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3章
43 キャロル・グーリッド伯爵令嬢①
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アリシアの部屋へノティスが訪れていた頃、レイヴンは執務室でレオナルドと向かい合っていた。
レイヴンはレオナルドに、マルグリットと話したことを全て伝えている。
そして新たに教えられた噂のことも。
それを聞いたレオナルドは、「お耳に入りましたか」と嘆息したのだった。
その反応にレイヴンは驚いたが、同時にこれまで噂を知らなかったのはレオナルドが噂を耳に入れない様に止めていたからなのだと悟った。
「なぜそんなことを?」
「噂を知っても殿下にとって良いことがないからですよ」
レイヴンの問い掛けに、レオナルドは事も無げに答える。
「王妃様が仰ったのでしょう。噂をどうにかすることはできない、アリシアと仲睦まじく過ごし、その姿を見せ続けるしかない、と。王妃様が仰る通り、殿下にはこれまで通りアリシアを寵愛しているところを周りに見せつけていて欲しいのですよ」
「それは勿論そのつもりだが」
「考えてみてください。この噂を言い立てているのはどんな者なのかを。女性の継承権を認めたくない者は確かに反発しています。ですが、その数がどれくらいだと思いますか?主に入り婿になっていて、まだ爵位を継承していない者です。貴族社会の全体で言えばほんの一握りですよ。娘しかいない家の者は賛成していますし、今は男子の跡継ぎがいる家も2代先、3代先となるとわかりませんからね。先のことを考えると揺れている者が大半です。継承の問題を抱えている家にしてみれば、これが王太子の私情によるものでも何でも構わないのですよ。あとは日和見を決めている者たちを取り込めば法を成立させることができます。では、この噂を立てている者の本当の目的は何でしょうね?」
「……僕とアリシアを仲違いさせること、か?」
「ええ、そうですよ。普通に考えるとこれらの噂を知ったアリシアが不快に思わないはずがない。これまで上手くいっていたとはいえない2人の仲がやっと上手くいきかけているのに、これでまたおかしくなる。奴らはそう思っているでしょう」
レイヴンはこの噂を知った日からの数日を思い出した。
残念なことにアリシアは少しも怒っていない。
だけどレイヴンはアリシアに対して負い目を感じていた。
以前の様に、「嫌われているかもしれない」とはもう思わないが、申し訳なさで態度がぎこちなくなってしまう。
アリシアに触れることにも躊躇ってしまっていたが、アリシアはそんなレイヴンのことがわかっていたようで、自分からさっとレイヴンの膝へ座ってしまう。
それが嬉しくて抱き寄せると、そのまま胸に体を預けてくれるのだ。
「…ニヤけないで下さい」
胡乱な目をしたレオナルドの冷たい声で我に返る。
「噂を言い立てている者の内、1/4は女性の継承権に不満を持っている者。1/4は2人の仲を壊したい者。残りの1/2は王家の醜聞をただ面白がっている者でしょうね。まあすべての者に関して当てはまるのは、本当のことなどどうでも良い、ということです。だから殿下にはこのままアリシアを寵愛している姿を見せ続けて欲しいのですよ」
レオナルドの顔は面白がっているようだ。
「1/4いる2人の仲を壊したい者は、レイヴン殿下がアリシアを寵愛しているとの話を信じている者でしょうからね」
レイヴンがアリシアへ向ける愛が本物だと言われるようになり、レイヴンの側妃の座を狙っていた者の半数は諦めたといって良い。
だけどまだ半数が残っている。
彼らはレイヴンの寵愛を信じていないのではなく、それならそれで2人の仲を壊せばいいと思っているのだ。
「殿下はこれまでと同じようにしていて下さい。それだけで十分です。…今日も客がきたようですね」
レオナルドが向けた視線の先には窓がある。
窓の向こうにキャロル・グーリッド伯爵令嬢の姿が見えた。
レイヴンはレオナルドに、マルグリットと話したことを全て伝えている。
そして新たに教えられた噂のことも。
それを聞いたレオナルドは、「お耳に入りましたか」と嘆息したのだった。
その反応にレイヴンは驚いたが、同時にこれまで噂を知らなかったのはレオナルドが噂を耳に入れない様に止めていたからなのだと悟った。
「なぜそんなことを?」
「噂を知っても殿下にとって良いことがないからですよ」
レイヴンの問い掛けに、レオナルドは事も無げに答える。
「王妃様が仰ったのでしょう。噂をどうにかすることはできない、アリシアと仲睦まじく過ごし、その姿を見せ続けるしかない、と。王妃様が仰る通り、殿下にはこれまで通りアリシアを寵愛しているところを周りに見せつけていて欲しいのですよ」
「それは勿論そのつもりだが」
「考えてみてください。この噂を言い立てているのはどんな者なのかを。女性の継承権を認めたくない者は確かに反発しています。ですが、その数がどれくらいだと思いますか?主に入り婿になっていて、まだ爵位を継承していない者です。貴族社会の全体で言えばほんの一握りですよ。娘しかいない家の者は賛成していますし、今は男子の跡継ぎがいる家も2代先、3代先となるとわかりませんからね。先のことを考えると揺れている者が大半です。継承の問題を抱えている家にしてみれば、これが王太子の私情によるものでも何でも構わないのですよ。あとは日和見を決めている者たちを取り込めば法を成立させることができます。では、この噂を立てている者の本当の目的は何でしょうね?」
「……僕とアリシアを仲違いさせること、か?」
「ええ、そうですよ。普通に考えるとこれらの噂を知ったアリシアが不快に思わないはずがない。これまで上手くいっていたとはいえない2人の仲がやっと上手くいきかけているのに、これでまたおかしくなる。奴らはそう思っているでしょう」
レイヴンはこの噂を知った日からの数日を思い出した。
残念なことにアリシアは少しも怒っていない。
だけどレイヴンはアリシアに対して負い目を感じていた。
以前の様に、「嫌われているかもしれない」とはもう思わないが、申し訳なさで態度がぎこちなくなってしまう。
アリシアに触れることにも躊躇ってしまっていたが、アリシアはそんなレイヴンのことがわかっていたようで、自分からさっとレイヴンの膝へ座ってしまう。
それが嬉しくて抱き寄せると、そのまま胸に体を預けてくれるのだ。
「…ニヤけないで下さい」
胡乱な目をしたレオナルドの冷たい声で我に返る。
「噂を言い立てている者の内、1/4は女性の継承権に不満を持っている者。1/4は2人の仲を壊したい者。残りの1/2は王家の醜聞をただ面白がっている者でしょうね。まあすべての者に関して当てはまるのは、本当のことなどどうでも良い、ということです。だから殿下にはこのままアリシアを寵愛している姿を見せ続けて欲しいのですよ」
レオナルドの顔は面白がっているようだ。
「1/4いる2人の仲を壊したい者は、レイヴン殿下がアリシアを寵愛しているとの話を信じている者でしょうからね」
レイヴンがアリシアへ向ける愛が本物だと言われるようになり、レイヴンの側妃の座を狙っていた者の半数は諦めたといって良い。
だけどまだ半数が残っている。
彼らはレイヴンの寵愛を信じていないのではなく、それならそれで2人の仲を壊せばいいと思っているのだ。
「殿下はこれまでと同じようにしていて下さい。それだけで十分です。…今日も客がきたようですね」
レオナルドが向けた視線の先には窓がある。
窓の向こうにキャロル・グーリッド伯爵令嬢の姿が見えた。
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