカナリーの表情は固く、強張っている。
「お義姉様がお兄様の婚約者に選ばれた時、8歳だったわよね?アイビスと同じ年よ?もしアイビスが婚約者にそんなことを言われたら、私その相手を絶対に許さないわ」
アイビスとはレイヴンのもう1人の同母昧で、今年8歳になる。
年が離れたこの妹をカナリーはとても可愛がっているのだ。
その時は僕も8歳だったんだ、とはとても言えない。
レイヴンとアリシアの間には、歴然とした身分の差があった。
アリシアはレイヴンの婚約者になりたくてなったわけではない。
あの頃、国王が寵愛している側妃に王子が生まれた。
「国王はレイヴン殿下に変えて新たに生まれた王子を王太子にするのではないか」
そんな声が聞こえるようになり、マルグリットはレイヴンの地位を守る為に強い後ろ盾となるルトビア公爵家との縁組を望んだ。
それで選ばれたのがアリシアだ。
王家から打診された婚約を公爵家が断ることはできない。
そしてその婚約を王家から破談にされても受け入れるしかない。
8歳のレイヴンはそれを知っていて、「いつでもこちらの気持ちで別の者と入れ替える」とアリシアを脅したのだ。
「お義姉様はよく我慢なさっていたわね…」
ほとんど交流のない義姉を思い浮かべてみても、悠然と微笑んでいる姿しか浮かんでこない。
そんなアリシアがカナリーは苦手だった。
昔は妃教育の為に訪れるアリシアを物陰からこっそり見ては憧れていた。
3歳しか違わないのに、アリシアは完璧な淑女に見えたのだ。
だけどカナリーが勇気を出して話し掛けても、アリシアから返ってくるのはいつでも血の通わない完璧な笑顔だけ。
それはレイヴンとアリシアが結婚しても変わらなかった。
カナリーだって王女としての教育を受けている。公式な場面で「お義姉様」と呼び掛けたりはしない。
私的な場所で、親しみを込めて呼び掛けても、アリシアは決して外向けの仮面を外そうとしないのだ。
私と仲良くする気がないのだわ。
そう思ったカナリーは、いつしかアリシアが苦手になっていたのだ。
だけど今はその理由が良くわかる。
「結婚に感情は必要ない?君は替えがきく存在だ?そんなことを言われたら、何も話せなくなるわ。嬉しいことも嫌なことも何も話せないじゃない!――だからお義姉様は、いつも教科書のような話し方をされるのだわ」
「…教科書?」
「私はお義姉様を、そう思っていたの」
それは衝撃的な言葉だった。
昔、マルグリットは「人形のような義娘は嫌だ」と言っていた。
カナリーにとってアリシアは「教科書のような義姉」だった。
ショックを受けて青褪めるレイヴンにカナリーは畳み掛ける。
「お兄様、学園でなんと言われているか知っていて?お兄様が本当に愛しているのはキャンベル侯爵令嬢のジェーン様で、お義姉様とは政略で決められた相手だから仕方なく結婚したのだと言われているのよ」
「っ!!」
最初に言葉を発したのは3歳年下の妹、カナリーだった。
カナリーの目元には涙が浮かんでいる。
レイヴンが話し終えると、応接間は沈黙に包まれた。その沈黙を破ったのがカナリーだったのだ。
レイヴンは婚約が決まった日にアリシアへ告げたことや、その時に取ってしまった態度から話を始めた。
その時からカナリーの表情は固く、強張っている。
「お義姉様がお兄様の婚約者に選ばれた時、8歳だったわよね?アイビスと同じ年よ?もしアイビスが婚約者にそんなことを言われたら、私その相手を絶対に許さないわ」
アイビスとはレイヴンのもう1人の同母昧で、今年8歳になる。
年が離れたこの妹をカナリーはとても可愛がっているのだ。
その時は僕も8歳だったんだ、とはとても言えない。
レイヴンとアリシアの間には、歴然とした身分の差があった。
アリシアはレイヴンの婚約者になりたくてなったわけではない。
あの頃、国王が寵愛している側妃に王子が生まれた。
「国王はレイヴン殿下に変えて新たに生まれた王子を王太子にするのではないか」
そんな声が聞こえるようになり、マルグリットはレイヴンの地位を守る為に強い後ろ盾となるルトビア公爵家との縁組を望んだ。
それで選ばれたのがアリシアだ。
王家から打診された婚約を公爵家が断ることはできない。
そしてその婚約を王家から破談にされても受け入れるしかない。
8歳のレイヴンはそれを知っていて、「いつでもこちらの気持ちで別の者と入れ替える」とアリシアを脅したのだ。
「お義姉様はよく我慢なさっていたわね…」
ほとんど交流のない義姉を思い浮かべてみても、悠然と微笑んでいる姿しか浮かんでこない。
そんなアリシアがカナリーは苦手だった。
昔は妃教育の為に訪れるアリシアを物陰からこっそり見ては憧れていた。
3歳しか違わないのに、アリシアは完璧な淑女に見えたのだ。
だけどカナリーが勇気を出して話し掛けても、アリシアから返ってくるのはいつでも血の通わない完璧な笑顔だけ。
それはレイヴンとアリシアが結婚しても変わらなかった。
カナリーだって王女としての教育を受けている。公式な場面で「お義姉様」と呼び掛けたりはしない。
私的な場所で、親しみを込めて呼び掛けても、アリシアは決して外向けの仮面を外そうとしないのだ。
私と仲良くする気がないのだわ。
そう思ったカナリーは、いつしかアリシアが苦手になっていたのだ。
だけど今はその理由が良くわかる。
「結婚に感情は必要ない?君は替えがきく存在だ?そんなことを言われたら、何も話せなくなるわ。嬉しいことも嫌なことも何も話せないじゃない!――だからお義姉様は、いつも教科書のような話し方をされるのだわ」
「…教科書?」
「私はお義姉様を、そう思っていたの」
それは衝撃的な言葉だった。
昔、マルグリットは「人形のような義娘は嫌だ」と言っていた。
カナリーにとってアリシアは「教科書のような義姉」だった。
ショックを受けて青褪めるレイヴンにカナリーは畳み掛ける。
「お兄様、学園でなんと言われているか知っていて?お兄様が本当に愛しているのはキャンベル侯爵令嬢のジェーン様で、お義姉様とは政略で決められた相手だから仕方なく結婚したのだと言われているのよ」
「っ!!」
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