【本編完結】幸福のかたち【R18】

朱里 麗華(reika2854)

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第2部 4章

40 見せしめ①

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 湯浴みを終えた後、何故か息を荒げて艶やかな色気を纏ったレイヴンに何度も口づけられてから、アリシアはエレノアに引き渡された。
 ベッドでのことがあるので少し気まずい。
 それはエレノアも同じだろうと思っていたけれど、何故かエレノアは上機嫌だった。
「殿下の寵愛が妃殿下に注がれているのは、誰の目にも明らかですわ」
 そんなことを言いながら、アリシアの身嗜みを整えていく。あっという間に完璧に仕上げられていた。

 朝食は王太子宮にいた時と同じ様に、アリシアの部屋で摂ることになっていた。
 食堂へ行くのが正式である。
 アリシアはレイヴンに「食堂でいただきましょう」と言ったけれど、レイヴンは首を縦に振らなかった。
 別邸に来ただけなので、習慣を変える必要はないと言うのだ。

 確かに結婚前、公爵家のマナーハウスへ行ったところで王都での習慣を変えたりしなかった。
 だけどそれは初めからアリシアが公爵家の令嬢と認められていたからだ。ここではまだ女主人として認められていない。

 他家に嫁いだ令嬢は、皆どうしているのかしら。

 学園を卒業後、他家へ嫁いだ同窓生クラスメイトを思い浮かべてみても、そんな話ができるような仲の良い友人はいない。
 ただ彼女たちは初めから夫人として迎えられる。複数の妃の中から、世継ぎを生んだ者が女主人として認められてきた王領とは基本的に違うのだ。

 ここでアリシアはハッとした。
 
 ずっと感じていた使用人たちの絡みつく視線。
 レイヴンの示す愛情に騒めく人々。
 使用人たちが何を探ろうとしているのか、わかった気がした。

 アリシアは鏡に向き直り、鏡の中の自分を見直した。
 マルグリットと一緒に選んだ薄紅色に焦げ茶色のレースで縁取りされたドレスは派手過ぎず、だけど華やかな雰囲気を醸し出している。
 ドレスに合わせた銀細工に薄いピンクの石がついた首飾りと揃いのイヤリングも、アリシアを上品に魅せてくれている。
 アリシアを守ろうとするマルグリットの気持ちが見えるようだった。



 朝食を終えると、庁舎へ出掛けるレイヴンを見送る為玄関ホールまで一緒に歩いた。
 通常のエスコートではなく手を繋いで歩く2人に、すれ違う使用人が驚いた顔を見せる。だけど2人が気にすることはない。

 玄関ホールまで来ると、アリシアと向き合ったレイヴンは、心配そうな表情で頬に触れた。

「今日と明日はどうしても庁舎へ行かないといけないから出掛けてくるけど、絶対に無理をしないで。特に今日は夜遅くまで客人を招くことになっているんだ。疲れたと思ったらすぐに休んでね」

「大丈夫ですわ。私、今日は一日城の中で過ごしますもの。城内を案内してもらってから、夜の支度を致します」

 王領に着いた翌日は、王領で勤める代官や役人たちを招いて食事会をするのが恒例になっていた。
 そのほとんどが下級貴族の次男・三男だが、王家の為に働いてくれている者たちだ。
 その労を労い、親交を深めるのが目的となっている。

 勿論今から準備を始めたのでは間に合わない為、招待状は執事のトーマスから送られているし、食事会で出されるメニューも決まっている。アリシアも王都にいる間から出席者の名前と経歴を覚えるなど備えて来た。

 レイヴンは頷くと、アリシアをそっと抱き締め頬に口づけた。

「行ってくる。できるだけ早く帰れるようにするからね」

「はい、いってらっしゃいませ」

 アリシアがそう言うと、玄関ホールに並んだ使用人たちが一斉に「いってらっしゃいませ」と声を揃えて頭を下げた。



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