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3章
98 新たな道へ①
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レオナルドはアリシアが伯爵邸の広間へ入って来たその時から、アリシアを目で追っていた。
2人の間には大勢の人がいる為、アリシアはこちらに気がついていない。
レイヴンの傍らで挨拶に訪れる貴族たちと談笑するアリシアは、これまでレオナルドが見たことのない顔をしている。
2人が広間へ入ってくると、一瞬の静寂の後ざわめきが起きた。
広間に集まっていた貴族たちは、アリシアへ向けられるレイヴンの蕩けた笑顔に騒然としていたが、レオナルドが驚いたのは、アリシアがレイヴンへ向ける眼差しだ。
レイヴンへ向ける眼差しに熱が籠っているのをアリシアは気がついているのだろうか?
レイヴンへ優しい笑みを向けるアリシアは、レオナルドから見ても輝いている。
近くにいた夫人方が、「お2人は想い合ってらっしゃるのね」と囁き合っているけれど、今の2人を見れば誰でもそう思うだろう。
アリシアの気持ちは確実にレイヴンへと向かっている。
恋愛感情というものを拒否していたアリシアが、レイヴンを愛することができるのなら喜ばしいことだ。
本心からそう思っているはずなのに、何故か胸が痛む。押し寄せる淋しさにレオナルドは戸惑いを感じている。
レオナルドが婚約者を選ぶと言った時、アリシアは「お兄様が遠くへ行ってしまうみたい」と言って淋しがっていた。
あの時のアリシアはこんな気持ちだったのだろうか。
人は自分から距離を取るのは平気でも相手が離れていくのは辛く感じるものだというが、レオナルドは自分がそうなるとは思っていなかった。
女性の継承権を認める法の作成はもう最終段階まで来ていた。
クラーク伯爵が夜会を開くことが出来たのも、話し合うべきことがほとんど無くなり時間に余裕ができたからだ。
国王はこの問題を長引かせたくないと議会に立ったジェーンの為にも、ジェーンがアルスタへ旅立つ前に法を成立させようとしている。
ジェーンはアルスタから戻った後は領地の復興に全力を注ぎ、いずれは女侯爵となる。
その為にも全力で研修に取り組んでいるジェーンは既に自分の足で立ち、レオナルドが庇護するべき存在ではなくなっていた。
レオナルドは知らず苦笑を漏らした。
アリシアとジェーン、2人の妹は既に新しいところへ向かっている。
いつの間にかレオナルドだけが置いていかれていたようだ。
レオナルドが向き合うべき新しいことは、やはり婚約者のことだろう。
レオナルドはこの夜会にはパートナーを伴わず、1人で出席している。
今いる婚約者候補はすべてレイヴンの側妃になることを諦めた令嬢である。
キャロルのことがあってから、レイヴンに懸想をしていた者は婚約者候補から外すことにした。
一族のことを思えば、王太子の寵を得て権力を得ようとしていた野心家の方がまだマシである。
ルトビア公爵家の一族は厳しい。
レオナルドと結婚するのであれば、一族の厳しい教えに耐えてルトビア公爵夫人と呼ばれるのに相応しい教養を身につけなければならない。
幼い頃からアダムと婚約していたオレリアのように時間をかけて準備をすることもできない。
将来は公爵夫人として臣下の中では一番高い身分の夫人になれる。
強い野心家であれば、一族の厳しい教えにも耐えることが出来るだろう。
2人の間には大勢の人がいる為、アリシアはこちらに気がついていない。
レイヴンの傍らで挨拶に訪れる貴族たちと談笑するアリシアは、これまでレオナルドが見たことのない顔をしている。
2人が広間へ入ってくると、一瞬の静寂の後ざわめきが起きた。
広間に集まっていた貴族たちは、アリシアへ向けられるレイヴンの蕩けた笑顔に騒然としていたが、レオナルドが驚いたのは、アリシアがレイヴンへ向ける眼差しだ。
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恋愛感情というものを拒否していたアリシアが、レイヴンを愛することができるのなら喜ばしいことだ。
本心からそう思っているはずなのに、何故か胸が痛む。押し寄せる淋しさにレオナルドは戸惑いを感じている。
レオナルドが婚約者を選ぶと言った時、アリシアは「お兄様が遠くへ行ってしまうみたい」と言って淋しがっていた。
あの時のアリシアはこんな気持ちだったのだろうか。
人は自分から距離を取るのは平気でも相手が離れていくのは辛く感じるものだというが、レオナルドは自分がそうなるとは思っていなかった。
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クラーク伯爵が夜会を開くことが出来たのも、話し合うべきことがほとんど無くなり時間に余裕ができたからだ。
国王はこの問題を長引かせたくないと議会に立ったジェーンの為にも、ジェーンがアルスタへ旅立つ前に法を成立させようとしている。
ジェーンはアルスタから戻った後は領地の復興に全力を注ぎ、いずれは女侯爵となる。
その為にも全力で研修に取り組んでいるジェーンは既に自分の足で立ち、レオナルドが庇護するべき存在ではなくなっていた。
レオナルドは知らず苦笑を漏らした。
アリシアとジェーン、2人の妹は既に新しいところへ向かっている。
いつの間にかレオナルドだけが置いていかれていたようだ。
レオナルドが向き合うべき新しいことは、やはり婚約者のことだろう。
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今いる婚約者候補はすべてレイヴンの側妃になることを諦めた令嬢である。
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