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第2部 4章
17 旧友との再会①
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この日、アリシアはお茶会を開いていた。毎月開いている公務としてのお茶会である。
毎月少人数で行っているお茶会も、来月は開催している余裕がない。その為、この日は2回分の人数を招いていた。
お茶会が終わり、招待客を全員見送ったアリシアは、部屋へ戻る為に庭園を歩いていた。そこにアリシアを呼び止める声がする。
この国では身分が低い者から高い者へ声を掛けることはできない。
それなのにアリシアを呼び止めるとは、アリシアより身分が高いか、声を掛ける許可を得ている者だけである。
そしてアリシアはこの声を知っていた。
「マルセル殿、お久しぶりですね」
振り返ったアリシアは笑顔を見せた。
そこにいたのは、マルセル・コリンズである。
コリンズ伯爵家の令息で、アリシアとレイヴンの学生時代の友人である。そして学生時代のアリシアが、密かに想いを寄せていた相手でもあった。
「昔の誼でお声を掛けたご無礼をお許しください」
マルセルはそう言って綺麗に頭を下げる。
マルセルの礼は男性的でありながら優雅で気品に満ちている。マルセルはこの美しい所作を学生時代から既に身につけていて、アリシアは度々見惚れたものだ。
その美しい所作に一段と磨きが掛かっている。
「構いませんわ。久しぶりにお顔が見れて嬉しいこと」
アリシアは閉じた扇で口元を隠して笑った。
アリシアはマルセルに話し掛ける許可を与えている。それは学生時代に友人として与えたもので、今も取り消されていない。
ただ学園を卒業後、会う機会が少なかったので話をすることがなかったのだ。
アリシアは自然にマルセルと並んで歩き出した。
花壇の間に設えられた丸テーブルに向かい合って座る。
こうしていると学生時代が思い出されて懐かしい。
今初めてアリシアは本当の意味でマルセルに友情を感じていた。
だけどここでふと気がついた。
レイヴンはアリシアがマルセルを想っていたことを知っているのだ。
アリシアがマルセルと会っていることをどう思うだろうか。
勿論アリシアにもマルセルにも疚しい気持ちはない。
今のアリシアはレイヴンを愛しているし、マルセルも結婚している。アリシアの後ろには数人の侍女が付き従っているので2人きりでもない。
それでもきっとレイヴンは嫌な気持ちになるはずだ。
アリシアはパチンと扇を鳴らした。
そっとエレノアへ視線を向ける。エレノアがこちらを見ていることを確認してから、アリシアは扇を僅かに傾けた。
傾けた方角にあるのはレイヴンの執務室である。
エレノアは心得た様子で腰を折り、礼をするとそっと立ち去った。
レイヴンの元へは、レイヴンがアリシアに付けている侍従が知らせているかもしれない。
だけどアリシアからレイヴンへ知らせること。
そのことに意味があるのだ。
毎月少人数で行っているお茶会も、来月は開催している余裕がない。その為、この日は2回分の人数を招いていた。
お茶会が終わり、招待客を全員見送ったアリシアは、部屋へ戻る為に庭園を歩いていた。そこにアリシアを呼び止める声がする。
この国では身分が低い者から高い者へ声を掛けることはできない。
それなのにアリシアを呼び止めるとは、アリシアより身分が高いか、声を掛ける許可を得ている者だけである。
そしてアリシアはこの声を知っていた。
「マルセル殿、お久しぶりですね」
振り返ったアリシアは笑顔を見せた。
そこにいたのは、マルセル・コリンズである。
コリンズ伯爵家の令息で、アリシアとレイヴンの学生時代の友人である。そして学生時代のアリシアが、密かに想いを寄せていた相手でもあった。
「昔の誼でお声を掛けたご無礼をお許しください」
マルセルはそう言って綺麗に頭を下げる。
マルセルの礼は男性的でありながら優雅で気品に満ちている。マルセルはこの美しい所作を学生時代から既に身につけていて、アリシアは度々見惚れたものだ。
その美しい所作に一段と磨きが掛かっている。
「構いませんわ。久しぶりにお顔が見れて嬉しいこと」
アリシアは閉じた扇で口元を隠して笑った。
アリシアはマルセルに話し掛ける許可を与えている。それは学生時代に友人として与えたもので、今も取り消されていない。
ただ学園を卒業後、会う機会が少なかったので話をすることがなかったのだ。
アリシアは自然にマルセルと並んで歩き出した。
花壇の間に設えられた丸テーブルに向かい合って座る。
こうしていると学生時代が思い出されて懐かしい。
今初めてアリシアは本当の意味でマルセルに友情を感じていた。
だけどここでふと気がついた。
レイヴンはアリシアがマルセルを想っていたことを知っているのだ。
アリシアがマルセルと会っていることをどう思うだろうか。
勿論アリシアにもマルセルにも疚しい気持ちはない。
今のアリシアはレイヴンを愛しているし、マルセルも結婚している。アリシアの後ろには数人の侍女が付き従っているので2人きりでもない。
それでもきっとレイヴンは嫌な気持ちになるはずだ。
アリシアはパチンと扇を鳴らした。
そっとエレノアへ視線を向ける。エレノアがこちらを見ていることを確認してから、アリシアは扇を僅かに傾けた。
傾けた方角にあるのはレイヴンの執務室である。
エレノアは心得た様子で腰を折り、礼をするとそっと立ち去った。
レイヴンの元へは、レイヴンがアリシアに付けている侍従が知らせているかもしれない。
だけどアリシアからレイヴンへ知らせること。
そのことに意味があるのだ。
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