【本編完結】幸福のかたち【R18】

朱里 麗華(reika2854)

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第2部 4章

37 アリシアのお願い①

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 この日、アリシアは湯浴みでいつもより念入りに磨き上げるようエレノアに頼んだ。
 エレノアは一瞬驚いた顔を見せた後、「お任せください!いつもより美しく仕上げさせていただきます!」と宣言し、張り切ってアリシアを磨いている。
 エレノアと共にアリシアの湯浴みを手伝う侍女たちも、いつもより張り切っているようだ。


 思い返せば、食事に行く前から侍女たちの様子がいつもとは違っていた。
 侍女たちは仕事でメノワの使用人と関わることもある。そこで何か言われたのかもしれない。

 だけど今のアリシアにはそちらに気をまわしている余裕がなかった。
 アリシアには今夜、考えていることがあるのだ。



 アリシアが寝室へ入るといつものようにレイヴンが待っていた。
 アリシアを見て頬を緩めると、抱き上げてベッドへと運ぶ。アリシアをベッドへ降ろすと、灯りを消してすぐに隣で横になった。

「おやすみ、アリシア」

 レイヴンはそう言ってアリシアを抱き締める。
 そしてアリシアが眠るまで髪や背中を撫でてくれるのだ。

 王宮を出てから、ずっとそうだった。
 つまりそう――4日間一度も閨がない。

 レイヴンに気持ちを告げられた時からほとんど毎日の様に抱かれていた。
 こんなに続けて閨がないのは、アリシアが月のモノの時くらいである。
 そうでない時は毎日、何度も求められていた。

 レイヴンがアリシアを抱かないのは、疲れているアリシアを気遣ってのことだとわかっている。
 初めは戸惑っていたアリシアも、翌日のことを思えば有難く、実際に横になるとすぐに眠ってしまった。
 だけど今日は違う。
 もう王城に――着いた。
 
「レイヴン様」
 
 アリシアは意を決してレイヴンに呼びかけた。
 心臓が煩く鳴り響き、緊張で震えそうになる。
 今日アリシアは、レイヴンに「抱いて欲しい」と伝えるつもりだ。

「アリシア…?どうしたの?」

 アリシアの様子に聡いレイヴンは、アリシアの異変に気がついたようだ。
 心配そうな顔でアリシアの頬を撫でる。

「あ、あの…っ」

 伝えようと思ったのに、言葉に詰まってしまった。

 結婚した時、アリシアにとって閨は跡継ぎを生む為の義務だった。
 だからレイヴンに求められた時だけ応えていた。
 気持ちを伝えられてからは、アリシアが求める必要もない程激しく求められた。
 そう。これまでアリシアから求める必要がなかったのだ。

「………っ」 

 言い辛いのは、アリシアの意識が変わったせいだ。
 以前のように跡継ぎを生む為の義務だと思っていれば、簡単に言えたはずである。
 だけど最近のアリシアは、あの行為に義務以上のものを感じている。
 
「大丈夫。ゆっくり話してごらん」

 レイヴンは言葉に詰まるアリシアの髪をゆっくり撫でてくれている。
 こうしてアリシアの気持ちが落ち着くのを待ってくれているのだ。
 レイヴンは決して無理強いをしたりしない。
 この人の子を生みたい、とアリシアは強く思った。
 
 それに他の令嬢たちが側妃の地位を望むのは、アリシアに子がいないせいでもあった。
 正妃所生の子がいなければ、自分の生む子が王位を継ぐ可能性がある。
 だけどアリシアに子が生まれてしまえばその可能性は極めて小さなものになり、ルトビア公爵家に睨まれてまで側妃の地位を望む令嬢は少なくなるだろう。

 だけどその為にもまずは抱いてもらわなければならない。
 
「レイヴン様に、お願いがあります…」

 アリシアはレイヴンの胸に額を押し付けるようにしてそう言った。



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