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3章
168 回想、そして出立②
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カチャリと扉が開く音がする。
アリシアが視線を向けると、レイヴンが寝室へ入って来たところだった。
レイヴンは窓辺に立つアリシアを見て目を丸くすると慌てたように駆け寄ってくる。
そっと頬に触れるレイヴンの手は熱い。
「遅くなってごめんね、アリシア。先にベッドへ入ってても良かったのに…」
そう言ってレイヴンは表情を曇らせる。
どうやらレイヴンの手を熱く感じたのは、それだけアリシアが冷えていたからのようだ。
「庭園を見ていたのです。そうしたら、なんだか色んなことを思い出してしまって…」
アリシアが微かに笑みを見せた。
その顔を見たレイヴンの胸がきゅっとなる。
儚くて、切なくて、消えてしまいそうな気がして、恐ろしくなった。
レイヴンは咄嗟にアリシアを抱き締める。
「僕がいるよ」
「え?」
「ジェーン嬢と会えなくなって淋しいと思う。レオも婚約を結ぶことになるだろうし、しばらくは淋しく感じると思う。だけど僕がいる。カナリーもノティスもいるよ。アリシアの家族はここにもいるんだ」
「レイヴン様…」
レイヴンはどうやらアリシアが淋しくて昔を懐かしんでいたのだと思ったようだ。
だからアリシアが淋しくない様に言葉を尽くしてくれている。
それは勘違いだけれど、アリシアはレイヴンのその気持ちが何より嬉しい。
そう思えば、カナリーやノティスを弟妹のように感じる時が来るなんて思ってもいなかった。
カナリーは随分とアリシアを気遣ってくれるけれど、それもきっとレイヴンが何かを言ってくれたからだ。
「ありがとうございます。レイヴン様のおかげで私、大切な弟妹を得ることができました。レイヴン様が私と仲良くするよう言って下さったのでしょう?」
「…アリシアに僕が家族だと思って欲しかったんだ。僕の家族とも家族になって欲しかった」
あの日のことを思い出すと、レイヴンは苦い気持ちになる。
レイヴンはあの時ジェーンとの噂を知った。
学園を卒業してアリシアと結婚したことで、すっかり終わったことだと思っていた学生時代の噂が。未だに信じられていることをカナリーに教えられた。そしてあろうことかカナリーまでが、その噂を信じていたのだ。
そんな状態でアリシアを家族として馴染ませたいなんて、どだい無理な話である。
「レイヴン様のおかげでカナリー殿下やノティス殿下がお茶会に来てくれるようになりました。そのおかげで私だけではなく、ジェーンも大切な友人ができたのですわ」
そう言ったアリシアは、何かを思い出したようにふふっと笑う。
先程の消え入りそうな笑顔ではなく、とても楽しそうな笑顔だった。
「そういえば私、今度はお義姉様ができるのですね」
「…そうだね。少し先の話になるけどね」
レオナルドの婚約者がこのままディアナに決まったとしても、婚姻を結ぶまでに早くても3年は掛かる。
その間にディアナは学園を卒業して、公爵夫人としての教育を受けることになる。
「私の方が年上だけど、お義姉様と呼んで良いのかしら?」
未来を語るアリシアは、強がりではなく本当に楽しそうだ。
ホッとしたレイヴンは、ひょいとアリシアを抱き上げた。
急に横抱きにされたアリシアは悲鳴を上げてレイヴンにしがみつく。
レイヴンは声を立てて笑うとそのままベッドへと向かった。
アリシアは今でもレイヴンの求めを拒むことはない。
だけど義務として応じていた以前とは違うと、レイヴンは知っている。
舞踏会で疲れているから今日は一度だけで。
そんな気持ちは始めてしまうとすっかりどこかへ行ってしまっていた。
翌日、使節団は全員で国王に謁見した後、昼過ぎに王宮を出立した。
謁見に立ち会ったのは王太子のレイヴンと宰相のアダムだけである。
アリシアは自室でいつもの様に執務をしながらその時を過ごした。
アリシアが視線を向けると、レイヴンが寝室へ入って来たところだった。
レイヴンは窓辺に立つアリシアを見て目を丸くすると慌てたように駆け寄ってくる。
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そう言ってレイヴンは表情を曇らせる。
どうやらレイヴンの手を熱く感じたのは、それだけアリシアが冷えていたからのようだ。
「庭園を見ていたのです。そうしたら、なんだか色んなことを思い出してしまって…」
アリシアが微かに笑みを見せた。
その顔を見たレイヴンの胸がきゅっとなる。
儚くて、切なくて、消えてしまいそうな気がして、恐ろしくなった。
レイヴンは咄嗟にアリシアを抱き締める。
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「え?」
「ジェーン嬢と会えなくなって淋しいと思う。レオも婚約を結ぶことになるだろうし、しばらくは淋しく感じると思う。だけど僕がいる。カナリーもノティスもいるよ。アリシアの家族はここにもいるんだ」
「レイヴン様…」
レイヴンはどうやらアリシアが淋しくて昔を懐かしんでいたのだと思ったようだ。
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それは勘違いだけれど、アリシアはレイヴンのその気持ちが何より嬉しい。
そう思えば、カナリーやノティスを弟妹のように感じる時が来るなんて思ってもいなかった。
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「ありがとうございます。レイヴン様のおかげで私、大切な弟妹を得ることができました。レイヴン様が私と仲良くするよう言って下さったのでしょう?」
「…アリシアに僕が家族だと思って欲しかったんだ。僕の家族とも家族になって欲しかった」
あの日のことを思い出すと、レイヴンは苦い気持ちになる。
レイヴンはあの時ジェーンとの噂を知った。
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そう言ったアリシアは、何かを思い出したようにふふっと笑う。
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アリシアは自室でいつもの様に執務をしながらその時を過ごした。
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