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第2部 4章
幕間 ~レイヴンに贈り物をしよう!~
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アリシアはレイヴンへの贈り物を考えていた。
ルーファスとロバートを壮行会に招いてくれたことを感謝しているし、両親に王太子宮の出入りを許可してくれたことも感謝している。
それだけではなく、王領への視察に同行する許可も取れた。
これはレイヴンがアリシアの為に提案してくれたからである。
その感謝を気持ちを表す為に贈り物をしたいと思ったのだ。
だけどここでかねてからの問題が立ち塞がった。
アリシアがレイヴンの好みを知らないことである。
レイヴンの好きな物や好きな色、好きな花に好きな食べ物、好きな本や物語も何も知らない。
以前歌劇に連れて行ってくれたけれど、歌劇が好きなのかもわからない。
辛うじてわかっているのは、柑橘系の香りが好きだということくらいだ。それはレイヴンがいつも柑橘系のコロンを使っているからである。
こんな時にレオナルドは当てにできない。
レオナルドに訊いても、「好きな物は本人に訊きなさい」と言われるだけである。
それが正しいとわかっているので反論することもできないのだ。
そこでアリシアはレイヴンの部屋へ行こうと考えた。レイヴンの部屋を見れば好きな色や本のヒントが見つかると思ったのだ。
そしてアリシアは愕然とした。これまでレイヴンの部屋に入ったことがないと気がついたのだ。
まだ表面的な関係だった頃は、何か用事がある度にレイヴンがアリシアの部屋を訪ねて来ていた。そして今も毎日レイヴンがアリシアの部屋を訪れている。
アリシアがレイヴンの部屋を訪ねる必要がなかったわけだが、これはあんまりだとアリシアも自分で思った。
それからアリシアは、レイヴンの部屋に入りたいと言おうとして言えずにいる。
困った顔をされたり、嫌がられたらどうしようと思うと、言えなくなるのだ。
ここでアリシアは、以前レイヴンがアリシアの部屋を訪ねたくても訪ねることができなかった気持ちを理解してしまっていた。
一方レイヴンは、アリシアが何かを言い掛けては口を噤んでいるのに気がついていた。
だけどアリシアが何を言い淀んでいるのかわからない。アリシアが言い淀むのだから、余程言い辛いことなのだろう。
怒っているような様子はないけれど、何か嫌がられるようなことをしてしまったのだろうか。
レイヴンはアリシアに訊くことができずに、1人で青くなっていた。
アリシアは言いたいことが言えなくて、レイヴンは訊きたいことが訊けなくて、ソワソワしたまま数日を過ごした。
だけどいつまでもこうしているわけにはいかない。
先に意を決したのはアリシアだった。
アリシアには強い味方がある。
それは10年以上を掛けて培ってきた強い精神力である。
王太子妃としての笑顔を作ればアリシアはどんなことにも動じず、対処することができるのだ。
「レイヴン様」
アリシアはレイヴンに呼びかけた。
いつものようにレイヴンの膝に乗せられている。
それまでしていた話に区切りがついたところだった。
「…どうかしたの?」
アリシアはいつもと違って思い詰めたような顔をしている。
レイヴンはこれまで言い淀んでいた何かを告げられるのだと直感で察していた。
ゴクリとレイヴンの喉が鳴る。
アリシアはにっこりと笑った。10年以上を掛けて身につけた王太子妃としての完璧な笑顔である。
悪いことを言われるのだと思ったレイヴンの顔が僅かに歪む。
だけどアリシアは気づかない振りをして、これまで何度も言い掛けては言えなかった言葉を告げた。
「レイヴン様のお部屋に入れて下さいませ」
「…………え?」
シンとした部屋にレイヴンの間の抜けた声が響く。
瞬間、アリシアの顔が朱色に染まった。
それを見て、レイヴンは己の失態を悟る。
「違う、アリシア!!嫌なんじゃないっ!驚いただけなんだ!!」
顔を赤く染めたまま笑顔を崩せずにいるアリシアにレイヴンは慌てていた。
アリシアは勇気を振り絞って言ってくれたのに、誤解をさせるような態度を取ってしまった。
アリシアが言い出せずにいた気持ちはレイヴンが誰よりわかる。レイヴンがアリシアを訪ねられるようになるまで何年掛かったと思っているのか。
レイヴンは婚約期間中も公爵邸を訪ねたくても訪ねられずに、一度も訪れないまま結婚してしまったのだ。
「嬉しいよ、アリシア。変な態度を取ってごめん。アリシアが僕のところへ来たいと思ってくれるなんて、想像してなかったんだ」
アリシアを抱き締めるレイヴンの腕に力が籠る。
胸元に引き寄せられて、アリシアはやっと笑顔の仮面を外すことができた。羞恥と安堵で涙が滲んでくる。
それを見て、レイヴンの腕に更に力が籠る。
「可愛い、アリシア。愛している…」
レイヴンはアリシアに何度も口づける。
レイヴンはそうしてアリシアが落ち着くまで髪を撫でていた。
ルーファスとロバートを壮行会に招いてくれたことを感謝しているし、両親に王太子宮の出入りを許可してくれたことも感謝している。
それだけではなく、王領への視察に同行する許可も取れた。
これはレイヴンがアリシアの為に提案してくれたからである。
その感謝を気持ちを表す為に贈り物をしたいと思ったのだ。
だけどここでかねてからの問題が立ち塞がった。
アリシアがレイヴンの好みを知らないことである。
レイヴンの好きな物や好きな色、好きな花に好きな食べ物、好きな本や物語も何も知らない。
以前歌劇に連れて行ってくれたけれど、歌劇が好きなのかもわからない。
辛うじてわかっているのは、柑橘系の香りが好きだということくらいだ。それはレイヴンがいつも柑橘系のコロンを使っているからである。
こんな時にレオナルドは当てにできない。
レオナルドに訊いても、「好きな物は本人に訊きなさい」と言われるだけである。
それが正しいとわかっているので反論することもできないのだ。
そこでアリシアはレイヴンの部屋へ行こうと考えた。レイヴンの部屋を見れば好きな色や本のヒントが見つかると思ったのだ。
そしてアリシアは愕然とした。これまでレイヴンの部屋に入ったことがないと気がついたのだ。
まだ表面的な関係だった頃は、何か用事がある度にレイヴンがアリシアの部屋を訪ねて来ていた。そして今も毎日レイヴンがアリシアの部屋を訪れている。
アリシアがレイヴンの部屋を訪ねる必要がなかったわけだが、これはあんまりだとアリシアも自分で思った。
それからアリシアは、レイヴンの部屋に入りたいと言おうとして言えずにいる。
困った顔をされたり、嫌がられたらどうしようと思うと、言えなくなるのだ。
ここでアリシアは、以前レイヴンがアリシアの部屋を訪ねたくても訪ねることができなかった気持ちを理解してしまっていた。
一方レイヴンは、アリシアが何かを言い掛けては口を噤んでいるのに気がついていた。
だけどアリシアが何を言い淀んでいるのかわからない。アリシアが言い淀むのだから、余程言い辛いことなのだろう。
怒っているような様子はないけれど、何か嫌がられるようなことをしてしまったのだろうか。
レイヴンはアリシアに訊くことができずに、1人で青くなっていた。
アリシアは言いたいことが言えなくて、レイヴンは訊きたいことが訊けなくて、ソワソワしたまま数日を過ごした。
だけどいつまでもこうしているわけにはいかない。
先に意を決したのはアリシアだった。
アリシアには強い味方がある。
それは10年以上を掛けて培ってきた強い精神力である。
王太子妃としての笑顔を作ればアリシアはどんなことにも動じず、対処することができるのだ。
「レイヴン様」
アリシアはレイヴンに呼びかけた。
いつものようにレイヴンの膝に乗せられている。
それまでしていた話に区切りがついたところだった。
「…どうかしたの?」
アリシアはいつもと違って思い詰めたような顔をしている。
レイヴンはこれまで言い淀んでいた何かを告げられるのだと直感で察していた。
ゴクリとレイヴンの喉が鳴る。
アリシアはにっこりと笑った。10年以上を掛けて身につけた王太子妃としての完璧な笑顔である。
悪いことを言われるのだと思ったレイヴンの顔が僅かに歪む。
だけどアリシアは気づかない振りをして、これまで何度も言い掛けては言えなかった言葉を告げた。
「レイヴン様のお部屋に入れて下さいませ」
「…………え?」
シンとした部屋にレイヴンの間の抜けた声が響く。
瞬間、アリシアの顔が朱色に染まった。
それを見て、レイヴンは己の失態を悟る。
「違う、アリシア!!嫌なんじゃないっ!驚いただけなんだ!!」
顔を赤く染めたまま笑顔を崩せずにいるアリシアにレイヴンは慌てていた。
アリシアは勇気を振り絞って言ってくれたのに、誤解をさせるような態度を取ってしまった。
アリシアが言い出せずにいた気持ちはレイヴンが誰よりわかる。レイヴンがアリシアを訪ねられるようになるまで何年掛かったと思っているのか。
レイヴンは婚約期間中も公爵邸を訪ねたくても訪ねられずに、一度も訪れないまま結婚してしまったのだ。
「嬉しいよ、アリシア。変な態度を取ってごめん。アリシアが僕のところへ来たいと思ってくれるなんて、想像してなかったんだ」
アリシアを抱き締めるレイヴンの腕に力が籠る。
胸元に引き寄せられて、アリシアはやっと笑顔の仮面を外すことができた。羞恥と安堵で涙が滲んでくる。
それを見て、レイヴンの腕に更に力が籠る。
「可愛い、アリシア。愛している…」
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レイヴンはそうしてアリシアが落ち着くまで髪を撫でていた。
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