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第2部 4章
97 側妃の陰に見える人①
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ただ、宴のことを思い出すと思うことがある。
国王は、宴の間中マルグリットの傍を離れなかった。
「正妃として示す」という意味合いもあるだろう。だけどそれだけではなく、マルグリットを大切に思う気持ちもあるのではないだろうか。
「…こんなことを申し上げるのはご無礼かもしれませんが、陛下の今のお気持ちはいかがなのでしょうか。これまでお傍で見させていただいていた様子や、宴での様子からは、陛下がマルグリット様を大切にされていることが伝わってきました。以前はサンドラ殿を想っておられたかもしれませんが、今は……」
人の気持ちは変わる。
マルグリットが国王へ向ける気持ちが変わったように、国王の気持ちも変わったのではないだろうか。
マルグリットが諦めた結果だとしても、レイヴンが理想の夫婦像だと思うくらいには、家族として良い関係を築いていたのだ。
だけどマルグリットは、「どうかしらね」と頭を振った。
「あの方は今もサンドラ殿を想っているわ。以前ほど強い想いではないかもしれないけれど、あの方の中からサンドラ殿への気持ちがなくなることはないのよ」
「それは、どうして……」
そう思うのですか?とまでは訊けなかった。
だけどマルグリットは正確に読み取ったようで淋しそうに笑う。
「あの方が第二妃を迎えられたのは22年前よ。その頃私は懐妊していたの」
22年前といえばレイヴンを身籠っていた頃である。
突然側妃を娶ると良い出した国王(当時は王太子)に誰もが驚いた。
だけど待ち望まれた第一子を懐妊中の正妃は大事を取って夜の相手を控えている。他には気に入られていないユリアしかいない。
マルグリットが出産するまでの間、相手をする側妃が必要だった。
それに初めて自分の希望で迎える側妃だ。続けて第二子が期待できるかもしれない。
そんな訳で第二妃を娶る話に反対する者はいなかった。
勿論マルグリットとユリアの実家を除いては、である。
「私の懐妊中にあの方のお相手をする者が必要だと言われたわ。でもね、あの頃懐妊していたのは、私だけではないの。……あの方は、それに耐えられなかったのね」
アリシアの顔がサッと青褪めた。
マルグリットが身籠っていたのはレイヴンだ。
アリシアとジェーンは、レイヴンと同じ歳である。
つまりマルグリットが懐妊していた頃、オレリアもサンドラも懐妊していたのだ。
「あの方と第二妃になるメリンダ殿の密会が取沙汰されるようになったのは、サンドラ殿の懐妊が社交界で知られた頃よ。サンドラ殿とデミオン殿の仲は皆知っていたから、それでも懐妊したのか、いつ伽があったのかと、面白おかしく囁かれていたわ。あの方はそんな現実から逃れるようにメリンダ殿に溺れていったのね」
サンドラが懐妊したことによる鬱憤を、マルグリットやユリアにぶつけることはできなかったのだろう。特にマルグリットは、国王がサンドラへ向ける気持ちを良く知っている。
それを思えば第二妃のメリンダは伯爵令嬢だ。
決して低い身分ではないが、侯爵令嬢のユリアよりは気軽く接することができる。それに年若い。
国王が多少怠惰に振る舞ったとしても咎めることはなかっただろう。
それを証明するように、第二妃を迎えたばかりの国王は、第二妃の殿舎に通い詰めていた。
国王は、宴の間中マルグリットの傍を離れなかった。
「正妃として示す」という意味合いもあるだろう。だけどそれだけではなく、マルグリットを大切に思う気持ちもあるのではないだろうか。
「…こんなことを申し上げるのはご無礼かもしれませんが、陛下の今のお気持ちはいかがなのでしょうか。これまでお傍で見させていただいていた様子や、宴での様子からは、陛下がマルグリット様を大切にされていることが伝わってきました。以前はサンドラ殿を想っておられたかもしれませんが、今は……」
人の気持ちは変わる。
マルグリットが国王へ向ける気持ちが変わったように、国王の気持ちも変わったのではないだろうか。
マルグリットが諦めた結果だとしても、レイヴンが理想の夫婦像だと思うくらいには、家族として良い関係を築いていたのだ。
だけどマルグリットは、「どうかしらね」と頭を振った。
「あの方は今もサンドラ殿を想っているわ。以前ほど強い想いではないかもしれないけれど、あの方の中からサンドラ殿への気持ちがなくなることはないのよ」
「それは、どうして……」
そう思うのですか?とまでは訊けなかった。
だけどマルグリットは正確に読み取ったようで淋しそうに笑う。
「あの方が第二妃を迎えられたのは22年前よ。その頃私は懐妊していたの」
22年前といえばレイヴンを身籠っていた頃である。
突然側妃を娶ると良い出した国王(当時は王太子)に誰もが驚いた。
だけど待ち望まれた第一子を懐妊中の正妃は大事を取って夜の相手を控えている。他には気に入られていないユリアしかいない。
マルグリットが出産するまでの間、相手をする側妃が必要だった。
それに初めて自分の希望で迎える側妃だ。続けて第二子が期待できるかもしれない。
そんな訳で第二妃を娶る話に反対する者はいなかった。
勿論マルグリットとユリアの実家を除いては、である。
「私の懐妊中にあの方のお相手をする者が必要だと言われたわ。でもね、あの頃懐妊していたのは、私だけではないの。……あの方は、それに耐えられなかったのね」
アリシアの顔がサッと青褪めた。
マルグリットが身籠っていたのはレイヴンだ。
アリシアとジェーンは、レイヴンと同じ歳である。
つまりマルグリットが懐妊していた頃、オレリアもサンドラも懐妊していたのだ。
「あの方と第二妃になるメリンダ殿の密会が取沙汰されるようになったのは、サンドラ殿の懐妊が社交界で知られた頃よ。サンドラ殿とデミオン殿の仲は皆知っていたから、それでも懐妊したのか、いつ伽があったのかと、面白おかしく囁かれていたわ。あの方はそんな現実から逃れるようにメリンダ殿に溺れていったのね」
サンドラが懐妊したことによる鬱憤を、マルグリットやユリアにぶつけることはできなかったのだろう。特にマルグリットは、国王がサンドラへ向ける気持ちを良く知っている。
それを思えば第二妃のメリンダは伯爵令嬢だ。
決して低い身分ではないが、侯爵令嬢のユリアよりは気軽く接することができる。それに年若い。
国王が多少怠惰に振る舞ったとしても咎めることはなかっただろう。
それを証明するように、第二妃を迎えたばかりの国王は、第二妃の殿舎に通い詰めていた。
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