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第2部 4章
96 ユリア妃の不運
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例えどんな結果になったとしても。
その言葉が、側妃を拒むのは難しいという現実を表していた。
レイヴンがどれだけアリシアを想ってくれているとしても、子どもが生まれない限り側妃を迎え入れるしかないのだ。
「……新年の宴でユリア妃とお話をしました。レイヴン様が側妃を迎えられるのなら、ユリア妃のような方が良いと……」
ユリア妃は常にマルグリットを立て、国王から一歩離れたところにいる。
側妃の中で一番上の序列にいるユリアがマルグリットを立てることで2人が良い関係を築いているからこそ、他の側妃たちも上手く纏まっているのだと思えた。
だからレイヴンが迎える初めての側妃も、ユリアのような人が良いと思ったのだけれど。
今はもう、思えなくなっていた。
「そうねぇ。あの方の初めての側妃がユリア妃だったのは、私にとって幸運だったわね。だけどユリア妃にとっては不運だったわね」
「……え?」
「ユリア妃はね、側妃になりたいと望んでなかったの」
「っ!!」
アリシアは目を見開いた。
ただ、考えられることではある。今も婚約者を持たない令嬢のすべてがレイヴンに嫁ぎたいと望んでいるわけではないだろう。
本人ではなく、両親や兄弟が望んでいて婚約者を決めてもらえない令嬢もいる。
「側妃が輿入れした時は、翌日に正妃の元へ挨拶に来ることになっているのだけど、挨拶に現れたユリア妃は可哀想なくらい小さくなっていたわ。そして謝るの。『拒否しきれずに輿入れしてしまいました。こんなことになってしまい、申し訳ありません』とね」
側妃に選ばれたことが令嬢の元へ伝えられるのは、王太子の承諾を得た後である。王太子が拒否をすれば選び直しになるので、それまでに伝えられることはない。
誰が最有力候補なのか、噂くらいは流れているだろうが、令嬢の元へ届けられるのは決定通知のみである。
王太子が了承しているのに、令嬢が拒否するのは難しいだろう。そもそも両親や兄弟は望んでいるのだから、そこでもし拒否ができても家に居場所が無くなってしまう。
ユリアも両親や兄弟に脅されるようにして嫁いできたという。
「他に想う方がいたのか、王宮でそんな話はできないからわからないけれど、そんな令嬢もいるのよ。側妃になりたいと望む令嬢は沢山いて、選ばれる可能性の方が少ないのだもの。別の方が側妃に決まってしまえば両親も諦めざるを得ないし、そうなった時には条件の良い相手はもう結婚したり婚約者がいたりして良い相手を見つけるのは難しくなっているわ。だから少しくらい条件が悪くても、令嬢と結婚したいという男が現れたらあっさりと許されたりするのよ」
ユリアがそれを望んでいたのかはわからない。
ただユリアは側妃に選ばれてしまった。ユリアにとっては不運なことだったのだ。
「陛下も跡継ぎを作る為に側妃を迎えたものの、サンドラ殿を想っているのだもの。中々気持ちが向かないわよね。ユリア妃の元へ行かれることもあまりなくて。その内、陛下のお気持ちが落ち着いて来たのか、私のところへ来られる日が増えてきて、結局私が先に懐妊したわ。……ユリア妃には気の毒なことよ」
ユリアは中々懐妊しないマルグリットの代わりに王子を生むことを期待されて嫁いできた。
それなのにユリアが懐妊したのは、マルグリットが子を2人生んだ後である。社交界では「期待外れ」と揶揄されたりしてあまり立場は強くない。
「ただ誤解しないでね。今では陛下もユリア妃を大切にしているわ。ユリア妃の実家はあまり立場が強くないけれど、それは彼らが、私より先に懐妊しなかったユリア妃を責めて詰っていたからよ。陛下はそれをお許しにならないわ。だから彼らが権力を握れなかったのは、彼ら自身のせいなの」
「そうなのですか……」
確かに宴でもユリアは国王から一歩距離を取っていたけれど、よそよそしい感じはなかった。
国王と王妃、両名から信頼を得ていると感じられたのだ。
2人の始まりはお互いに望んだものではなかったのかもしれない。
だけど時間を掛けて彼らなりの関係を作っているのだろう。
「だけど心配なこともあるわ。先ほども言った通り、ユリア妃の実家はあまり力を持っていないの。陛下が王位を退かれたら、ユリア妃の立場はきっと心許ないものになるでしょう。だからあなたたちも気に掛けてあげて欲しいの」
「それは……。かしこまりました」
そう言ってアリシアが頭を下げると、マルグリットは嬉しそうに微笑んだ。
その言葉が、側妃を拒むのは難しいという現実を表していた。
レイヴンがどれだけアリシアを想ってくれているとしても、子どもが生まれない限り側妃を迎え入れるしかないのだ。
「……新年の宴でユリア妃とお話をしました。レイヴン様が側妃を迎えられるのなら、ユリア妃のような方が良いと……」
ユリア妃は常にマルグリットを立て、国王から一歩離れたところにいる。
側妃の中で一番上の序列にいるユリアがマルグリットを立てることで2人が良い関係を築いているからこそ、他の側妃たちも上手く纏まっているのだと思えた。
だからレイヴンが迎える初めての側妃も、ユリアのような人が良いと思ったのだけれど。
今はもう、思えなくなっていた。
「そうねぇ。あの方の初めての側妃がユリア妃だったのは、私にとって幸運だったわね。だけどユリア妃にとっては不運だったわね」
「……え?」
「ユリア妃はね、側妃になりたいと望んでなかったの」
「っ!!」
アリシアは目を見開いた。
ただ、考えられることではある。今も婚約者を持たない令嬢のすべてがレイヴンに嫁ぎたいと望んでいるわけではないだろう。
本人ではなく、両親や兄弟が望んでいて婚約者を決めてもらえない令嬢もいる。
「側妃が輿入れした時は、翌日に正妃の元へ挨拶に来ることになっているのだけど、挨拶に現れたユリア妃は可哀想なくらい小さくなっていたわ。そして謝るの。『拒否しきれずに輿入れしてしまいました。こんなことになってしまい、申し訳ありません』とね」
側妃に選ばれたことが令嬢の元へ伝えられるのは、王太子の承諾を得た後である。王太子が拒否をすれば選び直しになるので、それまでに伝えられることはない。
誰が最有力候補なのか、噂くらいは流れているだろうが、令嬢の元へ届けられるのは決定通知のみである。
王太子が了承しているのに、令嬢が拒否するのは難しいだろう。そもそも両親や兄弟は望んでいるのだから、そこでもし拒否ができても家に居場所が無くなってしまう。
ユリアも両親や兄弟に脅されるようにして嫁いできたという。
「他に想う方がいたのか、王宮でそんな話はできないからわからないけれど、そんな令嬢もいるのよ。側妃になりたいと望む令嬢は沢山いて、選ばれる可能性の方が少ないのだもの。別の方が側妃に決まってしまえば両親も諦めざるを得ないし、そうなった時には条件の良い相手はもう結婚したり婚約者がいたりして良い相手を見つけるのは難しくなっているわ。だから少しくらい条件が悪くても、令嬢と結婚したいという男が現れたらあっさりと許されたりするのよ」
ユリアがそれを望んでいたのかはわからない。
ただユリアは側妃に選ばれてしまった。ユリアにとっては不運なことだったのだ。
「陛下も跡継ぎを作る為に側妃を迎えたものの、サンドラ殿を想っているのだもの。中々気持ちが向かないわよね。ユリア妃の元へ行かれることもあまりなくて。その内、陛下のお気持ちが落ち着いて来たのか、私のところへ来られる日が増えてきて、結局私が先に懐妊したわ。……ユリア妃には気の毒なことよ」
ユリアは中々懐妊しないマルグリットの代わりに王子を生むことを期待されて嫁いできた。
それなのにユリアが懐妊したのは、マルグリットが子を2人生んだ後である。社交界では「期待外れ」と揶揄されたりしてあまり立場は強くない。
「ただ誤解しないでね。今では陛下もユリア妃を大切にしているわ。ユリア妃の実家はあまり立場が強くないけれど、それは彼らが、私より先に懐妊しなかったユリア妃を責めて詰っていたからよ。陛下はそれをお許しにならないわ。だから彼らが権力を握れなかったのは、彼ら自身のせいなの」
「そうなのですか……」
確かに宴でもユリアは国王から一歩距離を取っていたけれど、よそよそしい感じはなかった。
国王と王妃、両名から信頼を得ていると感じられたのだ。
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だけど時間を掛けて彼らなりの関係を作っているのだろう。
「だけど心配なこともあるわ。先ほども言った通り、ユリア妃の実家はあまり力を持っていないの。陛下が王位を退かれたら、ユリア妃の立場はきっと心許ないものになるでしょう。だからあなたたちも気に掛けてあげて欲しいの」
「それは……。かしこまりました」
そう言ってアリシアが頭を下げると、マルグリットは嬉しそうに微笑んだ。
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