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第2部 4章
5 過去の記録②
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アダムはロバートの報告に驚いていた。ただ、思い当ることが全くないわけではない。
アンジュが現れ、アダムたちとの仲が上手くいかなくなる以前にも、デミオンは真面目に課題に取り組んでいるのにわざと手を抜いている様に振舞うことがあったのだ。
それは自信がない時である。
良い評価を得られなくても「手を抜いていたからしょうがない」という逃げ道を作っていたのだ。
「結果はご存知の通り、上手くいきませんでした。デミオン殿が真面目に勉学に取り組んでいたのは精々学園に入学して半年程でしょう。その後は授業も真面に受けず家庭教師も無視して遊び歩いていたのですから、領地経営の勉強は全くしていませんよね。そんな状態で上手くいく程甘いものではありませんよ」
それはそうだろう。そんな簡単に領地の運営ができるものなら、ジェーンもレオナルドも、そしてルーファスも、あんなに必死になって勉強する必要がないのだ。
「デミオン殿は1人で領地の視察にも行っています。ですがそれが運の尽き始め…と言いますか、領民たちに全く歓迎されませんでした。それも当然ですよね、領民たちは伯母上が生まれた時から知っています。それまで伯母上が領民の為に心を砕いていても、デミオン殿は一度も領地へ来ていないのですから。領民たちはデミオン殿が伯母上を蔑ろにしていたことも、亡くなってすぐに愛人とその子どもを侯爵家に引き入れたことも知っていました。デミオン殿はどこへ行っても冷たい目で見られ、受け入れられることはありませんでした」
「全く当然のことだわ。領民との信頼関係はすぐに作れるものではないのよ。何度も足を運んで言葉を交わしていく内に少しずつ受け入れてもらえるの」
オレリアの言葉は静かなものだが、確かな怒りが込められていた。サラも頷いている。
他家から嫁入りしたオレリアたちは婚約者の時代から婚家の領地へ通って領民と信頼関係を築いていた。モルガン伯爵家へ婿入りしたライアンもそれは同じだ。デミオンも侯爵領の領民に受け入れられたいのなら、領地へ行くサンドラに同行していれば良かったのだ。
「伯母上の仰る通りです。マナーハウスの執事は当時のことをよく覚えていました。領民たちはデミオン殿を冷遇しながら、『サンドラ様がいらっしゃれば』『サンドラ様ならもっと』と嘆いてみせたそうです。デミオン殿はどこへ行っても聞こえるその声に、酷く思い詰めた顔をしていたとか。そして王都に戻ったデミオン殿は無謀と言える施策を次々に行いました」
デミオンはまず、最新の農機具を次々に買って農地へ配布した。
農民たちは喜んでいたそうだ。最新の器具を使うことで効率が格段に上がる。
実際にその年と翌年の収穫量はそれまでに比べて3割も多かった。この時農民の間ではデミオンの評価も一時的に上がっていた。
だけど最新の農機具は高い。
初期費用を回収する為には3年、5年と安定した収穫量を得る必要がある。
豊作の年も不作の年もあるので、資金を回収できる年数を慎重に計算して少しずつ入れ替えていく。決してまとめ買いするようなものではないのだ。
だけどデミオンはそんな農機具を買い漁り、領地中にばらまいていた。
そしてこれは不運でもあるのだが、3年目の収穫前に侯爵領で最初の災害が起こる。
長雨による田畑の水没、またある所では川が決壊し、田畑だけではなく多くの農民が家ごと流された。勿論最新の農機具も、あるものは全壊し、あるものは所在不明になってしまった。
報告を聞いたデミオンは呆然となった。
サンドラは亡くなる前にその川の堤防工事を進めていたのだ。だがデミオンは農機具を買う資金にまわす為、着工したばかりのその工事を止めてそのまま放置していた。
結局利益を得るどころか資金も農民も失い、領民の恨みを買う結果になった。
それからもデミオンは失敗を重ねていく。
そうする内にすっかり嫌になったデミオンは、領地運営を投げ出し、本当に遊んで暮らすようになったのだ。
アンジュが現れ、アダムたちとの仲が上手くいかなくなる以前にも、デミオンは真面目に課題に取り組んでいるのにわざと手を抜いている様に振舞うことがあったのだ。
それは自信がない時である。
良い評価を得られなくても「手を抜いていたからしょうがない」という逃げ道を作っていたのだ。
「結果はご存知の通り、上手くいきませんでした。デミオン殿が真面目に勉学に取り組んでいたのは精々学園に入学して半年程でしょう。その後は授業も真面に受けず家庭教師も無視して遊び歩いていたのですから、領地経営の勉強は全くしていませんよね。そんな状態で上手くいく程甘いものではありませんよ」
それはそうだろう。そんな簡単に領地の運営ができるものなら、ジェーンもレオナルドも、そしてルーファスも、あんなに必死になって勉強する必要がないのだ。
「デミオン殿は1人で領地の視察にも行っています。ですがそれが運の尽き始め…と言いますか、領民たちに全く歓迎されませんでした。それも当然ですよね、領民たちは伯母上が生まれた時から知っています。それまで伯母上が領民の為に心を砕いていても、デミオン殿は一度も領地へ来ていないのですから。領民たちはデミオン殿が伯母上を蔑ろにしていたことも、亡くなってすぐに愛人とその子どもを侯爵家に引き入れたことも知っていました。デミオン殿はどこへ行っても冷たい目で見られ、受け入れられることはありませんでした」
「全く当然のことだわ。領民との信頼関係はすぐに作れるものではないのよ。何度も足を運んで言葉を交わしていく内に少しずつ受け入れてもらえるの」
オレリアの言葉は静かなものだが、確かな怒りが込められていた。サラも頷いている。
他家から嫁入りしたオレリアたちは婚約者の時代から婚家の領地へ通って領民と信頼関係を築いていた。モルガン伯爵家へ婿入りしたライアンもそれは同じだ。デミオンも侯爵領の領民に受け入れられたいのなら、領地へ行くサンドラに同行していれば良かったのだ。
「伯母上の仰る通りです。マナーハウスの執事は当時のことをよく覚えていました。領民たちはデミオン殿を冷遇しながら、『サンドラ様がいらっしゃれば』『サンドラ様ならもっと』と嘆いてみせたそうです。デミオン殿はどこへ行っても聞こえるその声に、酷く思い詰めた顔をしていたとか。そして王都に戻ったデミオン殿は無謀と言える施策を次々に行いました」
デミオンはまず、最新の農機具を次々に買って農地へ配布した。
農民たちは喜んでいたそうだ。最新の器具を使うことで効率が格段に上がる。
実際にその年と翌年の収穫量はそれまでに比べて3割も多かった。この時農民の間ではデミオンの評価も一時的に上がっていた。
だけど最新の農機具は高い。
初期費用を回収する為には3年、5年と安定した収穫量を得る必要がある。
豊作の年も不作の年もあるので、資金を回収できる年数を慎重に計算して少しずつ入れ替えていく。決してまとめ買いするようなものではないのだ。
だけどデミオンはそんな農機具を買い漁り、領地中にばらまいていた。
そしてこれは不運でもあるのだが、3年目の収穫前に侯爵領で最初の災害が起こる。
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サンドラは亡くなる前にその川の堤防工事を進めていたのだ。だがデミオンは農機具を買う資金にまわす為、着工したばかりのその工事を止めてそのまま放置していた。
結局利益を得るどころか資金も農民も失い、領民の恨みを買う結果になった。
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