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3章
125 動揺
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ジェーンがいなくなり1人になると、アリシアはレイヴンのことが気になりだした。
今日は紳士クラブへ出掛けているのでまだ部屋にはいないはずである。
だけどアリシアに会いたいレイヴンは、揶揄われながらいつも早い時間に帰ってくるのだ。
レイヴンと顔を合わせることを考えたアリシアは叫びそうになった。
これまで培ってきた鋼の精神力でその衝動をなんとか抑え込む。
それを何度も繰り返している内にぐったりしてソファへ座り込んでいた。
「妃殿下、湯浴みの準備が整いました」
「!!」
声を掛けられて顔を上げると、エレノアが傍に立っていた。
時間を見るとジェーンが帰ってから随分と経っている。
規則正しい生活を心がけるアリシアが、こんな時間まで湯浴みをせずにいるのは初めてだった。
エレノアに促されて、アリシアは浴室へ向かう。
浴室でアリシアはエレノアに磨かれていく。
体を洗われていたアリシアは、いつもより念入りに磨かれているような気がした。
体の隅々まで丁寧に洗われ、爪の先まで磨かれる。
香りの良いオイルを使い、時間をかけて梳かれた髪は艶めきを増している。
浴室から出た後は肌を柔らかくするクリームをじっくりと全身に塗り込まれた。
マッサージをうけながらアリシアは思い出す。
ジェーンと話をしている時、エレノアは部屋の隅で控えていた。
先ほどの話をエレノアは聞いていたのだ。
アリシアの全身がカッと熱くなった。
顔を赤くしたアリシアが着せられたのは、いつもと同じ夜着だった。
「妃殿下、とてもお綺麗ですわ」
エレノアがにっこりと笑って告げる。
寝る準備をしているだけならこんなことを言うはずがない。
いつもと変わらないようでいて特別な準備をされている。
その事実に、またアリシアの胸が騒いだ。
アリシアはいつものようにベッドで本を読むふりをしながら耳をそばだてていた。
胸の音が煩い。扉の向こうが気になってしまって本を読むことなどとてもできない。
アリシアはいつもこうしてレイヴンを待っていた。「レイヴンが喜ぶから」ではなく、アリシアがレイヴンに会いたくて待っていたのだ。
だけど今日はレイヴンと会った時にいつものように振舞える自信がなく、会いたくないと思ってしまう。
扉の向こうで物音がした時、アリシアは反射的にベッドへ横になって寝たふりをしていた。
「アリシア?」
レイヴンの声がする。
起きていることに気付かれませんように、とアリシアは祈った。
アリシアが眠ってしまうほど遅い時間ではない。
それに待ちきれずに寝てしまった時は、本を読んでいた体勢のまま眠っているのをレイヴンが横にして寝かせてくれているのだ。いつもと違っているのは一目瞭然である。
「アリシア、眠っているの?」
レイヴンが背を向けて寝たふりをするアリシアを窺っている。
アリシアは身を固くしてレイヴンの視線に耐えていた。
暫くするとレイヴンは諦めたようにアリシアの隣で横になった。
アリシアを背中から抱き締める。
「愛してる、アリシア」
アリシアはまた叫びそうになった。
胸の音が煩い。
これでは起きていることがバレてしまう。
だけどレイヴンは気がつかないままアリシアのうなじや首筋に何度も口づけた。
やがて満足したレイヴンは口づけるのを止め、足を絡ませてしっかりとアリシアを抱き締める。
ぴったりとくっついたままレイヴンは眠りについた。
レイヴンを意識するアリシアは、レイヴンの寝息や鼓動まで感じ取ってしまう。
起こすかもしれないと思うと身動きもできない。
アリシアは中々寝付くことができなかった。
今日は紳士クラブへ出掛けているのでまだ部屋にはいないはずである。
だけどアリシアに会いたいレイヴンは、揶揄われながらいつも早い時間に帰ってくるのだ。
レイヴンと顔を合わせることを考えたアリシアは叫びそうになった。
これまで培ってきた鋼の精神力でその衝動をなんとか抑え込む。
それを何度も繰り返している内にぐったりしてソファへ座り込んでいた。
「妃殿下、湯浴みの準備が整いました」
「!!」
声を掛けられて顔を上げると、エレノアが傍に立っていた。
時間を見るとジェーンが帰ってから随分と経っている。
規則正しい生活を心がけるアリシアが、こんな時間まで湯浴みをせずにいるのは初めてだった。
エレノアに促されて、アリシアは浴室へ向かう。
浴室でアリシアはエレノアに磨かれていく。
体を洗われていたアリシアは、いつもより念入りに磨かれているような気がした。
体の隅々まで丁寧に洗われ、爪の先まで磨かれる。
香りの良いオイルを使い、時間をかけて梳かれた髪は艶めきを増している。
浴室から出た後は肌を柔らかくするクリームをじっくりと全身に塗り込まれた。
マッサージをうけながらアリシアは思い出す。
ジェーンと話をしている時、エレノアは部屋の隅で控えていた。
先ほどの話をエレノアは聞いていたのだ。
アリシアの全身がカッと熱くなった。
顔を赤くしたアリシアが着せられたのは、いつもと同じ夜着だった。
「妃殿下、とてもお綺麗ですわ」
エレノアがにっこりと笑って告げる。
寝る準備をしているだけならこんなことを言うはずがない。
いつもと変わらないようでいて特別な準備をされている。
その事実に、またアリシアの胸が騒いだ。
アリシアはいつものようにベッドで本を読むふりをしながら耳をそばだてていた。
胸の音が煩い。扉の向こうが気になってしまって本を読むことなどとてもできない。
アリシアはいつもこうしてレイヴンを待っていた。「レイヴンが喜ぶから」ではなく、アリシアがレイヴンに会いたくて待っていたのだ。
だけど今日はレイヴンと会った時にいつものように振舞える自信がなく、会いたくないと思ってしまう。
扉の向こうで物音がした時、アリシアは反射的にベッドへ横になって寝たふりをしていた。
「アリシア?」
レイヴンの声がする。
起きていることに気付かれませんように、とアリシアは祈った。
アリシアが眠ってしまうほど遅い時間ではない。
それに待ちきれずに寝てしまった時は、本を読んでいた体勢のまま眠っているのをレイヴンが横にして寝かせてくれているのだ。いつもと違っているのは一目瞭然である。
「アリシア、眠っているの?」
レイヴンが背を向けて寝たふりをするアリシアを窺っている。
アリシアは身を固くしてレイヴンの視線に耐えていた。
暫くするとレイヴンは諦めたようにアリシアの隣で横になった。
アリシアを背中から抱き締める。
「愛してる、アリシア」
アリシアはまた叫びそうになった。
胸の音が煩い。
これでは起きていることがバレてしまう。
だけどレイヴンは気がつかないままアリシアのうなじや首筋に何度も口づけた。
やがて満足したレイヴンは口づけるのを止め、足を絡ませてしっかりとアリシアを抱き締める。
ぴったりとくっついたままレイヴンは眠りについた。
レイヴンを意識するアリシアは、レイヴンの寝息や鼓動まで感じ取ってしまう。
起こすかもしれないと思うと身動きもできない。
アリシアは中々寝付くことができなかった。
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