【本編完結】幸福のかたち【R18】

朱里 麗華(reika2854)

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番外編・処罰の後

7 処罰の後(5-②)

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「君が欲しがらない様にと質素で粗末な服を着て、使用人に食事を運んでもらえず食事を摂れない時もある。婚約者は同じ邸の中で義妹と不貞を働き、義母の機嫌が悪いと殴られる。…どこが羨ましかったんだ?」

「それは…っ」

 気に入らないところは沢山あった。
 ルトビア公爵家の祖母や他の親戚たちは、ジェーンばかり可愛がってエミリーのことは少しも可愛がってくれない。
 アンジュは両親に「愛人になるなら」と縁を切られたと聞いている。お茶会で会った時もエミリーのことなんか見えない振りをして、話し掛けてもくれなかった。

 本当に愛し合っているのはお父様とお母様なのに、お義姉様の母親がいたからお母様は愛人になるしかなかった。
 それに…。

「愛人の娘だから…」

「何?」

「私はいつも皆に嫌われて…っ!友達ができないのは、愛人の娘だったからだって思って…!お義姉様やお義姉様の母親がいなければ、最初からお母様がお父様の正妻だったのに…」

 話している内に涙が出てきた。
 ずっとそう思っていたのに、それが間違いだったと知ってしまったから。

 全然優しくない、大嫌いな従姉のアリシア。
 アリシアが言っていた。

 お祖母様はお父様に、お義姉様の母親と結婚するかどうか選ばせた。
 結婚することを選んだのはお父様だった。
 お祖母様はお父様に、結婚するならお母様と別れるよう言っていた。その約束をお父様が破ったからお祖母様は怒っていたのだ。

 それに愛人になることを選んだのはお母様だった。
 お父様が別の人と結婚すると決めた時に別れることもできた。それなのに別れず、愛人になると決めたのはお母様なのだ。

 そしてエミリーが嫌われていたのは、愛人の娘だからじゃなかった。
 貴族であれは当然知っているはずの礼儀やマナーを知らずに失礼なことをしていたから嫌われたのだ。

 お義姉様やお義姉様の母親が悪いことなんて、何もなかった。

「…まあ、今更君とジェーンのことをどうこう言っても仕方がない。君たちが顔を合わせることは二度とないんだ。ただ君は自分の間違いを知った。ジェーンの気持ちを知ることもできた。それをどう考えるのかは君次第だ。…こんなことを言うのは僕の機嫌が良いからかな」

 ロバートがふっと笑った。

「今日は思いがけず良いことがあったから、僕は機嫌が良い」

 そう言ってロバートはクレールと目を見合わせる。
 ずっと硬い顔をしていたクレールも少し表情を和らげていた。

 だけどロバートはすぐに表情を引き締める。

「この家にあるものはすべて侯爵家の財産だ。故意に傷つけようなどと決して思わないでくれ」

「故意に傷つけるな」というのは、癇癪を起して物を投げたりするな、ということだろうか。
 ついさっき部屋で暴れたことを思い出す。
 マーサがロバートへ報告したのかもしれない。

 エミリーは恐る恐る頷いた。
 それを確認したロバートが口を開く。

「話を戻すが、侯爵家は財政難なんだ。調度品は売って金に換える。侯爵家には似つかわしくない品でも下級貴族には人気があるからそれなりの資金になる」

 サンドラがいた頃に使われていた侯爵家に代々伝わる由緒ある品や、侯爵家に合った洗練された上品な品は、派手で品のない悪趣味なものに変えられている。
 ジェーンはこれらの品に愛着がないし、置いていても侯爵家の評判を下げるだけのものだ。
 それでも生活の為に最低限のものは必要であり、侯爵家としての体面もある。
 新しいものを買うような余裕は無いのですべてを売り払うわけにはいかないが、幸いなことに暫く客人を招くこともないので可能な限り売って資金に変えることにしていた。

「侯爵家には似つかわしくない…?ハーヴィーは皆の憧れの品だってお母様が言っていたわ」

 エミリーが怪訝な顔をする。
 新しい調度品が届く度にハーヴィーは皆の憧れの品だと言ってアンジュは嬉しそうに笑っていた。
 ハーヴィーの品を買える家を、皆羨ましがっていると言っていたのだ。

「アンジュは男爵家の出身だからね。それ程裕福ではない男爵家にとっては憧れの品だろう」
 
 侯爵邸に今ある調度品の大半はハーヴィーの品だ。
 ハーヴィーはリトマインと並ぶ高級家具のメーカーだが、リトマインとは違ってデザインが派手で品がない。
 男爵や子爵の中でも成り上がり貴族が財力を示すアイテムとして好んで使っているが、周りに財力を誇示する必要のない高位貴族が選ぶことはない。高位貴族が使っていれば、むしろ成金趣味と嗤われて恥を掻くことになる。

 アンジュの実家である男爵家は新興貴族ではなく、それ程裕福な家でもない。
 邸に並ぶ調度品はそれ程高級なものではなかったのだろう。
 だから同じ男爵家でも裕福な家に並ぶハーヴィーの品に憧れていたのだ。
 パッとした華があって人目を引くものなので男爵家なら1つや2つあっても良い。

「ついでだから教えておくが、君やアンジュが好んで着ているドレスも高位貴族が着るようなものではない。いや、下位貴族であってもあんなに派手で露出の多いドレスは着ない。娼婦が着るようなドレスだ」



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