【本編完結】幸福のかたち【R18】

朱里 麗華(reika2854)

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3章

118 お茶会③

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 お茶会は和やかな空気の中で進行していた。
 レイヴンとジェーンが居合わせたことに驚いていた夫人たちも、その後マルグリットが訪れたことですっかりそちらに意識を奪われている。

 このお茶会は人数が少ないので大きな丸テーブルを全員で囲んでいるのだが、同じテーブルに王太子夫妻とマルグリット、そしてカナリーがいる。小規模のお茶会で王族がこれほど揃うことは珍しく、その席に選ばれたのは人に自慢できることだ。
 夫人たちは思いがけず訪れた幸運に歓喜していた。
 
 
 そんな中でも噂好きな夫人たちは、レイヴンやジェーンの様子を良く見ていた。
 ここで仕入れた情報を明日から友人たちへ披露するのだ。

 だけど結局、夫人たちはレイヴンとジェーンの間に何の感情も読み取ることができなかった。
 マルグリットもアリシアへは身内としての情を見せるが、ジェーンのことは臣下として扱っている。
 レイヴンが時折ジェーンへ向ける視線に親しみは感じるけれど、それはあくまで友人に向けられる類のものだ。

 少なくとも今のレイヴンにジェーンへの気持ちは無い。
 レイヴンが熱の籠った目を向けているのは隣に座ったアリシアのみ。
 夫人たちはそう結論づけた。 

 それではジェーンはどうかというと、王太子夫妻の仲睦まじい様子に目を細めている。
 そこに嫉妬や悲しみといった感情を読み取ることはできない。
 今のジェーンは従妹夫妻が上手くいっているのを心から喜んでいるように見えた。 
 
 そんなジェーンは、夫人たちが知るこれまでのジェーンと別人のようだ。

 立ち居振る舞いが完璧になっているからではない。
 これまでのジェーンは、いつもアリシアの隣で自信なさげな顔をしていた。

 礼儀作法が拙く粗相が多いジェーンは、他の令嬢たちから馬鹿にされていた。
 ジェーンもそれが恥ずかしいことだとわかっているから自信を持つことが出来なかったのだ。
 ジェーンが仲間に入れるようにアリシアが上手く立ち回っていなければ、ジェーンはどこへ行っても孤立していただろう。

 だけど今日のジェーンにそんなところは少しもない。
 表情に不安げなところはなく、顔を上げて会話を楽しんでいる。座っている席もアリシアの隣ではなく、間に2人挟んだ席だ。
 アリシアの執り成しがなくてもマルグリットやカナリーとしっかりとした受け答えが出来ている。
 元々学園での成績が良いことは知っているので頭が良いことはわかっていた。作法を身につけたことで自信が持てるようになったのだろう。

 ジェーンにはレイヴンとの噂だけではなく、体にある傷痕や罪人となった両親など貴族としてマイナスな面が多くある。
 だけど今のジェーンからはそれをものともしない自信を感じることができた。
 きっと多くの困難を克服して立派な女侯爵となるだろう。

 夫人たちは心の中で頷いた。


 アリシアはそんな夫人たちをさり気なく観察していた。
 どうやらジェーンは好印象を与えることが出来たようだ。
 お茶会は成功だと思って良い。

 アリシアはレイヴンと目を合わせて微笑み合った。




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