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3章
158 壮行会・昼の部①
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壮行会の日になった。
ジェーンは昨日離宮から退出し、ルトビア公爵邸へ移っている。公爵邸でマリアンに磨き上げられているはずだ。
昼の部の舞台が設けられている広場には、一部有料席が用意されている。
群衆に遮られることなく舞台を見ることができる席だが、平民で料金を払ってまで見ようという者はいない。貴族にしても平民向けの昼の部に興味を持つ者はほとんどおらず、いつも演説を行う者の家族席のようになっていた。
昼の部にレイヴンやアリシアの出番はない。
いつもなら夜の部に向けて準備を進める時間だが、今回は演説を行うジェーンの姿を見に行くことにしていた。
迎えに来たレイヴンと一緒に馬車へ乗り込む。
レイヴンもアリシアも目立ち過ぎないよう考えられたシンプルな装いをしているが、生地や仕立てはしっかりしていて、見る者が見れば良いものだとすぐにわかる。今回は身分を隠して行くわけではないのだ。
広場に着くと既に民衆で溢れていた。
広場に続く沿道にも複数の屋台が出ていて、屋台で買ってきたものを食べながら仲間たちと笑い合っている。
先日街へ出たばかりのアリシアは活気に溢れた人々の姿に自然と笑みが浮かんでいた。
馬車のまま広場の中へ入ることは出来ないので、入り口で馬車が止められた。王家の紋章はついていないが明らかに貴族とわかる馬車に民衆の視線が集まっている。
警備の騎士が周りを固めたところで扉が開かれ、レイヴンが姿を見せると民衆から歓声が起きた。王都の民は王太子の姿を良く知っているのだ。
レイヴンに手を取られたアリシアが馬車から降りると歓声は一際大きくなる。
警備の騎士には申し訳ないが、民衆には良いレクリエーションになったようだ。
有料席は既にほとんどが埋まっていた。
いつもは演説を行う者の家族席になっていた有料席だが、デミオンやアンジュが来ることはない。
空席が目立つ席にジェーンが寂しい思いをするのではないかと案じていたアリシアだったが、レイヴンからは例年より多くの問い合わせが来たのでいつもより席の数を増やしたと聞いている。
レイヴンとアリシアに気付いた者たちが立ち上がろうとするのをレイヴンが手で制す。
有料席に座っているのはほとんどが若い令嬢だった。
アリシアはこの令嬢たちを知っている。ジェーンに続いて爵位の継承を申し出た者たちだ。
ジェーンと直接親交がある者はいない。それでも法が変わる切っ掛けとなったジェーンが気になり、演説を聞きに来たのだ。
静かに目礼をする者たちの中にはオレリアの姿があった。オレリアの隣には、ライアンとアシュリーが座っている。その隣に座るのはルーファスだ。
ほとんど領地から出ることのないルーファスの姿にアリシアは驚いた。
従兄としてジェーンの勇姿を見る為に来たのだろうか。
オレリアたちから離れた端の方に顔を伏せて座る2人の令嬢がいた。
レイヴンが挨拶を止めたとはいえ、顔を伏せたままなのは不敬だと言える。
2人を気にするアリシアに、レイヴンが「どうしたの?」と囁いた。
アリシアがそっと答えると、レイヴンが2人の令嬢へ視線を向ける。
2人の令嬢を見たレイヴンはすぐに溜息を吐いた。
「カナリーだよ」
「え?」
レイヴンの言葉にもう一度令嬢たちへ視線を向ける。
アリシアの視線を避けるように俯いているが、確かに手前の令嬢はカナリーだった。
「あちらの方はお友達でしょうか…」
アリシアの言葉にレイヴンは困ったような顔をして、答えることなく席に着いた。
ジェーンは昨日離宮から退出し、ルトビア公爵邸へ移っている。公爵邸でマリアンに磨き上げられているはずだ。
昼の部の舞台が設けられている広場には、一部有料席が用意されている。
群衆に遮られることなく舞台を見ることができる席だが、平民で料金を払ってまで見ようという者はいない。貴族にしても平民向けの昼の部に興味を持つ者はほとんどおらず、いつも演説を行う者の家族席のようになっていた。
昼の部にレイヴンやアリシアの出番はない。
いつもなら夜の部に向けて準備を進める時間だが、今回は演説を行うジェーンの姿を見に行くことにしていた。
迎えに来たレイヴンと一緒に馬車へ乗り込む。
レイヴンもアリシアも目立ち過ぎないよう考えられたシンプルな装いをしているが、生地や仕立てはしっかりしていて、見る者が見れば良いものだとすぐにわかる。今回は身分を隠して行くわけではないのだ。
広場に着くと既に民衆で溢れていた。
広場に続く沿道にも複数の屋台が出ていて、屋台で買ってきたものを食べながら仲間たちと笑い合っている。
先日街へ出たばかりのアリシアは活気に溢れた人々の姿に自然と笑みが浮かんでいた。
馬車のまま広場の中へ入ることは出来ないので、入り口で馬車が止められた。王家の紋章はついていないが明らかに貴族とわかる馬車に民衆の視線が集まっている。
警備の騎士が周りを固めたところで扉が開かれ、レイヴンが姿を見せると民衆から歓声が起きた。王都の民は王太子の姿を良く知っているのだ。
レイヴンに手を取られたアリシアが馬車から降りると歓声は一際大きくなる。
警備の騎士には申し訳ないが、民衆には良いレクリエーションになったようだ。
有料席は既にほとんどが埋まっていた。
いつもは演説を行う者の家族席になっていた有料席だが、デミオンやアンジュが来ることはない。
空席が目立つ席にジェーンが寂しい思いをするのではないかと案じていたアリシアだったが、レイヴンからは例年より多くの問い合わせが来たのでいつもより席の数を増やしたと聞いている。
レイヴンとアリシアに気付いた者たちが立ち上がろうとするのをレイヴンが手で制す。
有料席に座っているのはほとんどが若い令嬢だった。
アリシアはこの令嬢たちを知っている。ジェーンに続いて爵位の継承を申し出た者たちだ。
ジェーンと直接親交がある者はいない。それでも法が変わる切っ掛けとなったジェーンが気になり、演説を聞きに来たのだ。
静かに目礼をする者たちの中にはオレリアの姿があった。オレリアの隣には、ライアンとアシュリーが座っている。その隣に座るのはルーファスだ。
ほとんど領地から出ることのないルーファスの姿にアリシアは驚いた。
従兄としてジェーンの勇姿を見る為に来たのだろうか。
オレリアたちから離れた端の方に顔を伏せて座る2人の令嬢がいた。
レイヴンが挨拶を止めたとはいえ、顔を伏せたままなのは不敬だと言える。
2人を気にするアリシアに、レイヴンが「どうしたの?」と囁いた。
アリシアがそっと答えると、レイヴンが2人の令嬢へ視線を向ける。
2人の令嬢を見たレイヴンはすぐに溜息を吐いた。
「カナリーだよ」
「え?」
レイヴンの言葉にもう一度令嬢たちへ視線を向ける。
アリシアの視線を避けるように俯いているが、確かに手前の令嬢はカナリーだった。
「あちらの方はお友達でしょうか…」
アリシアの言葉にレイヴンは困ったような顔をして、答えることなく席に着いた。
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