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3章
35 母の愛情①
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突然呟かれた言葉に誰もがぎょっとした。
「お母様…なにを?」
カナリーが動揺した声で問い掛ける。
黙って兄姉のやり取りを聞いていた弟のジェイとアイビスも、不安げな顔でマルグリットを見ていた。
その中でマルグリットの言葉の真意を理解できたのはレイヴンだけだ。
「そんなことはありません。母上は何度も忠告してくださいました。それを聞かなかったのは僕です。母上は何も悪くありません」
「どういうこと…?」
先程までとは違い、カナリーも不安げな顔をしている。
「…皆知っているとは思うけど、少し前にキャンベル侯爵夫妻とエミリー嬢が処罰を受けた。その時にアリシアが言っていたんだ。デミオン殿はアンジェ殿とエミリー嬢が間違ったことをしていても、それを叱ったり正しいことを教えたりしなかった。それは2人を愛していないからだ、とね。デミオン殿が本当に2人を愛しているのなら、間違った方向に進もうとしている2人を止めないといけなかった。だけど母上は違います。母上は僕に教えてくれていました」
注意や忠告をしていても、された方がそれを聞かなかったのならどうしようもない。
妃教育を受けだしたばかりのアリシアを、レイヴンは出来が悪いと馬鹿にしていた。表情は取り繕っていたけれど、本心では見下していた。
それをマルグリットに咎められ、レイヴンはアリシアの努力に気づくことができたのだ。
交流しようとしないレイヴンとアリシアの為に、マルグリットはお茶会に呼んでくれていた。
謝るチャンスも、本心を告げるチャンスも何度もあったのに、眼を逸らし続けたのはレイヴンだ。
ドレスや贈り物のこともそうだ。
マルグリットは、レイヴンが舞踏会や夜会の度にアリシアのドレスを作っていることを知っていた。
だけどアリシアがそれを身につけたことはない。
贈られていないのだから当然である。
だけどマルグリットは作ったことを知っていても、贈っていないことは知らなかった。
婚約者から贈られたものを一度も身につけないのは非礼である。例え気に入らなかったとしても、何か1つくらいは身につけるべきなのだ。
何度目かの夜会を終えた後、マルグリットはアリシアへ直接話をしようとしていた。
だけどその前にレイヴンの気持ちを確認しようと、レイヴンの部屋を訪れた。
この時は既に2人の関係が表面上のものとなっているのを知っていたマルグリットは、レイヴンが望むのなら婚約を解消することも視野に入れるべきかと考えたのだ。
マルグリットの話を聞いたレイヴンは仰天した。
贈られていないドレスや装飾品を何故身につけないのかと言われても、アリシアには訳が分からないだろう。
それに婚約を解消するなんて考えたこともない。
レイヴンは必死に弁明し、アリシアにこれまで何も贈っていないことを話した。
今度はマルグリットが仰天する番だった。
半信半疑のまま、ドレッシングルームのクローゼットを開けると、その奥に贈られていないドレスの箱がラッピングされた状態で積んであったのだ。
眩暈を起こしたマルグリットは、早計にアリシアを呼び出さなくて良かったと心から安堵し、パーティーに出るのに婚約者からドレスを贈られない令嬢がどれ程惨めな思いをするのかと、滾々と諭した。
だけどその後もレイヴンは何も贈らなかったのだ。
「何故お義姉様はお兄様と結婚したのかしら…」
カナリーが呟いた言葉が心に刺さる。
アリシアにはアリシアの事情があった。
アリシアが貴族の結婚に悲観的でなければ、公爵家から婚約の解消を申し入れられていたかもしれない。
「お母様…なにを?」
カナリーが動揺した声で問い掛ける。
黙って兄姉のやり取りを聞いていた弟のジェイとアイビスも、不安げな顔でマルグリットを見ていた。
その中でマルグリットの言葉の真意を理解できたのはレイヴンだけだ。
「そんなことはありません。母上は何度も忠告してくださいました。それを聞かなかったのは僕です。母上は何も悪くありません」
「どういうこと…?」
先程までとは違い、カナリーも不安げな顔をしている。
「…皆知っているとは思うけど、少し前にキャンベル侯爵夫妻とエミリー嬢が処罰を受けた。その時にアリシアが言っていたんだ。デミオン殿はアンジェ殿とエミリー嬢が間違ったことをしていても、それを叱ったり正しいことを教えたりしなかった。それは2人を愛していないからだ、とね。デミオン殿が本当に2人を愛しているのなら、間違った方向に進もうとしている2人を止めないといけなかった。だけど母上は違います。母上は僕に教えてくれていました」
注意や忠告をしていても、された方がそれを聞かなかったのならどうしようもない。
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それをマルグリットに咎められ、レイヴンはアリシアの努力に気づくことができたのだ。
交流しようとしないレイヴンとアリシアの為に、マルグリットはお茶会に呼んでくれていた。
謝るチャンスも、本心を告げるチャンスも何度もあったのに、眼を逸らし続けたのはレイヴンだ。
ドレスや贈り物のこともそうだ。
マルグリットは、レイヴンが舞踏会や夜会の度にアリシアのドレスを作っていることを知っていた。
だけどアリシアがそれを身につけたことはない。
贈られていないのだから当然である。
だけどマルグリットは作ったことを知っていても、贈っていないことは知らなかった。
婚約者から贈られたものを一度も身につけないのは非礼である。例え気に入らなかったとしても、何か1つくらいは身につけるべきなのだ。
何度目かの夜会を終えた後、マルグリットはアリシアへ直接話をしようとしていた。
だけどその前にレイヴンの気持ちを確認しようと、レイヴンの部屋を訪れた。
この時は既に2人の関係が表面上のものとなっているのを知っていたマルグリットは、レイヴンが望むのなら婚約を解消することも視野に入れるべきかと考えたのだ。
マルグリットの話を聞いたレイヴンは仰天した。
贈られていないドレスや装飾品を何故身につけないのかと言われても、アリシアには訳が分からないだろう。
それに婚約を解消するなんて考えたこともない。
レイヴンは必死に弁明し、アリシアにこれまで何も贈っていないことを話した。
今度はマルグリットが仰天する番だった。
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だけどその後もレイヴンは何も贈らなかったのだ。
「何故お義姉様はお兄様と結婚したのかしら…」
カナリーが呟いた言葉が心に刺さる。
アリシアにはアリシアの事情があった。
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