384 / 697
第2部 4章
11 協力要請②
しおりを挟む
「殿下に表に出ぬよう言ったのはわたしだ。表向きの理由を授けたのもな。側妃を娶りたくないから、そんな理由でこんな重大な改革ができるわけがないだろう」
アダムがそう言うと、レイヴンは気まずそうに目を伏せた。
レイヴンにとっては切実な問題でも、端から見れば馬鹿らしい理由なのはわかっている。
アダムがレイヴンに授けた表向きの理由というのは、必要な教育を受けたなら女性にも国を治めることができる、というものだ。
建国以来、能力的に男性に劣る女性には領地を治めることはできない、とされてきた。
だけど実際には領主になる為の教育を受けていないからできないだけで、必要な教育を受ければ領主として領地を治めることができる。
国王がそれを認めて女性の継承権が認められた。
それならば王女でも同じことが言えるはずだ。
女性の爵位継承権は認められたのに、王女の王位継承権が認められないのはおかしい。
以前ライアンのところを訪れたレオナルドが言っていたのもこれである。
「理由はどうあれ、『王女に王位継承権を』という殿下の希望にはわたしも賛成している。他国では女王や女帝が認められているし、女性であっても早くから帝王学を学んでいれば国を治めることはできるはずだ。この点で我が国は他国より遅れている」
「孫が王位につくのを望んでいるだけでは?」
「それもある。おまえはわたしに権力欲がないとでも思っていたのか?」
責めるようなライアンの言葉を、アダムは誤魔化すことなく認めた。
公爵家の当主として、これまで以上に公爵家を盛り立てたいと思うのは当然のことだ。
「但し、この話をわたしたちが直接持ち掛けるのは極少数の信頼できる者たちだけだ。そして王女に継承権がないのはおかしいと、実際に声を上げるのはわたしたちではない」
レイヴンやレオナルドはどれだけ忙しいさなかでも紳士クラブや夜会に出掛けていた。
そこでレイヴンがアリシアを置いてまで会っているのは、クラーク伯爵などの女性の継承権を認める法の改定に尽力した者たちである。
そこでこちらの手の者が、「女性の継承権が認められたが、本当に女が領地を治めることなどできるのだろうか」などと、そんなことをさり気なく話題にする。
今が旬の話題である。
居合わせた者たちは口々に自分の意見を述べる。実際に法は改定されたけれど、男性社会においてはまだ否定派の方が多い。
法の改定に尽力する内に、能力を持ちながら女性というだけで当主になれなかった者たちの実例を見てきたクラーク伯爵たちは義憤に駆られてそれを否定する。
ここで、「女性も必要な教育を受ければ領主の務めを果たすことができる」と主張しているのは、レオナルドの一派ではなく、クラーク伯爵たちだ。
それを何度も、色々な場所で繰り返す内に、クラーク伯爵の考えに賛同する者が増えてきている。中には法が変わったことで跡継ぎを娘に変更した貴族もいた。
「これを今しばらくは続ける。この考えに賛同する者が一定数を超えたところで次の議題を投入する。『それでは王女に統治能力はないのだろうか?』とな」
ここでハッとする貴族は多いはずだ。
領主にはなれるのに女王になれないのはおかしいのではないか。
クラーク伯爵たちがそう声を上げてくれる日を、レオナルドたちは待っているのだ。
アダムがそう言うと、レイヴンは気まずそうに目を伏せた。
レイヴンにとっては切実な問題でも、端から見れば馬鹿らしい理由なのはわかっている。
アダムがレイヴンに授けた表向きの理由というのは、必要な教育を受けたなら女性にも国を治めることができる、というものだ。
建国以来、能力的に男性に劣る女性には領地を治めることはできない、とされてきた。
だけど実際には領主になる為の教育を受けていないからできないだけで、必要な教育を受ければ領主として領地を治めることができる。
国王がそれを認めて女性の継承権が認められた。
それならば王女でも同じことが言えるはずだ。
女性の爵位継承権は認められたのに、王女の王位継承権が認められないのはおかしい。
以前ライアンのところを訪れたレオナルドが言っていたのもこれである。
「理由はどうあれ、『王女に王位継承権を』という殿下の希望にはわたしも賛成している。他国では女王や女帝が認められているし、女性であっても早くから帝王学を学んでいれば国を治めることはできるはずだ。この点で我が国は他国より遅れている」
「孫が王位につくのを望んでいるだけでは?」
「それもある。おまえはわたしに権力欲がないとでも思っていたのか?」
責めるようなライアンの言葉を、アダムは誤魔化すことなく認めた。
公爵家の当主として、これまで以上に公爵家を盛り立てたいと思うのは当然のことだ。
「但し、この話をわたしたちが直接持ち掛けるのは極少数の信頼できる者たちだけだ。そして王女に継承権がないのはおかしいと、実際に声を上げるのはわたしたちではない」
レイヴンやレオナルドはどれだけ忙しいさなかでも紳士クラブや夜会に出掛けていた。
そこでレイヴンがアリシアを置いてまで会っているのは、クラーク伯爵などの女性の継承権を認める法の改定に尽力した者たちである。
そこでこちらの手の者が、「女性の継承権が認められたが、本当に女が領地を治めることなどできるのだろうか」などと、そんなことをさり気なく話題にする。
今が旬の話題である。
居合わせた者たちは口々に自分の意見を述べる。実際に法は改定されたけれど、男性社会においてはまだ否定派の方が多い。
法の改定に尽力する内に、能力を持ちながら女性というだけで当主になれなかった者たちの実例を見てきたクラーク伯爵たちは義憤に駆られてそれを否定する。
ここで、「女性も必要な教育を受ければ領主の務めを果たすことができる」と主張しているのは、レオナルドの一派ではなく、クラーク伯爵たちだ。
それを何度も、色々な場所で繰り返す内に、クラーク伯爵の考えに賛同する者が増えてきている。中には法が変わったことで跡継ぎを娘に変更した貴族もいた。
「これを今しばらくは続ける。この考えに賛同する者が一定数を超えたところで次の議題を投入する。『それでは王女に統治能力はないのだろうか?』とな」
ここでハッとする貴族は多いはずだ。
領主にはなれるのに女王になれないのはおかしいのではないか。
クラーク伯爵たちがそう声を上げてくれる日を、レオナルドたちは待っているのだ。
0
あなたにおすすめの小説
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です!
https://estar.jp/novels/26513389
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる