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3章
32 正殿①
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夕食の後、レイヴンは国王や王妃が住まう正殿へ向かっていた。
今日は夕食後の時間にジェーンがアリシアのところへ来ることになっているのでアリシアと過ごすことが出来ない。
いつもはそれでもアリシアを部屋まで送るのだが、今日は用事があるからと食堂の前で別れた。
正殿では王と王妃の他、王妃所生の子どもたちが一緒に暮らしている。
今はマルグリットが面倒を見ているノティスも一緒だ。
マルグリットは家族で過ごす時間を大切にしている為、夕食後の時間を可能な限り子どもたちと正殿の応接間で過ごすことにしていた。
常に忙しいマルグリットは、日中子どもたちと一緒に過ごすことはほとんどできない。だから子どもたちは、この時間にその日1日あったことを母に聞いてもらうのだ。
ただ子どもたちが年頃になってくると、学園の課題があったり1人になりたいと思う時もある。
そんな時は自室で過ごしても構わない。
限られた時間をどう使うのか、マルグリットは口出しすることなく子どもたちの自主性に任せていた。
国王は応接間にいることもあれば、いないこともある。
執務が終わらず執務室に籠っていることや、4人いる側妃のところへ行っていることがあるからだ。
「母上」
「あら、レイヴン。あなたがここへ来るのは久しぶりね」
結婚し、独立したといえるレイヴンが訪ねて来ても、マルグリットは笑顔で迎えてくれる。
だから結婚した後も、アリシアと共に過ごすようになるまではよくここを訪れていた。
その頃はアリシアと夕食も別々に摂っていたし、顔を合わせることも言葉を交わすこともほとんどなかった。
アリシアは寝室を挟んだ隣の部屋にいるのに、レイヴンはその扉の前をただ通り過ぎることしかできない。
それが辛くて寂しくて、レイヴンはよくここを訪れていたのだ。
「母上にお願いがあります。……アリシアをここへ連れて来たいのです」
「それはどういうことかしら?」
マルグリットの目が眇められた。
レイヴンは絆の強いアリシアたち4人の中に入りたいとずっと願っていた。
それと同時に、アリシアと家族になりたいとも願っている。
最近、レイヴンはアリシアたち4人の中に少し入ることが出来たと思う。だから今度はレイヴンの家族の中にアリシアを迎え入れて欲しいのだ。
マルグリットがそれを嫌がっているというわけではない。
むしろマルグリットは初めからアリシアを義娘として迎え入れるつもりでいた。
だけどアリシアの中で、レイヴンは夫ではなく王太子だった。
マルグリットは義母ではなく王妃だったのだ。
2人が結婚した当初、マルグリットはレイヴンとアリシアを家族の晩餐に何度か招いた。
晩餐の後は応接間で一緒に過ごし、マルグリットはアリシアへ「家族となったのだから、これからはいつでも自由にここへ来てちょうだい」と伝えていた。
アリシアはマルグリットへ感謝の言葉を述べていたけれど、アリシアが自らの意志でここへ来たことはこれまでに一度もない。
マルグリットもまた、数回招いた後はアリシアの意向に任せている。
これまでアリシアにはレイヴンと家族になるつもりがなかった。
アリシアがそうなったのはレイヴンのせいだ。
だけどアリシアは変わろうとしてくれている。
アリシアの事情を勝手に話すことはできないので、自分が犯した過ちを告白することにした。
今日は夕食後の時間にジェーンがアリシアのところへ来ることになっているのでアリシアと過ごすことが出来ない。
いつもはそれでもアリシアを部屋まで送るのだが、今日は用事があるからと食堂の前で別れた。
正殿では王と王妃の他、王妃所生の子どもたちが一緒に暮らしている。
今はマルグリットが面倒を見ているノティスも一緒だ。
マルグリットは家族で過ごす時間を大切にしている為、夕食後の時間を可能な限り子どもたちと正殿の応接間で過ごすことにしていた。
常に忙しいマルグリットは、日中子どもたちと一緒に過ごすことはほとんどできない。だから子どもたちは、この時間にその日1日あったことを母に聞いてもらうのだ。
ただ子どもたちが年頃になってくると、学園の課題があったり1人になりたいと思う時もある。
そんな時は自室で過ごしても構わない。
限られた時間をどう使うのか、マルグリットは口出しすることなく子どもたちの自主性に任せていた。
国王は応接間にいることもあれば、いないこともある。
執務が終わらず執務室に籠っていることや、4人いる側妃のところへ行っていることがあるからだ。
「母上」
「あら、レイヴン。あなたがここへ来るのは久しぶりね」
結婚し、独立したといえるレイヴンが訪ねて来ても、マルグリットは笑顔で迎えてくれる。
だから結婚した後も、アリシアと共に過ごすようになるまではよくここを訪れていた。
その頃はアリシアと夕食も別々に摂っていたし、顔を合わせることも言葉を交わすこともほとんどなかった。
アリシアは寝室を挟んだ隣の部屋にいるのに、レイヴンはその扉の前をただ通り過ぎることしかできない。
それが辛くて寂しくて、レイヴンはよくここを訪れていたのだ。
「母上にお願いがあります。……アリシアをここへ連れて来たいのです」
「それはどういうことかしら?」
マルグリットの目が眇められた。
レイヴンは絆の強いアリシアたち4人の中に入りたいとずっと願っていた。
それと同時に、アリシアと家族になりたいとも願っている。
最近、レイヴンはアリシアたち4人の中に少し入ることが出来たと思う。だから今度はレイヴンの家族の中にアリシアを迎え入れて欲しいのだ。
マルグリットがそれを嫌がっているというわけではない。
むしろマルグリットは初めからアリシアを義娘として迎え入れるつもりでいた。
だけどアリシアの中で、レイヴンは夫ではなく王太子だった。
マルグリットは義母ではなく王妃だったのだ。
2人が結婚した当初、マルグリットはレイヴンとアリシアを家族の晩餐に何度か招いた。
晩餐の後は応接間で一緒に過ごし、マルグリットはアリシアへ「家族となったのだから、これからはいつでも自由にここへ来てちょうだい」と伝えていた。
アリシアはマルグリットへ感謝の言葉を述べていたけれど、アリシアが自らの意志でここへ来たことはこれまでに一度もない。
マルグリットもまた、数回招いた後はアリシアの意向に任せている。
これまでアリシアにはレイヴンと家族になるつもりがなかった。
アリシアがそうなったのはレイヴンのせいだ。
だけどアリシアは変わろうとしてくれている。
アリシアの事情を勝手に話すことはできないので、自分が犯した過ちを告白することにした。
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