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第2部 4章
12 協力要請③
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「随分とまわりくどいことをなさるのですね」
ルーファスは知らず知らずのうちに詰めていた息を吐いた。こうした、己が表に立たずに周りを固めていくような政略とは無縁に生きてきたのだ。
「先程ライアンが言っていた通りだ。わたしたちが表に立てば、ルトビア公爵家が権力を握る為の謀略だと言われることになる。ある程度は仕方がないが、むやみやたらと敵を作るつもりはない。そしてだからこそ今、ことを進める必要がある」
アダムの言葉にレイヴンは唇を噛みしめた。
アリシアにはまだ子どもがいない。
それは王女も含めていない、ということである。
今、王女の王位継承権が認められても、その王女を生むのがアリシアとは限らない。
だから今なら周りの非難を逸らすことができる、とアダムは言っているのだ。
「わかっている。僕は側妃を娶りたくない。だけど結局のところアリシアが懐妊しなければ、何をしても意味がない。それでもできるだけのことはしておきたい」
「子作りはまあ…、わたしたちが口出しできることでもありませんし、殿下にお任せするしかないでしょうね」
茶化すようなロバートの言葉にレオナルドはふっと笑った。
反対にライアンは鋭い目で睨んでいるが、ロバートは意に介していない。
「話をまとめましょう。殿下は側妃を娶りたくない。伯父上は国王の外戚になりたい。また、他国より遅れている我が国の制度を改革したいとも考えている。レオナルドは…アリシア様の憂いを取り除きたい、といったところかな。それぞれがそれぞれの理由で王女の王位継承権を認めさせたいということはわかりました。それで、わたしたちに何をさせたいのです?」
「今はまだ何もしなくて構いません。先程も話した通り、改革を求めて声を上げるのはクラーク伯爵たちです。わたしたちは次の段階へ進むタイミングを待っているところですが、しばらくはこのままだと思います。ですが、いずれその声は上がります。その時に賛成の意を表していただきたい」
かつてのジェーンのように議会で宣言をする必要はない。
どこかの夜会やサロンでその話題が出た時に「賛成だ」と言ってくれればいい。
モルガン伯爵家の当主と次期当主、そして子爵となったロバートが賛成だというだけで、そちらに靡く貴族は大勢いる。モルガン伯爵家とは、それだけの力を持った家なのだ。
国王は続けて改革を行うことに消極的だが、王女の王位継承権を求める声が大きくなれば国王も議会も無視できなくなる。
「…簡単に答えが出せる問題ではありません。ですが、しばらく考える時間はありそうですね。わたしの商会が支店を出しているアルスタもシェルツも、ここ数代は国王が続いていますが、女性の王位継承権を認めていますし、女王が立ったこともあります。そちらの歴史も調べてみましょう」
レイヴンが頷いた。
すぐに返答が欲しいところだが、こちらの準備もまだ整っていない。
「わたしたちも考えてみることは約束しましょう。ですがこれは数年で決着がつくような問題だとはとても思えませんぞ」
レイヴンはまた頷いた。
王女の王位継承権を認める為には、爵位継承を認めた時より多くのことを想定し、決まりを作らなければならない。
例えば今王女の王位継承権が認められれば、レイヴンの次の継承順位を持つのはカナリーとなる。
だけどカナリーは学園を卒業後、リベラ侯爵家へ降嫁することが決まっている。
サディアスもカナリーも帝王学を学んでいないし、王位継承権など望んでいないだろう。
降嫁した王女は王籍を離れる。その場合、継承権はどうなるのか。
王籍を離れると同時に継承権も消滅するのか、しないのか。
もし消滅しないのであれば、サディアスとカナリーの間に生まれた子どもたちにも継承権が与えられることになる。女系の王統を認めてしまえば、その先は広がっていくばかりだ。
本当はジェーンが帰国をして爵位を継いだ後に、何か1つでも成功事例を作ってから話を進めた方が良い。
だけどアリシアと結婚してから3年までにあと半年しかない。
それに―これは本来嬉しいことだが―アリシアがいつ懐妊するかわからない。
何にしろ、時間がないのだ。
ルーファスは知らず知らずのうちに詰めていた息を吐いた。こうした、己が表に立たずに周りを固めていくような政略とは無縁に生きてきたのだ。
「先程ライアンが言っていた通りだ。わたしたちが表に立てば、ルトビア公爵家が権力を握る為の謀略だと言われることになる。ある程度は仕方がないが、むやみやたらと敵を作るつもりはない。そしてだからこそ今、ことを進める必要がある」
アダムの言葉にレイヴンは唇を噛みしめた。
アリシアにはまだ子どもがいない。
それは王女も含めていない、ということである。
今、王女の王位継承権が認められても、その王女を生むのがアリシアとは限らない。
だから今なら周りの非難を逸らすことができる、とアダムは言っているのだ。
「わかっている。僕は側妃を娶りたくない。だけど結局のところアリシアが懐妊しなければ、何をしても意味がない。それでもできるだけのことはしておきたい」
「子作りはまあ…、わたしたちが口出しできることでもありませんし、殿下にお任せするしかないでしょうね」
茶化すようなロバートの言葉にレオナルドはふっと笑った。
反対にライアンは鋭い目で睨んでいるが、ロバートは意に介していない。
「話をまとめましょう。殿下は側妃を娶りたくない。伯父上は国王の外戚になりたい。また、他国より遅れている我が国の制度を改革したいとも考えている。レオナルドは…アリシア様の憂いを取り除きたい、といったところかな。それぞれがそれぞれの理由で王女の王位継承権を認めさせたいということはわかりました。それで、わたしたちに何をさせたいのです?」
「今はまだ何もしなくて構いません。先程も話した通り、改革を求めて声を上げるのはクラーク伯爵たちです。わたしたちは次の段階へ進むタイミングを待っているところですが、しばらくはこのままだと思います。ですが、いずれその声は上がります。その時に賛成の意を表していただきたい」
かつてのジェーンのように議会で宣言をする必要はない。
どこかの夜会やサロンでその話題が出た時に「賛成だ」と言ってくれればいい。
モルガン伯爵家の当主と次期当主、そして子爵となったロバートが賛成だというだけで、そちらに靡く貴族は大勢いる。モルガン伯爵家とは、それだけの力を持った家なのだ。
国王は続けて改革を行うことに消極的だが、王女の王位継承権を求める声が大きくなれば国王も議会も無視できなくなる。
「…簡単に答えが出せる問題ではありません。ですが、しばらく考える時間はありそうですね。わたしの商会が支店を出しているアルスタもシェルツも、ここ数代は国王が続いていますが、女性の王位継承権を認めていますし、女王が立ったこともあります。そちらの歴史も調べてみましょう」
レイヴンが頷いた。
すぐに返答が欲しいところだが、こちらの準備もまだ整っていない。
「わたしたちも考えてみることは約束しましょう。ですがこれは数年で決着がつくような問題だとはとても思えませんぞ」
レイヴンはまた頷いた。
王女の王位継承権を認める為には、爵位継承を認めた時より多くのことを想定し、決まりを作らなければならない。
例えば今王女の王位継承権が認められれば、レイヴンの次の継承順位を持つのはカナリーとなる。
だけどカナリーは学園を卒業後、リベラ侯爵家へ降嫁することが決まっている。
サディアスもカナリーも帝王学を学んでいないし、王位継承権など望んでいないだろう。
降嫁した王女は王籍を離れる。その場合、継承権はどうなるのか。
王籍を離れると同時に継承権も消滅するのか、しないのか。
もし消滅しないのであれば、サディアスとカナリーの間に生まれた子どもたちにも継承権が与えられることになる。女系の王統を認めてしまえば、その先は広がっていくばかりだ。
本当はジェーンが帰国をして爵位を継いだ後に、何か1つでも成功事例を作ってから話を進めた方が良い。
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何にしろ、時間がないのだ。
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