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3章
167 回想、そして出立①
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舞踏会も終盤になると頃合いを見て王族は退出していく。
アリシアとレイヴンは最後にもう一度ジェーンと言葉を交わして大広間を出た。
アリシアが次にジェーンと会うのは1年以上先である。
夜の準備を終えて寝室へ戻ったのはアリシアの方が早かった。
使節団の派遣に関しては王太子の管轄になっているので、アリシアが知らない事務作業が残っているのかもしれない。
レイヴンを待ちながらアリシアは窓の外へ視線を向ける。
窓から見えるのはレイヴンがアリシアの為に整えてくれた庭園だ。
陽が落ちたとはいえ警備の灯りがあるので真っ暗なわけではない。薄明りの中に色とりどりの花が見えている。
この庭園の花はアリシアの我儘を叶える為に入れ替えられた。
レイヴンはジェーンの庭園に比べて在り来たりな花しか集められなかったと落ち込んでいたけれど、アリシアにとってはレイヴンの気持ちが籠った大切な庭園である。
庭園を見ていると様々なことが思い出された。
レイヴンに側妃候補を選ぶように伝えたはずが、「愛している」と言われたこと。
突然態度を変えたレイヴンに戸惑うしかなかった日々。
孤児院への慰問を咎められて反発したこと。初めてレイヴンの前で泣いたのはあの時だった。
あの時、間違っていたのはアリシアだ。
だけど感情を露わにして八つ当たりをしても、レイヴンは怒らなかった。
それまでレイヴンの前で隙を見せるなんて考えられないことだったのに、あの時初めてワンピースを着て過ごしたのだ。
アリシアはくすりと笑う。
あの時は考えられないことだったのに、今では2人きりで過ごす時にワンピースを着ることも多くなった。
アリシアはショールを留めているピンに触れた。
少し前まで暑かったのに、最近は夜になると冷えるようになっている。
ピンについているのは小ぶりのサファイアだ。レイヴンに贈られたものには大抵サファイアがついている。
アリシアはまた思い出す。
レイヴンから贈られた、学園の卒業パーティーを再現した様なドレスと装飾品たち。
そのドレスを着て出席した舞踏会でエミリーと踊るジョッシュを見かけたこと。
思えばあの舞踏会から大きく事態が動いた。
レイヴンが使節団を利用しようと思いついたのは、エミリーとジョッシュを引き離す為だった。
だけどそれが上手くいかずにアリシアたちはキャンベル侯爵邸を訪れることになった。
そこで見た、考えられないような花嫁衣裳と婚礼調度品。
あの花嫁衣裳を思い出すと今でも怒りが込み上げてくる。
あの時サンドラに起きた過去のことを教えられた。
サンドラの元婚約者を密かに調べてみると、サンドラが結婚した後、同格の伯爵家へ婿入りしていた。
アリシアが伯爵を知らなかったのは、結婚と同時に夫婦揃って領地に籠っていたから。
子どもも数人いるけれど、家庭教師をつけて学園には通わせていない。徹底的に王都と王家を避けているようだ。
それでも夫婦仲は円満で、幸せそうだと報告を受けている。
アリシアは国王によって人生を変えられた彼が幸せで良かったと心から思った。
きっとサンドラも喜んでいるだろう。
アリシアとレイヴンは最後にもう一度ジェーンと言葉を交わして大広間を出た。
アリシアが次にジェーンと会うのは1年以上先である。
夜の準備を終えて寝室へ戻ったのはアリシアの方が早かった。
使節団の派遣に関しては王太子の管轄になっているので、アリシアが知らない事務作業が残っているのかもしれない。
レイヴンを待ちながらアリシアは窓の外へ視線を向ける。
窓から見えるのはレイヴンがアリシアの為に整えてくれた庭園だ。
陽が落ちたとはいえ警備の灯りがあるので真っ暗なわけではない。薄明りの中に色とりどりの花が見えている。
この庭園の花はアリシアの我儘を叶える為に入れ替えられた。
レイヴンはジェーンの庭園に比べて在り来たりな花しか集められなかったと落ち込んでいたけれど、アリシアにとってはレイヴンの気持ちが籠った大切な庭園である。
庭園を見ていると様々なことが思い出された。
レイヴンに側妃候補を選ぶように伝えたはずが、「愛している」と言われたこと。
突然態度を変えたレイヴンに戸惑うしかなかった日々。
孤児院への慰問を咎められて反発したこと。初めてレイヴンの前で泣いたのはあの時だった。
あの時、間違っていたのはアリシアだ。
だけど感情を露わにして八つ当たりをしても、レイヴンは怒らなかった。
それまでレイヴンの前で隙を見せるなんて考えられないことだったのに、あの時初めてワンピースを着て過ごしたのだ。
アリシアはくすりと笑う。
あの時は考えられないことだったのに、今では2人きりで過ごす時にワンピースを着ることも多くなった。
アリシアはショールを留めているピンに触れた。
少し前まで暑かったのに、最近は夜になると冷えるようになっている。
ピンについているのは小ぶりのサファイアだ。レイヴンに贈られたものには大抵サファイアがついている。
アリシアはまた思い出す。
レイヴンから贈られた、学園の卒業パーティーを再現した様なドレスと装飾品たち。
そのドレスを着て出席した舞踏会でエミリーと踊るジョッシュを見かけたこと。
思えばあの舞踏会から大きく事態が動いた。
レイヴンが使節団を利用しようと思いついたのは、エミリーとジョッシュを引き離す為だった。
だけどそれが上手くいかずにアリシアたちはキャンベル侯爵邸を訪れることになった。
そこで見た、考えられないような花嫁衣裳と婚礼調度品。
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あの時サンドラに起きた過去のことを教えられた。
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きっとサンドラも喜んでいるだろう。
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