【本編完結】幸福のかたち【R18】

朱里 麗華(reika2854)

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番外編・処罰の後

17 処罰の後(10-②)

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 ただ、エミリーがどれだけ真剣に取り組んだとしても、報われることはない。
 招待客が出席を決めたのは、それが侯爵家の惣領姫と次期当主の結婚式だからである。

 ジェーンの評判がどれ程悪いといっても侯爵家の惣領姫だ。
 現当主であるデミオンの評価は最悪だが、キャンベル侯爵家は元々由緒ある名門の家である。
 次代の当主と誼を通じたいと願う家は少なくない。
 デミオンによって弱体化した侯爵家を助ける名目で懐に入り込もうと企む者もいるだろう。
 それに王太子妃となったアリシアがジェーンを大切にしていることは周知の事実だ。ジェーンと誼を通じることでアリシアに近づこうと目論む者もいる。

 また、祖母のルトビア前公爵夫人がジェーンを可愛がっていたこと、現当主のアダムが侯爵家へ支援していることも、他家の動きに目を向けている貴族であれば当然知っている。
 ジェーンと親しくしていればルトビア公爵家と繋がることができるかもしれない。少なくとも式やパーティーでルトビア公爵家の者と顔を合わせることができる。
 普段公爵家と顔を合わせる機会の少ない下位貴族にとってはこの上ないチャンスだった。
 
 貴族の結婚式というのは重要な社交場である。
 純粋に結婚を祝う者より、自家の利益を求めて出席する者の方が多い。
 そういった者にとってはアリシアやルトビア公爵家と繋がりを持つことができるジェーンの結婚式は何を置いても出席したいものだった。

 他にも次期当主を歓迎しようと領地から出てくる侯爵家の一族や、生前のサンドラと親しくしていた友人たちが、その娘の晴れ舞台を見守ろうとしていた。

 それが花嫁の入れ替えである。

 惣領姫と次期当主の結婚式は、姉の婚約者を寝取った義妹と不貞をした婚約者の結婚式となった。
 デミオンとアンジュが処罰を受けたことも、2人の醜聞も既に社交界で知れ渡っている。

 爵位の継承に絡まない2人の結婚式に出席しても利益はない。
 それどころか2人は国王夫妻や王太子夫妻、ルトビア公爵家を怒らせた。
 2人の結婚は明らかに国王からの罰である。その結婚式やパーティーに出席すれば、彼らの怒りを買うのは目に見えている。

 自家の利益の為に出席を決めていた貴族たちが、エミリーとジョッシュの結婚式に出席することはないだろう。
 惣領姫を裏切り、侯爵家に泥を塗った2人を一族が許すこともない。彼らは王都へ出てくる予定を早々に翻してしまった。
 サンドラの友人たちも、ジェーンを裏切った2人を祝福することはないだろう。



 詫び状を認め、招待状を送っても出席する者はほとんどいない。
 マーサにはそれがわかっていた。
 詫び状や招待状を送るのはあくまで侯爵家として体裁を整える為であり、エミリーやジョッシュの為ではない。
 それでもエミリーは頭を下げることができるだろうか。

 マーサは部屋の隅でしばらく考えた。
 部屋を出て行かないマーサにエミリーは不思議そうな顔をしている。


 エミリーに手を差し伸べるかどうか、判断を任された。
 それなら告げる内容も任されているはずだ。
 
「恐れ入りますが、少しお話をよろしいでしょうか」
 
 すべて伝えることを決め、マーサは2人へ声を掛けた。


 
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