271 / 697
3章
125 動揺
しおりを挟む
ジェーンがいなくなり1人になると、アリシアはレイヴンのことが気になりだした。
今日は紳士クラブへ出掛けているのでまだ部屋にはいないはずである。
だけどアリシアに会いたいレイヴンは、揶揄われながらいつも早い時間に帰ってくるのだ。
レイヴンと顔を合わせることを考えたアリシアは叫びそうになった。
これまで培ってきた鋼の精神力でその衝動をなんとか抑え込む。
それを何度も繰り返している内にぐったりしてソファへ座り込んでいた。
「妃殿下、湯浴みの準備が整いました」
「!!」
声を掛けられて顔を上げると、エレノアが傍に立っていた。
時間を見るとジェーンが帰ってから随分と経っている。
規則正しい生活を心がけるアリシアが、こんな時間まで湯浴みをせずにいるのは初めてだった。
エレノアに促されて、アリシアは浴室へ向かう。
浴室でアリシアはエレノアに磨かれていく。
体を洗われていたアリシアは、いつもより念入りに磨かれているような気がした。
体の隅々まで丁寧に洗われ、爪の先まで磨かれる。
香りの良いオイルを使い、時間をかけて梳かれた髪は艶めきを増している。
浴室から出た後は肌を柔らかくするクリームをじっくりと全身に塗り込まれた。
マッサージをうけながらアリシアは思い出す。
ジェーンと話をしている時、エレノアは部屋の隅で控えていた。
先ほどの話をエレノアは聞いていたのだ。
アリシアの全身がカッと熱くなった。
顔を赤くしたアリシアが着せられたのは、いつもと同じ夜着だった。
「妃殿下、とてもお綺麗ですわ」
エレノアがにっこりと笑って告げる。
寝る準備をしているだけならこんなことを言うはずがない。
いつもと変わらないようでいて特別な準備をされている。
その事実に、またアリシアの胸が騒いだ。
アリシアはいつものようにベッドで本を読むふりをしながら耳をそばだてていた。
胸の音が煩い。扉の向こうが気になってしまって本を読むことなどとてもできない。
アリシアはいつもこうしてレイヴンを待っていた。「レイヴンが喜ぶから」ではなく、アリシアがレイヴンに会いたくて待っていたのだ。
だけど今日はレイヴンと会った時にいつものように振舞える自信がなく、会いたくないと思ってしまう。
扉の向こうで物音がした時、アリシアは反射的にベッドへ横になって寝たふりをしていた。
「アリシア?」
レイヴンの声がする。
起きていることに気付かれませんように、とアリシアは祈った。
アリシアが眠ってしまうほど遅い時間ではない。
それに待ちきれずに寝てしまった時は、本を読んでいた体勢のまま眠っているのをレイヴンが横にして寝かせてくれているのだ。いつもと違っているのは一目瞭然である。
「アリシア、眠っているの?」
レイヴンが背を向けて寝たふりをするアリシアを窺っている。
アリシアは身を固くしてレイヴンの視線に耐えていた。
暫くするとレイヴンは諦めたようにアリシアの隣で横になった。
アリシアを背中から抱き締める。
「愛してる、アリシア」
アリシアはまた叫びそうになった。
胸の音が煩い。
これでは起きていることがバレてしまう。
だけどレイヴンは気がつかないままアリシアのうなじや首筋に何度も口づけた。
やがて満足したレイヴンは口づけるのを止め、足を絡ませてしっかりとアリシアを抱き締める。
ぴったりとくっついたままレイヴンは眠りについた。
レイヴンを意識するアリシアは、レイヴンの寝息や鼓動まで感じ取ってしまう。
起こすかもしれないと思うと身動きもできない。
アリシアは中々寝付くことができなかった。
今日は紳士クラブへ出掛けているのでまだ部屋にはいないはずである。
だけどアリシアに会いたいレイヴンは、揶揄われながらいつも早い時間に帰ってくるのだ。
レイヴンと顔を合わせることを考えたアリシアは叫びそうになった。
これまで培ってきた鋼の精神力でその衝動をなんとか抑え込む。
それを何度も繰り返している内にぐったりしてソファへ座り込んでいた。
「妃殿下、湯浴みの準備が整いました」
「!!」
声を掛けられて顔を上げると、エレノアが傍に立っていた。
時間を見るとジェーンが帰ってから随分と経っている。
規則正しい生活を心がけるアリシアが、こんな時間まで湯浴みをせずにいるのは初めてだった。
エレノアに促されて、アリシアは浴室へ向かう。
浴室でアリシアはエレノアに磨かれていく。
体を洗われていたアリシアは、いつもより念入りに磨かれているような気がした。
体の隅々まで丁寧に洗われ、爪の先まで磨かれる。
香りの良いオイルを使い、時間をかけて梳かれた髪は艶めきを増している。
浴室から出た後は肌を柔らかくするクリームをじっくりと全身に塗り込まれた。
マッサージをうけながらアリシアは思い出す。
ジェーンと話をしている時、エレノアは部屋の隅で控えていた。
先ほどの話をエレノアは聞いていたのだ。
アリシアの全身がカッと熱くなった。
顔を赤くしたアリシアが着せられたのは、いつもと同じ夜着だった。
「妃殿下、とてもお綺麗ですわ」
エレノアがにっこりと笑って告げる。
寝る準備をしているだけならこんなことを言うはずがない。
いつもと変わらないようでいて特別な準備をされている。
その事実に、またアリシアの胸が騒いだ。
アリシアはいつものようにベッドで本を読むふりをしながら耳をそばだてていた。
胸の音が煩い。扉の向こうが気になってしまって本を読むことなどとてもできない。
アリシアはいつもこうしてレイヴンを待っていた。「レイヴンが喜ぶから」ではなく、アリシアがレイヴンに会いたくて待っていたのだ。
だけど今日はレイヴンと会った時にいつものように振舞える自信がなく、会いたくないと思ってしまう。
扉の向こうで物音がした時、アリシアは反射的にベッドへ横になって寝たふりをしていた。
「アリシア?」
レイヴンの声がする。
起きていることに気付かれませんように、とアリシアは祈った。
アリシアが眠ってしまうほど遅い時間ではない。
それに待ちきれずに寝てしまった時は、本を読んでいた体勢のまま眠っているのをレイヴンが横にして寝かせてくれているのだ。いつもと違っているのは一目瞭然である。
「アリシア、眠っているの?」
レイヴンが背を向けて寝たふりをするアリシアを窺っている。
アリシアは身を固くしてレイヴンの視線に耐えていた。
暫くするとレイヴンは諦めたようにアリシアの隣で横になった。
アリシアを背中から抱き締める。
「愛してる、アリシア」
アリシアはまた叫びそうになった。
胸の音が煩い。
これでは起きていることがバレてしまう。
だけどレイヴンは気がつかないままアリシアのうなじや首筋に何度も口づけた。
やがて満足したレイヴンは口づけるのを止め、足を絡ませてしっかりとアリシアを抱き締める。
ぴったりとくっついたままレイヴンは眠りについた。
レイヴンを意識するアリシアは、レイヴンの寝息や鼓動まで感じ取ってしまう。
起こすかもしれないと思うと身動きもできない。
アリシアは中々寝付くことができなかった。
18
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
すれ違いのその先に
ごろごろみかん。
恋愛
転がり込んできた政略結婚ではあるが初恋の人と結婚することができたリーフェリアはとても幸せだった。
彼の、血を吐くような本音を聞くまでは。
ほかの女を愛しているーーーそれを聞いたリーフェリアは、彼のために身を引く決意をする。
*愛が重すぎるためそれを隠そうとする王太子と愛されていないと勘違いしてしまった王太子妃のお話
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる