【本編完結】幸福のかたち【R18】

朱里 麗華(reika2854)

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番外編・処罰の後

9 処罰の後(5-④)

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「ああそうだ、丁度良いから伝えておこう。僕がこの邸にいるのは数日だけだ。ここでするべき始末を終えたらすぐに領地へ立つ。結婚式の準備に僕が関わることはないから好きにしてくれて構わない。ただこれは忠告だけど、招待客への詫び状と新たな招待状は急いで手配しないと間に合わないぞ」

「え…?」

 ロバートの言葉に2人は戸惑った顔をする。
 内心の苛立ちを押し隠したロバートは、呆れたような声を出した。

「このままジョッシュとジェーンとして式を挙げるつもりだったのか?」

「いえ!そんなつもりでは…」

 慌てて否定しようとしたジョッシュだが、最後まで言い切ることができずに俯いた。
 そんなジョッシュへロバートは冷たい目を向けている。

 結婚式の準備をジェーンが1人でしていることは聞いていた。
 ジェーンが準備に追われていた時、ジョッシュは少しも手伝わずにエミリーと戯れていた。
 だからジョッシュは式を挙げる為に何をすれば良いのかわからないのだ。

 招待客のこともそうだ。
 招待状を受け取った者たちは、侯爵家の惣領姫と次期当主の結婚式として出欠を決めている。
 それなのに花嫁が代わり、新郎も次期当主ではなくなった。
 当初予定していた縁組ではなくなったのだから詫び状を出し、改めて招待するのが当然である。
 だけどジョッシュはそんなことを考え付きもしないのだ。

 わかっているけれど、手助けするつもりはない。
 
「クレール、招待客のリストをジョッシュ殿へ渡しておいてくれ」

「すぐにご用意致します」

 クレールが綺麗な礼をする。
 俯いたままのジョッシュを一瞥すると、ロバートは2人に背中を向けた。



「あ…っ!」
 
 ジョッシュは立ち去ろうとするロバートを思わず呼び止めていた。
 だけどちらりと振り返ったロバートの視線は冷たい。
「何をすればいいのか教えてください」とは、とても言えなかった。

 ロバートは振り返った姿勢のまま暫くジョッシュを見ていた。
 鋭い視線を感じているが、ジョッシュは何も言うことができない。
 暫く待った後、肩をすくめたロバートは静かに立ち去っていった。
 

「………」

「………」

 ジョッシュはエミリーと顔を見合わせる。
 お互いに何も言うことができない。
 エミリーにそんな知識がないことは、ジョッシュにも良くわかっているのだ。


 結婚を間近に控えていても、ジョッシュとジェーンの間は冷え切っていた。
 子どもの頃からジョッシュはジェーンを無視してエミリーと遊んでいたのだ。
 初めは哀しそうにしていたジェーンも、いつの頃からか諦めたように近付いてこなくなっていた。
 そんなジェーンが結婚式の準備を始めてからまた話し掛けてくるようになった。
 何かと相談しようとするジェーンが煩わしくて、殊更邪険に振る舞ってはほとんど話を聞かずに追い払っていた。

 あの時ジェーンは何と言っていたのか。
 思い出そうとしても思い出せない。

 
 
「お2人共、邪魔になりますので道を空けていただけますか」

 黙り込んだままじっとしていた2人は、クレールの声にハッとして顔を上げた。
 調度品を抱えた男たちがこちらを窺っている。
 玄関扉の前を塞ぐように立つ2人が邪魔なのだ。

「…移動しようか」

 ジョッシュが言うと、エミリーは頷いた。
 男たちが調度品を持ち出すことにもう不満はないようだ。

「…私、お腹が空いて、食堂へ行くつもりだったの」

「お昼だもんね。それじゃあ食堂へ行こう」

 侯爵邸にはよく来ているので食堂の場所はわかっている。
 歩き出す前に半分開いたままの背中のファスナーを上げてあげると、エミリーが嬉しそうに笑った。
 今日エミリーの笑顔を見たのはこれが初めてかもしれない。



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