【本編完結】幸福のかたち【R18】

朱里 麗華(reika2854)

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第2部 4章

6 過去の記録③

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 アダムはデミオンが一時いっとき領地経営に手を出していたことは知っていた。
 だけどデミオンがしたことは、サンドラが進めていた領地改革を引っ掻き回して駄目にして、その損失を補おうと常識外に税を上げて領民を疲弊させ、恨みを買うことばかりだった。
 とても真面目にやっているとは思えず、面白半分で手を出して破綻したので投げ出したのだと思っていた。

「本当に困っていたのなら言ってこれば良かったんだ。真面目にやるつもりがあるのなら、こちらだって無下にはしない」

 母である前公爵夫人も、アンジュのことがあるので簡単に許すことはないが、領地を治めるのに必要な知識を得る為の手助けくらいはしただろう。今のロバートと同じ様に公爵家の代官から学べるように補佐として送ったかもしれない。
 領民の生活は領主の行う施策で良くも悪くも変わる。やる気だけあってもこんな風に引っ掻き回されたのでは堪らない。
 だけどロバートは苦笑した。

「デミオン殿が伯父上やお祖母様を頼ることはまずないでしょうね。デミオン殿は伯父上や父に強い劣等感を抱えています。伯母上にも、かな。あんな無茶な施策を繰り返したのは、短期間で領地を大きく発展させて自分の方が優れているとお祖母様に認めさせたかったからでしょう」

「愚かなことを」

 アダムが顔を顰める。ルーファスは居心地が悪そうに目を伏せていた。

 優秀だと言われる兄弟より自分の方が優秀だと認められたい。ルーファスにもそんな気持ちがあった。
 だけどデミオンとルーファスは違う。

「デミオン殿とルーファス兄様は違いますわ。デミオン殿は現実から目を背けて逃げたのです。学びもせず努力もしない者が、日々学んで努力を続けている者より優秀なはずがありません。それにルーファス兄様は自身の実力が足りないと思えばそれを認めて、人に助けを求めることができる方です。それもまた能力の1つだと思いますわ」

「僕もそう思いますよ。もし不測の事態が起きてルーファス殿の手に負えないような状況になったとしても、ルーファス殿なら誰かに助けを求めるでしょう。決して思い付きで打開策を練ることはないと思います」

 アリシアとレオナルドの言葉にルーファスは目を瞬かせた。
 少し考える素振りをする。伏せていた視線を上げた時にはしっかりと頷いていた。

「そうだね、少なくとも父上や母上には相談するだろう」

 その言葉にレオナルドは笑顔で頷いた。
 
「相談する相手の中に、是非我が父上と母上、そして僕を入れておいて下さい。ルトビア公爵家は有事の際、必ずモルガン伯爵家の力になります」

 ルーファスの目が見開かれる。
 レオナルドは決してロバートとだけ誼を通じているわけではないのだ。



「しかしデミオンはどこへ行くにもあの女を連れていただろう。よく領地へ1人で行ったな。あの女もよく1人で残ったものだ」

 アダムがそう言った。
 アンジュの名前は呼ぶのも嫌なようだ。

「そこはまあ…。デミオン殿も伯母上が領民に慕われていることは知っていたでしょうから、流石に引き入れたばかりの愛人が領民に受け入れられるはずがないとわかっていたのではないでしょうか」

「それなのに自分は受け入れられると思っていたのか?」

「実際のところは本人に訊いてみないとわかりませんが、デミオン殿はあれでも領主ですからね。頼りにしていた女主人が亡くなったばかりで領民も不安になっているでしょうから、歓迎されると思っていたのかもしれません」

 ロバートが苦笑する。
 アダムは息を吐くと、大きく首を振った。
 
「大丈夫、ジェーンの代で立て直しますよ」

 ロバートがそう言うと、アダムは疲れたように頷いた。



「しかしこうして話を聞いていると、殿下のご希望は通した方が良さそうですね」

 レオナルドがそう言った。
 諦めたような表情が浮かんでいる。
 これから訪れる激務を思い浮かべてしまったようだ。

「殿下の希望とは、何のことだ?」

 何も知らないアダムがレオナルドに訊く。
 レオナルドは肩をすくめて答えた。

「殿下は今度の王領への視察に妃殿下を同行したいそうです」

「何?!」

 アダムは驚いた声を上げ、レイヴンを見据えた。



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