【本編完結】幸福のかたち【R18】

朱里 麗華(reika2854)

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第2部 5章

7 香水③

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「あの後は大変でしたものね」

 当時の喧騒を思い出したカナリーがくすくすと笑う。
 アリシアも一緒に笑うしかなかった。

 レイヴンの新しい香水が既製品ではなく、メトワの調香師が好みに合わせて調香したものだと伝わると、メトワの調香師のところへ香水の注文が殺到した。だけどアリシアの知らないところで、レイヴンは同じ香りを他の人へ売らないよう厳命していたらしい。
「あれは殿下と妃殿下、2人だけの香りですので、他の方にはお売りできません」と言われた貴族たちは、それならと、そこで自分だけのオリジナルの香りを作り出した。

 自分だけのオリジナルの香りなら、王都にも調香師はいるのだからそちらで作れば良いと思うが、レイヴンと同じ調香師が作った香水を使うのがステータスらしい。
 年末年始休暇の時は、領地への行き帰りのついでにメトワで香水を作ろうとする貴族が大挙して押し寄せたとか。
 結果として、調香師の青年はあの時アリシアに売り込んで大正解だったのだ。

 そんなわけで、今、社交界ではオリジナルの香水が大流行している。
 
「お兄様がまた香水を変えましたから、貴族たちも新しい香水を手に入れようと躍起になっておりますわ」

 そう、レイヴンは季節ごとに4つの香水を作った。レイヴンが香水を変える度に、貴族たちは新しい香水をメトワの工房で作ろうとする。
 既製品ではないので、作る為にはメトワの工房で調香師と一緒に香りを選ばなくてはいけない。工房にはひっきりなしに訪問予約が入って、今では空きがあるのは半年先なのだとか。
 それを見越して夏用ではなく冬用の香水を作ろうと予約を取った者もいると聞いた。

 メトワの工房にとっては有難い話だが、各家に1つは常備される定番の香りとなっていた、レイヴンが以前使っていた香水の販売者には恨まれているかもしれない。

「それに、あの時のお兄様の言葉が良い効果をもたらしておりますわ。お2人の睦まじさを見せることもできましたし、お2人は結婚する以前から想い合っていたのでは、と言われておりますのよ」

 そうなのだ。
 あの時の会話が思わぬ効果を生み出していた。

 2人はずっと表面だけ繕った形式的な婚約者だと言われていたのに、レイヴンはその間もアリシアから贈られた香水を大事に使っていたのだと知られることになった。
 学生時代、ジェーンを想っていると言われていた間さえ同じ香りを使っていたのだ。

 人々は今更ながら学生時代の噂に疑問を持つようになった。
 去年社交界を席巻した、ジェーンがレイヴンの愛人だという噂も間違いだったのだ。
 レイヴンとアリシアは幼い頃から想い合っていたのではないか。
 最近ではそう言われるようになっていた。

 その噂は、レイヴンの側妃候補の選定にも影響を与えていた。 
 幼い頃から想い合っていた2人なら、側妃になっても入り込む隙間はないかもしれない。
 子が生まれても、アリシアに子が生まれれば王太子位はそちらへいくだろう。

 レイヴンの寵愛を得て、王太子の母となる。
 それは難しそうだと、側妃になるのを辞退する者が出てきていた。





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